
人間関係でストレスが溜まると睡眠の質が下がり、その睡眠不足がさらにストレスを招くという負のスパイラルが生まれます。このスパイラルによって心身共に疲れ果て、一度このループに陥ると中々抜け出せなくなってしまいます。この負のスパイラルを断ち切るためには、科学的根拠に基づいた心と体のケアが必要です。
健康的に寝るための体の向き
20歳から69歳の日本人の男女1000人を対象とした調査によると、睡眠時の姿勢で最も多いのは仰向けです。一方で右向きや左向きで寝る人は、それぞれ全体の20%から30%程度、日によって違うと答えた方は25%という結果になっています。
実は寝る向きによってメリット、デメリットがあり、深く眠るためには少し工夫が必要です。科学的根拠に基づいた寝る体の向きを考えてみましょう。
仰向けで寝る
脳にゴミが溜まって認知症になる可能性が指摘されているのが仰向きです。なぜなら仰向けで寝ることで脳にアミロイドβというゴミが溜まってしまう可能性が指摘されています。アミロイドβは、アルツハイマー型認知症の原因の物質ですが、1度できてしまったアミロイドβを除去することは簡単ではありません。しかしアミロイドβは脳に沈着してしまう前であれば洗い流すことができると考えられています。そのためアルツハイマー型認知症を予防するためには、そもそもアミロイドβが作られないようにすることも大切ですが、できてしまったアミロイドβが脳に沈着する前に洗い流してあげることも重要です。
そして、アミロイドβを洗い流す方法が横向きで寝ることです。数々の睡眠研究によって、私たちの睡眠中のうちでもノンレム睡眠という深い眠りの時に脳が洗い流されていることが分かってきました。私たちの脳は脳脊髄液という水の中に浮かんでいますが、ノンレム睡眠中にこの水が流れるプールのように循環することで脳から出たゴミがきちんと洗い流されています。このような脳の洗い流しは物理的に起きているため、頭の位置や方向に大きく左右されています。
このような脳の洗い流し効果は、横向きで寝ることによって最大限に発されるということが分かっています。逆に仰向けで寝てしまうと脳の洗浄水である脳脊髄液が首の血管や脳神経に戻ってしまい、洗浄効果が発揮されないことが分かっています。
実際、健常者と認知症患者の睡眠中の姿勢を比較したアメリカの研究では、アルツハイマー型認知症の患者は健常者に比べ、仰向けで寝る時間が3.5倍であとことが報告されています。さらにパーキンソン病など他の脳の病気も合わせると、仰向けで寝ることでこれらの病気のリスクが2倍以上に跳ね上がることが分かっています。
また、仰向けでは眠っている間の呼吸状態が悪化することが知られています。仰向きによって呼吸状態が悪くなる原因としては、気道の問題、心臓の問題の2つの問題があることが分かっています。特に仰向けで寝ることによって起こる気道のトラブルは、睡眠時無呼吸症候群です。睡眠時無呼吸症候群は、睡眠の質が下がって睡眠不足になるだけでなく、低酸素状態によって脳がダメージを受けたり、最悪の場合脳卒中や心筋梗塞によって突然死してしまうこともあります。睡眠時無呼吸症候群の患者は、予備群も合わせれば日本人だけで500万人以上いると言われています。
このような睡眠時無呼吸症群は、仰向けになることで悪化することが分かっています。睡眠時無呼吸症候群の主な原因の1つが舌根沈下だからです。舌根沈下は、舌が喉に詰まってしまう状態のことで、仰向けで寝ることによって舌が重力に引っ張られて下に落ちて喉を詰まらせてしまいます。喉が詰まれば当然呼吸ができなくなってしまうので、その結果睡眠時無呼吸症候群になってしまいます。睡眠時無呼吸症候群では、寝ている間に脳に酸素が うまく行き渡らなくなるため脳にとって相当なダメージとなります。統計では睡眠時無呼吸症候群の人は脳卒中のリスクが3.3倍になることが分かっています。
また以前は、睡眠時無呼吸症候群の原因の9割は肥満であると言われていましたが、最近では痩せ方の人の睡眠時無吸症候群も増えてきています。これは日本人の食生活の変化によって顎が小さい人が増えているためと考えられています。顎が小さければ、それだけ舌が収まるスペースが小さくなるため、眠っている間に舌が喉に落ちやすくなってしまいます。睡眠時無呼吸症候群は重症の場合は 速やかな治療が必要ですが、軽度な場合や予備群の方は眠る時の向きを工夫するだけでも大きく改善します。
横向きで寝る
仰向きで寝るのがNGであれば、自分は横向きで寝ているから大丈夫と思った方も多いかもしれません。左右両方を合わせると日本人の45%ほどの人が横向きで寝ています。しかし残念なことに横向きで眠ることにもまた、それなりのデメリットがあります。
横向きで寝ることのデメリットとして背骨や内臓の歪みが挙げられます。片側だけを下にして横向きで眠っていると当然重力によって体が下側に引っ張られることになります。そうなると内臓が体の片側に寄ってしまうだけでなく、背骨が左右非対象に曲がってしまうことになります。長年片側だけを下にして横向きで寝ていると、そのような体の歪みが固定化してしまい元に戻らなくなってしまう恐れがあります。
また横向きで寝ることで最も大きな負担がかかっているのは肩です。つまり横向きで寝ることで最も多くの重力が肩に集まることになります。これによって起きてしまうのが巻き肩で、巻き型は肩が体の前の方に入り込んでしまっている状態のことです。本来、肩は耳の真下にあるのが最も自然な位置ですですが、横向きで寝ていると肩にかかる重力を緩和するために肩の位置が徐々に前方にずれていくことになります。
私たちの体の関節は全て繋がっており、肩が前に出ると背骨がそれに引っ張られて自然に猫背になってしまいます。猫背になることで背中の血流が悪くなり、肩こりや首の痛みなどが出てきます。さらに血行が悪くなれば頭に行く血流も阻害されてしまい、脳に悪い影響を与えることになります。
ただし、横向き寝には仰向けにはない美容上のデメリットがあります。仰向きでは後頭部が枕についているため、顔は常に枕に触れない状態を保つことができます。しかし横向き寝の場合は、必ず顔の一部が枕にくっつくことになります。この時、枕との摩擦によって顔の皮膚に負担がかかりシワなどの原因になってしまいます。このような横向き寝による顔のシワは決して珍しいものではありません。医学的には寝相シワと呼ばれることもあります。横向き寝によって圧迫されているお肌は、常に擦れることによって角質層がダメージを受けてどんどん乾燥します。寝ている間は、ただでさえ乾燥しやすい状態なのに、それに輪をかけて肌が乾燥することでシワができてしまいます。
それだけでなく摩擦を繰り返すことで、その部分だけにメラニン細胞が集まり、頑固なシミになってしまうこともあります。このようなことから片側だけを下にして横向きで寝るというのは美容にとっては最悪の習慣とも言えます。また横向き寝では顎が重力によって片側に引っ張られることで顔全体の骨格が歪んだり、歯並びや噛み合わせが悪くなるという デメリットも指摘されています。
噛み合わせが悪くなると美容上良くないばかりか、将来噛み合わせが合わないリスクもあります。とはいえ仰向けが完全に美容に良いかと言うとそうとも言いきれません。特に高い枕で寝ている方の場合は、仰向けだと首にシワが寄りやすくなります。いずれにせよ、健康リスクや美容上のトラブルがある程度発生してしまいます。
うつ伏せで寝る
実はうつ伏せは人間にとって最悪の寝方であると指摘されています。野生動物たちの多くはうつ伏せで眠っており、最も体にあった自然な寝方であると考えられがちですが、動物たちと人間の大きな違いは歩き方にあります。4足方向の動物の場合、背骨は真っすぐかやや背中側に湾曲した弓状の形をしています。一方で人間の背骨はS字カーブを描いて曲がっています。このように曲がっているのは、背骨が重たい頭を支えるためのバネの役割をしているためです。
私たちは直立歩行をするようになるとともに大脳が大きくなり、重たい頭を支えるために進化したのが背骨のS字カーブです。確かに人間の背骨のS字カーブは直立には適していますが、しかし寝るのには適していません。人間の背骨はうつ伏せになることで腰の部分が沈み込んでしまい、それによって反り腰になってしまうリスクがあります。このように反り腰になると腰が痛くなるだけではなく、ぽっこりお腹になる、膝の関節に負担がかかる、椎間板ヘロニアになるなどのデメリットが発生します。
背骨のすぐ前には、肝臓を始めとする沢山の内臓が控えています。そのため反り腰によって背骨の腰の部分が前に出っ張ってしまうとそれに押されて肝臓などの内臓がお腹側に出てきてぽっこりお腹になってしまいます。このようなぽっこりお腹は、背骨の湾曲が原因のためダイエットをしても改善することはありません。
また、あらゆる姿勢の崩れとは歩き方がおかしくなることで多かれ少なかれ膝に負担をかけます。特に反り腰は膝にとっては最悪で、反り腰になると傾いた骨盤を支えるため膝が後ろ側に沿ってしまいます。この状態を医学用語では反張膝と言い、膝が本来とは逆向きに沿ってしまった状態です。
さらに、うつ伏せによる反り腰は、椎間板ヘルニアになって2度と治らなくなるというリスクも伴っています。椎間板ヘルニアは背骨と背骨の間にあるクッションの役割の椎間板が飛び出てしまい神経を圧迫してしまう病気です。反り腰になると背中側の椎間板が圧迫されて飛び出し、このように脊髄神経を押し出してしまいます。脊髄神経は1本の神経の束のため、ヘルニアによって圧迫された部分より下側の神経がダメになり、頻尿や歩けないなどの症状が出てしまいます。またうつ伏せでは顔が枕に埋もれてしまうため、当然横向き寝の時と同じように美容上のリスクがあります。
正しい寝返りを打つ
それぞれの寝方によるデメリットは、ずっとその姿勢のままでいることで生じてしまう問題ばかりです。そのため寝ている間に何度も寝返りを打って姿勢を変えて、1つの姿勢でいる時間をなるべく短くしてあげることで眠っている時の姿勢リスクを最小限に抑えることができます。年齢にもよりますが、一般的な成人の健康的な寝返りの回数は1晩に20回と言われています。逆に言うと1晩に20回姿勢を変えなければ体が歪んでしまったり、顔にシワができてしまうといったデメリットを避けることができないことになります。
また、統計的には年を取れば取るほど、私たちは寝返りの回数が減ってしまうことが分かっています。寝返りには小脳によるバランス感覚や足の筋力など非常に様々な要素が複雑に絡み合っており、年を取ると特に筋力が衰えていくことで寝返りが打ちづらくなっていきます。とはいえ難しいのは眠っている間は、当然私たち意識がないため、寝返りしようと思っても自分の意思ではコントロールできません。そのため自分自身が寝返りを打ちやすいような環境を作ってあげることが大事です。
摩擦の少ないパジャマを着る
寝る時に摩擦の少ないパジャマを着ることが寝返りを打つために最も簡単な方法です。実は私たちが寝ている間、筋肉は休憩モードに入り、起きている時に比べて非常に筋力が低下します。寝返りはそのような少ない筋力によって全体重を支え、姿勢を変えなければいけない大変な作業です。特に寝ている時、体とベッドとが接触している面積は非常に大きいため、摩擦力は寝返りのために決して無視できない要素です。
実際、実験によると摩擦抵抗の多いパジャマは、抵抗の少ないパジャマに比べて寝返りを打つのにかかる時間が約6秒長くなることが確認されています。つまり摩擦の多いパジャマを着ているだけで、それだけ寝返りがしづらくなってしまいます。寝返りがしづらくなる服装は、肌が露出しているTシャツなどの服装、摩擦抵抗が大きいザラザラした素材、スエットのような分厚い服などと言われています。逆に肌が露出せず、摩擦抵抗が少ないツルツルした素材で薄手の服という条件を満たしたシルクやサテンなど薄くて摩擦が少なく、かつ 通気性が良くて長袖でも蒸れないタイプのものが挙げられます。是非ご自身にあったパジャマを選び、適切な寝返りが打てるよう工夫しましょう。
また寝返りの時の摩擦はパジャマとシーツの擦れ合によって発生するものなので、パジャマだけでなくシーツもツルツルの素材にしてあげることで、より寝返りが打ちやすくなります。ついでに枕のカバーもツルツル素材にすることで、顔や頭皮と枕との摩擦が減ってシやシミや抜け毛などを予防できます。
高反発マットレスで寝る
現在のマットレスが体に合っていてぐっすり眠れる人はそのままでもOKですが、ただマットレスに少しでも不満がある方は固めの高反発マットレスを試してみましょう。なぜなら硬いマットレスの方が寝返りが打ちやすいためです。柔らかいマットレスは体が沈み込んでしまうため、当然そこから抜け出すのには力が要ります。一方で高反発マットレスであれば反発力が強いため、比較的少ない力で寝返りを打つことができます。
また、全ての人に当てはまるわけではありませんが、多くの場合柔らかいマットレスの方が腰痛になりやすいと言われています。これは柔らかいマットレスに体が沈み込むことによって背骨が不自然に曲がってしまうためです。
軽い掛布団に交換する
寝返りをするための重要な要素の1つとして布団が軽いことがあげられます。掛け布団や毛布が重たすぎるとその分、体が布団に押されてマットレスに押し付けられることになります。寝ている間は相当筋力が落ちているため、僅か数kgであっても相当な重さとなります。
そのため寝返りのためには、できる限り軽い寝具を選ぶことが重要です。また軽い寝具には通気性が良いというメリットもあります。通気性が悪い寝具は、睡眠の質が落ちたり、蒸れて肌のトラブルが出てしまうデメリットばかりではなく、寝返りがしづらくなるというデメリットがあります。なぜなら通気性が悪い寝具の中に湿気が溜まると、それだけ摩擦力が増えるとともに湿気を吸った布団が重くなり、それらが寝返りの障害になってしまうからです。
下半身の筋肉を鍛える
寝返りのための筋力を維持すれば、多少パジャマや寝具が悪くても寝返りを打つことが可能です。もちろん筋力の維持は、寝返りだけの問題ではなく、病気にならないためにも重要なことです。
特に寝返りを打つには、足の筋肉が重要です。実は私たちが寝返りを打つ時には、ほとんど手の筋肉を使っていません。そのため日頃から、スクワットを始めとする筋トレを少しでも習慣化することで足腰の筋力を維持できるようにしましょう。
横向き寝で心臓の負担が軽減する
腰痛と共に50代以降で多くの人が悩まされるのが高血圧や不整脈といった心臓血管系のトラブルです。こういった心臓疾患のリスクを抱えている人にとっては、寝る向きが心臓への負担を大きく左右することが分かっています。横向きで寝ることは、心臓にかかる負担を軽減し、循環器系の健康維持に効果的であると考えられています。
そして心臓にとっては左向きが有利とされており、このことは様々な臨床研究によって効果が裏付けられています。仰向けになると重力に逆らって血液を全身に送らなければなりません。さらに肥満体型の人などでは、腹部の重さが心臓へ戻る大きな血管である大動脈を圧迫しやすくなり、それによって血液の戻りが悪化します。
このように血液の戻りが悪化すると、より少ない血液を全身に送り込もうとして心臓が頑張りすぎて心拍数が増加します。これによって夜間に心臓にかかる負担が増えてしまうことがあります。特に心不全や高血圧を抱える人は、医学的にも仰向けを避けるように推奨されることもあります。
実際、アメリカの心臓病関連のガイドラインでは、睡眠中の姿勢の違いが心拍数や血圧に影響を与えることが指摘されています。そして横向き根の中でも、特に体の左側を下にする姿勢が心臓の圧迫を軽減するために最も効果的です。心臓は、私たちの胸のやや左寄りに位置しています。そのため左を下にすることによって心臓が肺や横隔膜に支えら、自然な位置が保たれます。
実際、2018年に発表された研究では、左向きで寝た患者は右向きと比べて睡眠中の血圧が安定していたことが報告されています。心臓が効率よく働くことによって循環器系の健康が保たれます。
一方で、右向きになると心臓が押し上げられる形になります。それによって心臓が圧迫されやすくなってしまいます。特に慢性心不全の方にとっては、右向き寝で違和感を感じやすいという報告もあり、実際の臨床現場で左向き寝を指導するという例も珍しくありません。
さらに横向きに寝ることは、心臓だけでなく全身の血流にも良い影響を与えてくれます。内蔵からの血液の循環がスムーズになり、むくみの予防や冷え症の改善にもつながるというメリットがあります。特に高齢者や女性では、横向き寝によって夜間の手足の冷えや朝のだるさが改善された報告も見られます。このようなことから、やはり横向き寝には圧倒的なメリットがあると言えます。
ただし、左向きが良いのか右向きが良いのかについては心臓病の重症度や体格によって個人差があります。そのため心臓に持病のある方は、1度左右両方を試してみてください。一方で、特に心臓に持病がない人であれば、横向きであれば左右についてはそこまで心配する必要はないでしょう。
枕を使わずに寝るとどうなるか
長期的に枕なしで寝ることは、健康や睡眠の質に大きな影響を与えます。特に首や肩に過大な負担がかかることが挙げられます。枕なしで青向けに寝ると頭が床に引っ張られて首が必要以上に後ろに返った状態、すなわち頸部の過伸展の状態になります。過伸展とは反りすぎの状態で、そもそも人間の頭は意外と重く、約5kgから6kgもあります。
この重い頭を枕によるサポートがない状態で首だけで支え続けることになると、首や肩の筋肉は睡眠中ずっと緊張し続けることになります。この状態が続くと朝に起きた時、首や肩が痛い状態になりやすくなります。また横向きだとさらに厳しくなります。横向き寝の場合、肩幅があるため、枕なしだと頭の位置が低くなりすぎてしまい、首が下がった状態になって首や肩に大きな負担がかかります。
さらに神経や椎間板への悪影響も考えられます。頸部が過伸展の状態が続くと筋肉や人体だけでなく、神経や椎間板にも悪影響が出る可能性があります。首の骨の間にある椎間板はクッションの役割を果たしていますが、過度に反り返る姿勢が続くと椎間板に圧力がかかり、椎間板ヘルニアの原因となることがあります。
さらに椎間板が飛び出し、近くの神経を圧迫してしまうと首の痛みだけでなく、腕や手にしびれや脱力感が出ることもあります。これは一過性の寝違えとは異なり、慢性化するケースもあります。また枕なしで寝ると首が不自然な位置に曲げられた状態になりやすく、寝違えるリスクが高まります。一旦寝違えが発生すると数日間痛みが続き、日常生活に大きな影響が出ます。
睡眠の質の低下と疲労の蓄積
枕は頭や首をきちんとした位置に保ち、リラックスした状態で眠るために大切な役割を果たしています。枕なしで体が不自然な姿勢になれば、十分にリラックスできないし、寝返りも打ちにくくなり、結果として睡眠の質が低下します。
当然、寝相が悪いと睡眠効率も悪くなり、疲労が抜けにくくなることが懸念さ れます。また枕なしでは首の稼働が狭くなり、寝返りをする際に首の角度を変えたり、体を軽く持ち上げたりといった無駄な力が必要になります。そうなると寝返りを打つたびに体が大きく動いて無駄に疲れ、眠りも浅くなります。
寝返りが打てないと同じ姿勢が長いことが続き、敷布団と接している特定の部位に圧力が集中して血行不良を招きます。血行不良は肩こりや腰痛、だるさなど様々な症状を引き起こす原因になります。
いびきの悪化
青向けで枕を使わずに寝ると頭が下がり、首が後ろに反りやすくなります。リラックスして舌の筋肉が緩むと、舌の付け根が重力で喉の奥に沈み込みやすくなります。舌が落ち込むことで気道が塞がれたり、狭くなるため、呼吸の度に喉が振動し、その結果いびきが発生しやすくなります。
いびきは本人の睡眠効率の低下だけでなく、日常の集中力が削がれる原因になったり、家族の睡眠を阻害したりする弊害も生じます。さらにいびきが悪化すると体は呼吸を確保しようとして浅い眠りになりがちで、疲れが取れない問題につながります。
顔のむくみの発生
枕なしで寝ると心臓よりも頭の位置が低くなるため、血液や水分が頭部に集まりやすくなります。結果として翌朝に顔がむくんでしまいやすくなります。特に塩分や水分を多く摂った日の夜は、さらにむみやすくなるため、枕なしで寝ることはお勧めできません。
枕の役割①
枕はただ頭を乗せるためのクッションではなく、全身の健康と良質な睡眠を確保するため非常に重要な寝具です。その最大の役割は、頚椎や首の骨の自然なカーブを守ることと全身の体軸を整えることにあります。人間は、2足歩行を行うようになった結果、背骨全体がS字カーブを書く骨組を持ち、首の部分、頚椎はそのS字の一部として緩やかに前にカーブしています。このカーブのおかげで脊椎にかかる力を前後に分散できるようになっています。
そして、日中立っている時や座っている時、頚椎は常に重力の緊張を強いられているため、睡眠中にこそ日中に疲れきった脊椎をゆっくりと休ませてやる必要があります。つまり枕の最も重要な役割、それはこの自然に立った姿勢を横になった状態でもキープできるように首、肩、後頭部を支えることにあります。
枕は、この首、後頭部と布団との間の隙間を埋める役割を担い、頚椎がリラックスした自然な腕曲を保てるようにサポートし、その正しい姿勢を保つことで首や肩の筋肉がリラックスできます。
枕の役割②
枕の主な役割は、全身の寝姿勢の調整にあります。枕は首だけでなく全身の寝姿勢を整えるためにも重要な存在で、枕の高さや形が適切なら首から背中、腰までの体軸が自然にまっすぐ保たれます。逆に枕が高すぎたり低すぎたりすると、頭の位置がずれて体軸がねじれたり、体が不自然な姿勢になったりして肩や腰に負担がかかってしまいます。
また、適切な枕の使用は快適な睡眠環境を作り出し、良質な深い睡眠を得ることに繋がります。一方で枕は、寝返りのサポートと体圧分散の役割があります。人は一晩に平均して20回から30 回も寝返りを打つとされています。枕は、この寝返りをスムーズに打てるようサポートする役割を持っています。
そもそも寝返りの役割には、負荷分散と血行促進があります。長い間、同じ姿勢でいると布団と接している部位に圧力が集中し、血流や体液が滞ってしまいます。寝返りを打つことで負荷を分散し、血液やリンパ液の循環が促せます。他にも体温調節と歪みのリセットも挙げられます。睡眠中に温まりすぎた部分の熱を放出し、体温を調整すること、そして体の歪みをリセットするメンテナンス機能も果たします。
そして体が自然に寝返りを打つには、枕を用いて頭の重さが分散される必要があります。この場合、枕のサイズが十分であること、寝返りを打って横向きになっても頭が落ちないことが重要になります。
また、枕には寝違えの予防効果もあります。適切な枕は、首を支えてくれるため、不自然な方向に曲がるのを防ぎ、寝違えのリスクを軽減します。さらに胃酸の逆流を防いだり、顔のむくみを防止します。そして頭が心臓よりも高い位置にあれば重力による血液や水分が顔に集中するのを緩和してくれます。
枕の選び方
万人にとっての完璧な枕は存在しません。自分自身の体型、寝姿勢、使用しているマットレストの組み合わせによって決まります。健康のため、そして睡眠の質を向上させるため自分にあった枕を選ぶことが重要です。自分に合う枕を選ぶ時には高さ、硬さ、素材の3つのポイントをチェックすることが重要です。
この中でも、特に枕の高さは睡眠の質と体の負担に最も影響する要素です。理想的な枕の高さ、それは自然に立った姿勢をそのまま横になった状態で保てる高さです。これによりの脊椎の湾曲が自然に保たれ、首、肩、後頭部をしっかり支えることができます。枕が高すぎると圧迫されて首の痛みや凝の原因になり、逆に低すぎると頭が不安になります。当然体格や首のカーブの深さによって個人差があるから自分にあった高さの調整が必要です。
次に枕の素材によって寝心地は大きく異なるため、自分がリラックスできるかどうかという好みに合わせて選ぶことが大事です。頭は重さがあり、汗をかきやすいため熱がこもらず、汗を吸って発散してくれるもの、洗濯できるもの、ヘタリにくいものが適しています。
南オーストラリア大学などの研究では、横向き寝の人への実験では、ラテックス枕が最も評価が高くなりました。首の痛みが出にくく、快適性でも1番スコアが高かった結果となっています。逆にふわふわの羽毛枕は不快と感じる人が多く、首の痛みが残りやすい結果となりました。
他にも韓国大学の研究では整形外科用、低反発、羽毛の3種類の枕を比較した結果、整形科用枕が最も睡眠の質を高める結果となりました。これは首をしっかり支える形状が鍵であることを示唆しています。また枕の高さや素材だけではなく形も考慮に入れる必要があります。
立体構造(中央低・両サイド高)は、青向け寝と横向き寝の両方に対応できる理想的な形状です。くぼみタイプは中央にくぼみがあり、頭部が安定しやすいです。肩口サポートタイプは、肩まで支えるアーチ型で体圧を広く分散し、寝返りをサポートできます。
そして、枕の大きさの選び方は、寝返りを打っても頭が落ちない大きさが必要で、理想的な枕の幅は自分の頭3つ分が目安になります。左右どちらに寝返りしても頭が落ちず、肩先までカバーできる十分な横幅と奥行きが必要です。平均的なサイズの目安は、幅60cm以上、奥行き40cm 以上とされています。
【本コラムの監修】

・経歴
大学卒業後、美容の世界に入り、セラピストへ。豊富な美容知識や実務経験を活かし、その後、10年間は大手企業内講師として美容部員やエステシャンの育成、サロン店舗運営のサポートを行う。現在は、セラピスト、エステティシャン、美容カウンセラー、鍼灸師の経歴を活かし、お肌とこころと身体のトータルビューティースタイルを提案。表面だけでなく根本からのケアとして、老けない生活についてのコーチングを行う。


















