東洋医学で診る「求める味でわかる体のサイン」

    東洋医学で診る「求める味でわかる体のサイン」

    無性に何かが食べたい時には、心と体のSOSのサインが隠れているかも知れません。東洋医学では「五味調和と」いう考え方あり、酸味の酸っぱい、苦の苦い、甘みの甘い、辛みの辛い、塩味のしょっぱいの5つの味覚のことを指します。東洋医学では、この5つの味を体に摂り入れることでそれぞれが体に対して違った働きかけをすると考えられています。

    例えば体や心に苦みの働きが足りていない時は苦いもが欲しくなり、甘味の働きが不足している時はチョコレートなどの甘いものが食べたくなると考えます。このような具体的な体のサインから体のどんなSOSのサインがあり、体がどんな状態になっているのか確認していきましょう。

    酸味が欲しい時

    梅干などの酸っぱいものが無性に食べたい時は、肝臓やメンタルが弱くなっている時のサインと考えられています。酸には収斂作用と固渋作用があり、収斂作用とはタンパク質を変性させることにより組織や血管を縮める作用のことです。漢方では物を集める力のことを意味し、特に血を集めて肝臓に貯蔵する力のことを言います。

    一方の固渋作用は、体を引き締めて出過ぎるものを抑え、渋らせる働きのことです。酸っぱいものは引き締める力が強く、肝臓と関係しています。例えばシメサバは酢の持つ収斂作用を利用して、サバの身を引き締めた調理法です。

    また梅干の酸味には、物を固め出して渋らせる作用があることから下痢の改善に効果的だと言われています。他にも汗腺を引き締めて発寒を抑える作用もあります。

    ちなみに東洋医学では、肝臓は気の流れを調整して感情をコントロールしたり、自立神経によって体全体の機能を順調に調整する働きもすると考えられています。イライラしたり、憂鬱な気分になったり、決断力が下がる時は酸っぱいものがおすすめです。このような時には甘いものに手が伸びがちだと思いますが、むしろ酸っぱいものを食べるとメンタルのコントロールをしやすくなります。

    また、酸味と甘味の両方が摂れる食べ物も血流を良くして肝臓の機能を活発にしてくれると言われています。特にレモン、キウイ、みかん、伊予柑、シークワーサーといった柑橘類がお勧めです。

    苦味が欲しい時

    苦みが欲しい時、例えば渋みのある緑茶や紅茶が無性に飲みたくなったりする時が苦みが欲しい時です。苦みは小腸、心臓、舌との関係が強く、苦には熱を沈め、湿りを乾かす作用である固める力があると言われています。苦味は、心の支配する血脈に作用して血脈を引き締め、血管が引き締めることで圧が高くなって血が早く流れます。そして流れが早くなると血管の中の水が少なくなり乾燥します。心は元々、血がたくさん流れ込んでくる陽気が多い臓器のため、水分が減って熱が多くなると苦しくなります。こんな状態にならないように常に心気が働いていて心に熱が多くなりすぎないように制御しています。

    この作用を、心熱を抑えるという意味で固めると言い、その固める働きをするのが苦みです。心が固まっている時のサインとしては、小さなことに興奮するほど喜んでしまったり、逆に不安定になったり、緊張感が強くなったりといったメンタルのアンバランスに出ることが多いと言われています。また体の症状としては軟便、下痢、巻き舌、動機、息苦しさ、汗が出やすい、ゲップが出るといった症状が出たり、のぼせや頭痛、咳が出ることもあると言われています。

    苦みが欲しい時には、ごぼうや春菊を摂るのがおすすめだと言われています。ただし大量に苦みを取ると大腸や肺に不調が出たり、体毛が抜けやすくなったりすると言われているため注意しましょう。

    甘味が欲しい時

    甘みが欲しい時は消化器関連の胃や口のSOSのサインの可能性が高いと言われています。甘みには栄養分を補給して体力不足を補ったり、胃腸の働きを整える働きがあります。しかし摂り過ぎると腎臓、膀胱、耳の不調の原因となり、体にだるさが出てしまうことがあります。

    そして疲れやすいと思われる場合は、甘いものの食べ過ぎに注意しましょう。なぜなら甘味には緩める力があると言われており、例えば運動で筋肉を使いすぎた時に甘味を摂ると筋肉が程よく緩んで、筋肉の疲労を緩和して痛みなどを緩和できると言われています。ただし体が緩みすぎると返ってだるくなったり、胃腸の働きが弱くなり、胃もたれなどを起こしたりします。

    一方で、甘味というとすぐに砂糖とかの甘いものを連想すると思いますが、食品で補うなら豆腐、伊勢海老、大根がおすすめです。また東洋医学では、特に食べる量が多い人、早食いの人は胃に熱がこもった胃熱の状態に陥りやすいと言われています。日々の食事はゆっくりと味わって満足したら食べ終わること、これが胃熱の状態になるのを防ぐために大切なことです。

    辛味が欲しい時

    辛味が欲しい時は大腸、肺、鼻、皮膚からのSOSのサインだと言われています。辛みには体を温める作用が期待できますが、足りなくなってしまうとメンタルでは悲しい気持ちになってしまったり、体の状態では鼻炎、鼻水、冷え、咳、むくみ、便秘、乾燥肌といった症状が現れると言われています。

    また、辛味は血液の循環を促して、特に肺に働きます。肺気を補って陽気を循環させ体を温めることで発汗を促進します。体に湿気が多く溜まってしまうと体にも気持ちにも重さやだるさが出るため、辛味を摂ることで汗をかいて元気になります。

    そして、舌にしびれるような辛さをもたらす山椒の辛味には、肺、腎、特に胃腸を強力に温めつつ殺虫作用もあります。さらに強い辛みがある唐辛子や山椒には強壮剤としての働きもあると言われています。ただし辛味を摂り過ぎてしまうと、今度は肝臓や目の不調の原因になったり、爪が弱くなったりすることがあると言われています。

    塩味が欲しい時

    東洋医学では鹹味と言い、腎に属し、つまり腎臓のことになります。他にも膀胱、泌尿器や生殖器のことも意味します。ちなみに腎は命の源とも呼ばれていて、アンチエイジングにも深い関係がある臓器です。人が弱って塩けのあるものを食べたい時は、天然海塩や梅干、昔ながらの製法で発酵させ作られた味噌や醤油といった食品から塩味を補うのがおすすめです。

    成長や生殖を司る腎が弱ってしまうとメンタルでは不安感や恐怖感が強くなってしまいます。また腎は耳とも関係があり、聞こえづらい、耳鳴り、頭痛、目まい、生殖器官の衰え、頻尿、抜け毛、白髪、老化が進むといった症状が現れます。

    そして塩味には、酸味、苦み、甘み、辛みの4つの味を吸収しやすくしたり、新陳代謝を活発にする働きがあります。だからと言って摂り過ぎると血圧が上がり、小腸や腎臓の機能に悪影響が出ることもあるため注意しましょう。塩味が無性に欲しい時は、しじみ、のり、カニ、ほたて、ヤリイカといった海産物を摂取したり、天然のミネラルがたっぷり含まれた塩を使った調理で補うのがおすすめです。できるだけ天然の質の良い塩分を摂ることが大切です。

    無性に何かが食べたくなる

    無性に菓子パンが食べたい

    こういう時は糖質が不足しているのではなく、タンパク質が不足しているサインの可能性があります。タンパク質は体の修復とか細胞の成長に関わっており、体にとってタンパク質が不足することをエネルギー不足だと勘違いして、とにかく糖質を摂れば解決すると体が反応してしまいます。炭水化物と脂質の塊のパンでは筋肉にならずに脂肪になるだけなので、そんな時は肉、ヨーグルト、チーズなど手軽に食べられるタンパク質を摂取してみましょう。

    無性に揚げ物が食べたい

    揚げ物に食べたい時は、カリウム不足の可能性が疑われます。カリウムは、むくみの解消に効果が期待できるミネラルです。カリウムが不足すると体内の排泄機能が弱まって水分を貯めやすくなりむくんだりします。体は水分ばかりになれば脂が足りていないと感じて脂っこいものを食べたいとサインを出すと言われています。

    さらに揚げ物は、脂質も多いだけでなく、物によっては塩分も多いため、塩分を摂り過ぎてより一層水分を溜め込みやすくなります。その結果、水分ばかりで油が足りないとなり、揚げ物欲が止まらなくなります。そんな時は揚げ物を食べる代わりに、カリウムが豊富なバナナ、芋類、アボカドなどを食べましょう。

    無性に炭酸飲料が飲みたい

    炭酸水が無性に飲みたい時はカルシウムが不足している可能性があると言われています。炭酸は文字の通り、酸性の飲み物です。そして骨や歯の主成分であるリン酸カルシウムは酸に解ける性質を持っています。リン酸カルシウムが溶け出すことで体にとっては一時的にカルシウムが補われた状態になります。つまり自分の体に溜めてあったカルシウムを溶かしているだけです。つまり炭酸水は無性に飲みたくて、飲んでも満足できない時は体が激しくカルシウム不足に陥っている可能性があると言われています。そんな時は、炭酸水を飲んでしまう前に牛乳、チーズ、ヨーグルトといった乳製品や小魚の煮干を食べてみましょう。

    このように、その食べたいって思っていることが別の意味を持った体からのサインである可能性も十分にあるので、体からのサインを見逃して欲望のままに食べたり飲んだりすると必要な栄養素が補われないまま状況がどんどん悪化してしまうこともあります。

    東洋医学で診る「抑えきれない食欲」

    東洋医学では人体はエネルギーの流れバランス、そして調和によって健康が維持されると考えられています。抑えきれない食欲もこのエネルギーの不均衡から生じるとみなされます。特に30 代や40代の女性はホルモンの変動や生活習慣の変化が大きく、気のバランスが崩れやすい時期です。東洋医学はこのような問題に対して全体的なバランスを重視したアプローチを提供します。

    例えば、東洋医学では五臓六腑が人体の重要な機能を担っていると考えられています。特に腎は食物の消化吸収とエネルギー変換を司り、これらの臓腑の不調は食欲の異常に直結します。

    気は食物からの気の抽出と輸送を担い、その機能が弱まると消化不良や食欲不信、過食へとつながります。また胃熱がたまると過度の食欲や空腹感が生じます。これは胃の焼き尽くす力が強すぎるため食物が速やかに消化され、常に空腹感を感じる状態となるからです。

    30代や40代の女性が抱える抑えきれない食欲は、東洋医学から見れば体内の気の不均衡が原因です。気の機能を整え食欲を自然と調節することが重要になります。

    一方で食欲の悩みを脳科学の観点から考えると、食欲は私たちの脳内で制御されています。特に視床下部は食欲の調節に重要な役割を果たす脳の領域です。この部分はエネルギーのバランスを監視し、飢餓感や満腹感を感じさせるホルモンの分泌を調節しています。

    例えば食事の間隔が長くなると胃から分泌されるグレリンの量が増え、このホルモンが視床下部に作用して飢餓感を刺激します。その時に、特に糖質や脂質の高い食品を摂取すると報酬系と呼ばれる脳の領域が活性化し、ドーパミンが放出されます。これにより一時的に幸福感が得られ食欲が増進します。

    一方で、食欲を抑制する脳メカニズムであるレプチンは、脂肪細胞から分泌されます。レプチンは体内のエネルギー貯蔵量を脳に伝え、視床下部に作用して食欲を抑制します。しかし肥満の状態ではレプチンへの感受性が低下し、食欲抑制の信号が弱まることがあります。

    また食後に血糖値が上昇するとインスリンが分泌され血糖を細胞内に取り込みます。このインスリンもまた視床下部に作用して食欲を抑制する効果があります。

    食欲に影響を与えるその他の要因にストレスが挙げられます。ストレスが高まるとコルチゾールのレベルが上昇し、食欲が増加することがあります。これはストレスによる不安感を軽減するため、ドーパミンの放出を促す食べ物を求めるためです。また睡眠不足は、グレリンの増加とレプチンの減少を引き起こし、食欲を増加させます。

    このように抑えきれない食欲は脳の複雑なメカニズムと密接に関連しており、食欲をコントロールするためにはこれらの脳科学的な知見を元にストレス管理、適切な睡眠、健康的な食生活などのライフスタイルの見直しが必要になります。また食事や運動だけでなく心の健康にも配慮することが食欲を適切に管理する鍵となります。

    【本コラムの監修】

    恵比寿院長

    HARRNY 院長/鍼灸師 菊地明子

    ・経歴
    大学卒業後、美容の世界に入り、セラピストへ。豊富な美容知識や実務経験を活かし、その後、10年間は大手企業内講師として美容部員やエステシャンの育成、サロン店舗運営のサポートを行う。現在は、セラピスト、エステティシャン、美容カウンセラー、鍼灸師の経歴を活かし、お肌とこころと身体のトータルビューティースタイルを提案。表面だけでなく根本からのケアとして、老けない生活についてのコーチングを行う。

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