食いしばり・歯ぎしり、お顔への影響

    食いしばり・歯ぎしり、お顔への影響

    お顔の触診をすると、咬筋(こうきん)のコリが酷い方が一定数いらっしゃいます。ものを噛む際に、咀嚼筋(そしゃくきん)という顎の筋肉を使うのですが、咀嚼筋は3つの筋肉の層からなり、その最も表側にある筋肉が咬筋です。

    食いしばりや歯ぎしりなどの癖で、咬筋がコリ、固く張った状態になってしまいます。特に無意識の食いしばり癖は、疲れやストレスによるものが多く、咬筋はメンタルの影響も受けやすい筋肉です。また噛み癖が悪く、いつも同じ側ばかり使ってしまう方は、片側の咬筋が特に発達して緊張した状態になっています。この左右差が、そのままお顔の左右差・ゆがみとなって表れてしまいます。

    このように筋肉がコリ固まっている状態では、血流が滞り老廃物が溜まり、新陳代謝が悪くなるという悪循環に陥り、お顔には以下のような影響が表れてしまいます。

    • 顔のエラが張る(横に広がる)
    • 老け顔の印象が強くなる

    咬筋コリのお顔への影響

    人間の頭蓋骨をみると、顎の部分は「V字」をしていますが、咬筋が硬くなると、フェイスラインが引っ張られ、顎が広がって「□字」になります。また側頭骨を引っ張るため、お顔が横に広がりやすくなります。

    さらに、咬筋の引っ張りは、お顔の頬骨やその筋肉も一緒に下げてしまいます。頬の高さは、お顔の印象にとても大切なポイントですが、頬が下がると、ほうれい線が目立ち、そのくぼみに影が出来ることで老け顔の印象が強くなってしまいます。

    また、口の上にある骨上顎骨(じょうがいこつ)が下がると、目の骨との間にくぼみが出来て、目の下がたるんでみえやすくなり、クマも目立つようになります。

    咬筋をほぐす

    小顔矯正は、骨の位置を本来あるべき位置へ戻す施術方法ですが、筋肉のコリをほぐさずに、骨の矯正だけを行っても、その根本的な原因が改善されていなければ、すぐ元に戻ってしまいます。

    小顔効果を得るためには、まず咬筋をほぐすことが必要になります。その引っ張る力を取り除き、骨が所定の位置に戻ることで、お顔のたるみやエラ張りが改善し、お顔のリフトアップにも繋がります。

    また、食いしばりのように咀嚼筋(顎を動かす時に使う筋肉)に過度な負担をかけていると、顎の動きが悪くなります。すると、その代わりに表情筋(唇や目を動かす時に使う筋肉)が役割を担おうとするため、表情筋に引っ張られて片側のほうれい線が強くなる傾向があります。

    これらの引っ張りをほぐす方法が美容鍼です。顎関節症に効果的なツボの、頬車(きょうしゃ)、下関(げかん)を鍼で刺激し、咬筋の緊張を解いてあげると、鍼の刺激によって血流が促進され、咬筋をはじめ表情筋のコリもほぐれ、溜まっていた老廃物が流れ出します。

    血流が改善されることでむくみやたるみの解消や、エラの筋肉のバランスがとれて、過剰な発達がなくなり、小顔効果を実感して頂けます。

    一方で、緩んで下がった筋肉には、鍼で刺激を与えることにより活性化させ、筋肉が元にあった位置に戻るよう促していきます。

    コリをほぐすだけでなく「ストレス」体質を改善

    お顔が横に広がる、四角くなる原因は、「ストレスからくる食いしばりによって、エラの筋肉の過度な負担(コリ)」にあります。確かに、エラの筋肉に刺鍼するとその筋肉は柔らかくなり、一時的にはほぐれて小顔効果を得ることができますが、持続性はあまりありません。横に広がる、四角くなる原因の根本、つまり「ストレス」による『食いしばってしまう体質』自体を治す必要があります。

    その人の体質を見分ける事を、東洋医学では『証(しょう)を立てる』といいます。ハリニーでは、その人の証(しょう)に合ったツボを選び、ストレスを受けやすい体質を改善し、食いしばり自体を治療する目的で美容鍼を行います。因みに、英国Oxford学会の研究雑誌で発表された研究では、鍼がツボの正しい箇所に刺入されるとストレスホルモンの伝達が抑制され、ストレスレベルが下がることが報告されています。

    このように美容鍼によってリラックス効果を生み出し、ストレスレベルを下げつつ、体質改善を促していきます。

    片側の歯で食べ物を食べる癖

    両側の歯を使って食べ物を食べていますと言われる方が多いですが、例えばガムを食べる時に、片側の歯で噛んでいるのであれば、あなたは片側の歯で食べ物を食べる習慣があるということになります。

    人は意識して両側の歯で噛むようにしないと、以外と片側の歯だけで食べ物を噛んでいます。すると顔の形に悪影響が及ぶということが分かっています。まず挙げられるのが「筋肉の非対称性」です。

    顔の筋肉は咀嚼によって鍛えられるため、一方の歯だけで食べているとそちら側の筋肉ばっかり鍛えられてしまいます。これによって顔の筋肉のバランスが崩れ、見た目に影響を与えることがあります。

    また噛み合わせの問題も大きく、一方の歯だけで食べる習慣が長く続くと噛み合わせのバランスが崩れることがあります。これは顎の位置や歯の並びに影響を与え見た目が悪くなってしまう原因となります。また片側の歯で食べることによって顎関節に不自然な負担が掛かります。これが続くと顎関節の問題や痛みが生じて顔の形が変わるケースもあります。

    美容鍼でエラ張を解消

    お顔エラが張ってしまう多くの場合、「咬筋(こうきん)」という筋肉(噛むための筋肉)が発達し過ぎていることが原因です。ここが歯ぎしりや食いしばりで発達してしまうと、エラの張った四角い輪郭になってしまいます。

    また、夜中に食いしばりする一つの原因は顎に老廃物が溜まって、その老廃物を押し出そうとして強く噛むからです。女性に比べて筋肉量の多い男性は、貧乏ゆすりをすることで揺らして老廃物を流そうとすることも同じ原理です。老廃物を流すためには、肌の中の毛細リンパ管を開いてあげる必要があります。ただしマッサージなどで強く流そうとするとリンパ管が潰れてしまいます。

    コリで筋肉が固まっている状態では、血流が滞り老廃物が溜まり、新陳代謝が悪くなるという悪循環に陥ります。しかし鍼の刺激によって血流が促進されると、咬筋をはじめ、それと連動する側頭筋もほぐれ、溜まっていた老廃物が流れます。結果、血流が改善され小顔効果が期待できるのです。

    噛むことは健康に大事

    食事、運動、睡眠以外にもう1つ健康的に生きる上で重要なことが歯を守ること口の中を整えることです。実は歯というのは、認知症だけではなく、糖尿病、肺炎、心筋梗塞などの病気とも深く結びついているということが分かっています。また、なんだか物が覚えられなくなってきた、記憶力が落ちてきたなど、昔よりも頭の回転が鈍くなった気がすると感じている人はいないでしょうか。

    実は私たちの脳と歯はとても強く結びついています。当たり前ですが、生きることとはすなわち食べることであり、歯を使って咀嚼し続けるということです。そのため脳は生きるために必要な食べる機能を最重要視して、口を含む歯の領域を特別に大きく設計しました。そのため歯を使って噛むだけで脳の広い範囲が活性化します。

    一方で、柔らかい食事などで噛まなくなった現代人は、脳幹の刺激が減って脳の老化になりやすいとも言われています。つまりコツコツと早いうちから歯のケアをして、噛むことで脳に刺激を送り続けて、脳の血流を増やし、脳を活性化することができます。

    噛むことでボケない

    ボケない脳を作る鍵は歯にあります。私たちの脳の中には、動作を司っている運動野と感覚を司っている感覚野というものがあります。そして口が脳の中では運動野と感覚野のそれぞれ1/3を占めていることが分かっています。そして口と繋がっている顔まで含めると半分近くを占めています。つまり歯のケアなどで口を刺激すれば、大脳の広い範囲に影響が及ぼされることを意味しています。

    私たちの脳は生きるために欠かせない栄養の摂取を最優先で行うために、口にまつわる運動領域を広くしました。同時に摂取した栄養から受ける味覚、嗅覚、触覚などの多様な情報を処理するために感覚領域でも口の範囲を広げました。つまり私たちが生きていくために口や歯は、必ず必要であるため脳内の口の領域がこれほどまでに広くなったのです。

    実は、歯でものを噛むとひと噛みごとに脳に大量の血液が送り込まれます。そのため、よく噛む人の脳にはひっきりなしに血液が送り込まれて、その間脳は常に刺激を受けていることになります。噛めば噛むほど刺激で脳が活性化されて元気になります。逆に噛まなかったり、歯の本数が少なくなって噛まなくなれば、脳に送り込まれる血液の量が減り、脳への刺激が減って脳機能の低下につながってしまいます。

    実際に、口の中に残っている歯の数と認知症の発症率には関係があるという研究があります。またアルツハイマー型認知症の高齢者は、健康な高齢者に比べて残っている歯の本数が平均して1/3しかなかったという研究もあります。さらには歯のケアをすることで認知症や全身疾患を予防し、健康寿命が伸びます。なぜなら歯周病が原因となって様々な全身疾患が引き起こされてしまうことが分かっているからです。正しい歯のケアで歯周病菌を減らすことで、認知症、糖尿病、脳梗塞、心筋梗塞を始めとする全身疾患を予防することができます。

    口の中から一体どんな病気が発生してしまうのか

    口の中の環境が悪化することによってもたらされる病気の代表が歯周病です。大人が歯を失ってしまう原因の第1位が歯周病です。そして歯を失ってしまえば、脳に送られる脳血流が減り、脳への刺激が減って認知を引き起こす原因となります。そのため歯磨きで口の中を清潔にして、歯周病菌を徹底的に減らす必要があります。

    そもそも歯周病は、歯周病菌の感染によって引き起こされる口の中の炎症性疾患であり、例えば歯磨きが不十分で歯と歯茎の境目の掃除が行き届かない状態であれば、そこに食べかすや歯周病菌を始めとする細菌の塊が溜まって、歯茎の縁が炎症を起こして赤くなったり、晴れたり、出血したりします。この状態が悪化してしまうと歯を支える土台が溶けてしまい、歯がグラグラと動くようになり、放っておくと最終的には歯を失ってしまいます。

    これらを予防するためには、まずは炎症を引き起こすプラークを取り除く必要があります。プラークとは細菌の塊であり、口の中で増殖した歯周病菌や虫歯菌などの微生物の塊のことです。元々、私たちの口の中には100億の細菌がいると言われていて、歯のケアが不十分で口の衛生環境が悪い人の場合は一兆を超える細菌がおり、歯周病菌や虫歯菌などの細菌は私たちが食べたものが口の中に残った食べカスを餌にして増殖しています。

    食後4から8時間程度でプラークとなるため、このプラークならば歯磨きで落とすことができます。しかしプラークをそのまま放置するとさらに増殖し、約24時間後には石灰化して歯石となります。こうなってしまうと歯磨きで取り除くことができず、この歯石が溜まることでより歯周病になりやすくなります。

    プラークや歯石が溜まって歯周病が進行すると歯茎が赤く晴れてきます。本来健康な歯茎はピンク色ですが、歯周病患者の歯茎は真赤で、歯茎に炎症が常にあるということを示しています。炎症はボヤのようなものであり、ボヤを消さずに放置すれば、当然色々なところに飛び火します。口の中のボヤが脳に飛び火すれば認知症、心臓に飛び火すれば心筋梗塞を引き起こしてしまいます。

    そして歯周病によって引き起こされる病気の代表に認知症があります。歯周病菌が出す毒素によって歯茎などに炎症が起こると、血液中に炎症物質サイトカイが流れ込みます。このサイトカインが脳に流れ込むとアミロイドβというタンパク質が脳内で増え、これは脳のゴミとも呼ばれているものでアルツハイマー型認知症の原因物質です。ちなみに脳のゴミであるアミロイドβが脳内に溜まり始めて、認知症を発症するまでには約25年かかると言われています。

    歯周病を発症する人の年齢のピークは45歳から54歳と言われており、ここに25年を足すとアルツハイマー型認知症患者が急増する70代という年齢にぴったりと重なります。そのため、できるだけ早く正しい歯のケアを行うことによって脳にそもそもゴミを貯めないということが重要です。

    さらに歯周病が引き起こすのは認知症だけではなく、糖尿病も歯周病菌が原因の1つとなることが分かっています。糖尿病は、膵臓から分泌されるインスリンの働きが阻害されるという病気であり、インスリンが正常に働かないと血液中のブドウ糖を全身の細胞にうまく取り込めなくなり、血糖値が上がった状態が続いてしまいます。そして様々な合併症を引き起こしてしまいます。

    認知症と同じく糖尿病にも歯周病が関連していることが明らかになっており、歯周病菌が出す毒素の影響で作られる炎症物質サイトカインが、血管を通して全身に放出されるとインスリンが効きにくくなり、糖尿病が発症、進行しやすくなることが分かっています。実際に歯周病患者は、2倍も糖尿病になりやすいことが 研究によって分かっています。

    一方で、歯周病の原因となる歯石やプラークをしっかりと落とすことができれ ば、糖尿病のリスクが下がることが東京歯科大学の研究によって分かっています。

    美容鍼の効果研究

    美容鍼とは顔に鍼を刺すことで肌のツヤやハリを取り戻す美容法です。それを検証するために研究者が施術を受けた本人以外に第3者による写真評価という方法も取り入れて研究を行なっています。

    被験者の女性43人への美容鍼施術後に自己評価と第三者による写真評価を行いました。写真評価は施術前後の写真を見せずにどちらの写真がよく見えるかを尋ねるという方法で行いました。この方法はブラインドと呼ばれ研究の信頼性を高めるためによく使われます。

    この研究の結論は、美容鍼によって第3者が評価しても顔の印象は良くなり、特に全体の印象、肌のツヤやハリについては美容鍼の有効性が優位に認められています。また女性の方が男性よりも美容鍼による変化を感じやすいということも分かっています。

    施術後の写真がよく見えると回答した人の割合を正答率と呼び、施術前の写真がよく見えると回答した人の割合を誤答率とします。この2つの比較によって美容鍼の有効性が客観的に判断できています。具体例として自己評価と写真評価の結果、自己評価では施術直後に86%、施術3日後に74%の被験者が良くなったと回答しています。写真評価では全体の印象、肌のツヤやハリについては正答率が誤答率よりも有意に高くなりました。

    また女性評価者の方が印象、ツヤ、ハリ、たるみの4項目について男性評価者よりも正答率が優位に高くなりました。これは女性の方が美容鍼の変化に敏感であることを示しています。さらに自己評価で変化を肯定した被験者群の写真の正答率は、変化を否定した被験者群の正答率よりも全般的印象について優位に高くなりました。これは自己評価が表情に反映されている可能性があるということを示しています。

    この研究で使われた美容鍼のツボは、承漿(しょうしょう)、百会(ひゃくえ)、頭維(ずい)、攅竹(さんちく)、太陽(たいよう)、四白(しはく)、地倉(ちそう)、顴髎(けんりょう)、下関(げかん)、陽白(ようはく)です。

    また咬筋最大膨隆部へアプローチをしています。これらの場所は顔の血行やリンパの流れを整え、肌の代謝やコラーゲンの生成を促進すると期待されています。美容鍼は1回で変化をもたらすことも可能ですが、継続的に行うことで顔の健康と美しさをサポートすることができると思います。

    ご自身のお悩みによって鍼をする部位も変わってきますので、気になる点はカウンセリング時に鍼灸師にご相談ください。

    【本コラムの監修】

    恵比寿院長

    HARRNY 院長/鍼灸師 菊地明子

    ・経歴
    大学卒業後、美容の世界に入り、セラピストへ。豊富な美容知識や実務経験を活かし、その後、10年間は大手企業内講師として美容部員やエステシャンの育成、サロン店舗運営のサポートを行う。現在は、セラピスト、エステティシャン、美容カウンセラー、鍼灸師の経歴を活かし、お肌とこころと身体のトータルビューティースタイルを提案。表面だけでなく根本からのケアとして、老けない生活についてのコーチングを行う。

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