葛根湯を風邪の引始めに飲む理由

    葛根湯を風邪の引始めに飲む理由

    漢方は、伝統医学の1つで何千年もの歴史があり、体質や病気の症状に合わせて植物や動物、鉱物など自然の素材から作られた薬を組み合わせ、体の調子を整えたり、健康を維持するのに役立ちます。また漢方では舌や脈を診ることで患者さんの健康状態を詳しく調べて、その状態にあった漢方を処方していきます。

    東洋医学の特徴

    東洋医学では、あらゆる事象は陰と陽、つまり反対しながらも補い合う力で成り立っていると 考えます。例えば健康を保つためには、この陰陽のバランスが重要となります。また木火土金水の5つの元素(5行)が自然界や私たちの体に影響を与えると考え、これらの元素がどう作用するかを理解することで体の不調を診断し、治療へと繋げていきます。そして症状が同じでも、その原因によって治療法が異なるのが東洋医学の特徴でもあり、患者1人1人の体質や状態をしっかり見て病状を特定し、治療法を決めます。

    一方で、東洋医学で重要なのが「気血水」で、体の健康状態やバランスを理解するためには欠かせない3つ要素です。「気」は生命エネルギー、「血」は血液、「水」は体内の水分を示しています。さらに東洋医学では、自然治癒力の活用を最大限に生かすことに焦点を当てています。これには食事の改善や生活習慣の見直し、ストレス管理などが含まれます。

    漢方薬と西洋薬の違い

    漢方薬は、体質や症状の根本原因に対処しようとするのに対し、西洋薬は特定の症状や病気に対する直接的な治療を目指します。また成分に関して漢方薬は、自然界から採取された植物や動物、鉱物などの天然成分から作られることが多いですが、一方で西洋薬は化学的に合成された成分を使用します。

    そして治療方法にも違いがあり、漢方ではその人に最も適した治療法を選ぶ「体質治療」が特徴になります。一方で西洋医学では病気ごとに標準化された治療ガイドラインに従うことが多いでしょう。さらに漢方薬は、副作用が少ないため、長期間に渡る使用が可能ですが、その分効果が現れるまで時間がかかります。それ対し西洋薬は効果が早く現れることが多い分、時には強い副作用が伴うこともあります。

    漢方薬の選び方

    市販の風邪薬には、風邪の原因ウイルスをやっつける成分は入っておらず、体力の消耗につながる過度な熱や咳による喉の痛み、鼻水などの症状を和らげる成分が入っています。つまり風邪を治しているわけではなく、風邪の症状を抑えているだけです。しかし漢方薬は複数の成分が集まることで様々な症状に効きます。

    例えば、代表的な漢方薬の葛根湯は、風邪の症状の他にも肩こりなどにも使えます。漢方薬は人が元々持っているバランスを保つという考え方をもとに作られており、体の悪いところだけでなく体全体のバランスを改善させることを目的に作られています。

    この体全体のバランスを改善させる漢方の考え方では、体を構成している基本的な要素は気血水とされており、この考えを元に全ての漢方薬が作られています。気は、気力など目には見えないエネルギーのこと、血はその名の通り主に血液のこと、水は血液以外の体液全般のことを指し、水分代謝や免疫のシステムにも関わっていると考えられています。

    漢方では、この気血水が体をうまく巡ることで健康が維持されると考えられています。漢方の考え方には他にも多くの要素がありますが、漢方薬を自分で選ぶ時の重要なポイントがあります。それが自分自身の「証」を見極めることです。

    証とは、その人の状態を表すもの、すなわち体質、体力、症状の現れ方などを表したもので、そして実証と虚証に分けられます。実証は体力があり、筋肉質でがっちりしたようなタイプで、血色が良く、肌艶がある人です。一方の虚証は、体力がなくて弱々しく、細みで華奢なタイプで顔色は悪く、肌が荒れやすいような人です。この実証、虚証向きなのかで選ぶ漢方薬が変わってきます。つまり証を間違えて漢方薬を選ぶと飲んでも効果が期待できません。

    葛根湯とは

    葛根湯は、寒気や頭痛、肩こり、発熱など風邪の初期症状を和らげる効果が期待できます。葛根湯は「傷寒論」という古い中国医学の書物にも記載されており、その歴史は約1800年前にまで遡ります。この書は中国医学における医方の祖とされる医学者の張仲景氏によって「傷寒論」で提唱されたもので、後の世代の医学者たちによって研究され、改良が加えられてきました。そして日本を始め、多くの東アジアの国々で広く利用されています。

    葛根湯には7つの生薬が含まれていて、まずは葛根が挙げられます。葛根のマメ科の葛という植物の根の部分で、7つの小薬の中で一番多く配合されています。葛根は風邪の引き始めに体を温め、発汗を促してくれる成分で、下熱作用もあるため発熱時にもお勧めです。

    2つ目の生薬は麻黄です。この麻黄には、エフェドリンが含まれていて、これは気管支を広げ、呼吸を楽にする効果があります。また鼻詰まりや息苦しさ、頭痛の緩和に役立ち、発汗作用もあります。 3つ目の生薬は桂枝です。クスノキ科のニッケイという植物の枝や幹の若い部分を乾燥させたもので、これは血行を良くして体の冷えを改善し、体温を上げて免疫力を高める効果が期待できます。

    4つ目の生薬は甘草です。甘草はマメ科の植物である甘草の根や根茎を乾燥させたもので、甘草には滋養強壮作用と炎症を抑える作用があり、他の小薬の効果を高めながら副作用を和らげる役割があります。5つ目の生薬は生姜です。ショウガを乾燥させた生姜は、体を内側から温め、消化を助ける効果や吐き気を抑える効果があります。また抗炎症作用もあり、風邪の症状を緩和してくれます。

    6つ目の生薬は大棗です。大棗はクロウメモドキ科に属するナツメの果実を乾燥させたもので、エネルギーを補給し、体力を保つ効果があります。ストレスや疲労から来る不調を和らげる効果もあります。最後7つ目の生薬は芍薬です。これはボタン化のシャクヤクの根の部分が使われており、鎮痛作用があり、特に頭痛や筋肉痛の緩和に効果的です。さらに炎症作用もあり、体の痛みや腫れを和らげる効果が期待できます。

    葛根湯は、様々不調や病気に効く

    風邪の初期症状

    葛根湯の効果は、風邪の初期症状で、特に寒気や首のこわばり、頭痛に効果があります。葛根湯には、葛の根と生姜が含まれており、葛根の下熱や抗炎症作用、生姜が体を温めて発汗を促す作用によって風邪の症状が緩和されます。

    また、葛根湯が体の表面の血流を良くし、体温を上げることで風邪と戦う体の能力をサポートします。また免疫システムの働きを支援し、体が風邪に対抗する力を強化してくれます。

    なぜ風邪の引き始めに飲む理由は、葛根湯に含まれる成分が風邪の初期症状に対して効果を発揮するためです。つまりウイルスが体内に入ってまだ増殖していない段階で摂取することで深刻化を防ぎ、回復を早めてくれます。風邪の引き始めには、一般的には首筋のこわばりや体のだるさ、軽度の発熱、軽い頭痛、鼻水や鼻詰まりなどがあります。この症状の段階で飲むと効果的になります。

    肩こりの緩和

    葛根湯には固まっている筋肉を緩める効果もあります。筋肉が固まっていると気血水が滞る原因にもなってしまいます。葛根湯は血行を促進する作用があるため、血流が良くなると筋肉組織への酸素や栄養素の供給が向上し、疲労物質が排出されやすくなるため肩こりが楽になります。また体を内側から温める作用によって筋肉のこわばりや緊張を和らげ、抗炎症作用によって炎症を伴う肩こりにも効果的です。

    乳腺炎の治療

    乳腺炎とは、乳房の組織が感染して、炎症を起こす病状です。特に授乳中の女性に多く見られますが、授乳していない女性や稀に男性にも発生することがあります。授乳中の場合は、乳房の乳管が詰まり、乳汁が滞ることで細菌が増えやくなるため発生し、非授乳中の場合は乳房の傷や皮膚の感染が原因で起こることがあります。

    東京大学の論文によると、葛根湯が出産後1年以内に乳腺炎を患った3万4074人の患者にどのような効果があるか調べています。その結果、葛根湯を使うことで抗生物質の使用率が減っていることが確認されています。

    インフルエンザ予防

    葛根湯を飲むことでインフルエンザの発症を防げるかどうかを調べた研究によると、インフルエンザに罹患した家族がいる妊婦を対象に葛根湯を7.5g、5日間投与した結果、対象者の大半は投与後に発熱や他のインフルエンザの症状を示しませんでした。また全ての妊婦と新生児には妊娠や出産に関する異常は認められませんでした。このように服用後も安全だったことが確認されています。

    葛根湯の効果的な飲み方

    葛根湯の効果的な飲み方は、体の不調を感じたら早めに服用することです。そして食前または食事から2から3時間後、胃が空の状態で飲むことで成分が吸収されやすくなります。飲む方法は、水またはぬるま湯で飲みましょう。ちなみに消化が容易な食事を選ぶことで体はそのエネルギーを病気の回復や感染からの保護に使うことができ、自然治癒力が向上する可能性があります。

    一方で服用を中止するタイミングは、症状の改善をしっかり見極めることが大切です。症状が無くなったのに飲む必要はないのに、薬が余っているからと言って服用するのはやめましょう。また葛根湯は、全ての人にお勧めできるわけではなく、飲まない方が良い人もいます。具体的には、虚証の方です。

    東洋医学の特徴として証に基づく治療しますが、証の分け方として「虚」または「実」というものがあります。虚弱体質の方を虚証、体力があって胃腸が強い人を実証と言います。

    虚証の人の場合、胃腸が弱いので葛根湯が体に合わず、お腹を壊したりします。また発汗が多い人や高血圧の人、下熱剤や鎮痛剤を使用している人、肝疾患や腎疾患がある人なども葛根湯によって症状の悪化などのリスクを生じる可能性があるため、気をつけましょう。また妊婦さんへの処方については様々な考え方があるため、自己判断での服用は避けましょう。

    葛根湯とよく似た漢方

    気血水の巡りが良くなり過ぎることで、ほてりや発汗、頻脈、動悸、興奮などが現れる場合があります。また生薬が組み合わせにより、アレルギーを起こす人も稀にあります。基本、葛根湯は体力があって、胃腸が丈夫な人に適応する生薬です。お年寄りや体力が低い人、胃腸が弱い人には効果があまり発揮されないと言われています。

    葛根湯に似た作用を持つ漢方薬もあるので、症状によってはこちらを飲んでも良いでしょう。葛根湯に似た作用を持つ漢方は、麻黄湯(まおとう)と小青竜湯(しょうせいりゅうゆ)です。麻黄湯は麻黄、桂枝、甘草、杏仁(きょうにん)といった4つの生薬が組み合わさった漢方薬です。

    杏仁以外は、葛根湯に含まれていた生薬と同じで、杏仁はバラ科のホンアンズの種子を乾燥させたものになります。胸のあたりの水の滞りを改善して、咳や息切れを良くしたい時に使います。麻黄湯は、胃腸が丈夫で体力がある人、そして咳が激しい場合におすすめです。

    一方の小青竜湯は、麻黄、芍薬、甘草、桂枝、乾姜(かんきょう)、細辛(さいしん)、五味子、半夏(はんげ)の8種類の生薬からできています。乾姜は生姜と原料は同じですが生成方法が違い、根茎を湯通しして皮を剥いて乾かしたものが乾姜になります。体を温める力が生姜よりも強く、水の滞りを正してくれる効果もあります。

    細辛は、ウマノスズクサ科のウスバサイシンの茎と根を乾燥させたものです。体を温めて冷えや喉の痛み、咳に効きます。五味子は、マツブサ科のチョウセンゴミシの種子を乾燥させたもので、咳を鎮める効果があります。半夏はサトイモ科のカラスビジャクの茎を乾燥させたもので、水の滞りと気の滞りを解消させて、嘔吐や胸から喉にかけての痛みや咳に効きます。

    特に鼻水や咳も出る時におすすめです。ちなみに小竜青は、中国の神話に出てくる四神の1つで、小竜青湯にはマオウという生薬が含まれています。このマオウの色が淡い緑色をしていて青っぽいことから、この青竜とかけて命名されています。

    小竜青湯は、水気を改善する漢方薬で、体を温め水のバランスを整えることで鼻水などを改善します。鼻水に効くため花粉症にも使える便利な漢方薬です。また肺を温める作用もあるため咳にも効果があります。風邪の後に咳だけ残ってしまった時の症状にも小竜青湯は有効です。この小青竜湯は少し体力が落ちている人に向いており、悪寒や鼻水の症状が強く出ている人にもおすすめです。

    葛根湯と麻黄湯の違い

    葛根湯は比較的、体力がある人に向いている漢方薬で、実証の人向けに合っています。7種の生薬の組み合わせており、植物や動物、鉱物の一部を加工して薬としての効果を高めたものです。

    実は葛根湯は、ほとんどの人が間違えたタイミングで飲んでいます。風邪の引き始めにしか効果がなく、引き始めに体を温めて発熱させ、体の毒素を追い出すことで風邪の症状を和らげます。そのため飲むタイミングとしては、寒気を一瞬でも感じた時点で飲むのがベストです。つまり寒気をゾクゾク感じている時では遅く、ゾクゾクして首筋に違和感のある時に使うのがベストです。

    一方で、麻黄湯は体力が充実している人に向いている漢方薬で、これも実証の人に向いています。麻黄湯も葛根湯と同様に、風邪の引き始めに使える漢方薬で、寒気が出た時に飲むのが効果的です。

    麻黄湯に含まれている生薬は4種類ですが、場合によっては麻黄湯の方がより効果的です。麻黄湯もゾクゾクした時に使うと体を温めてくれる効果があり、そして体が発汗するのを手助けしてくれます。そして体を温める働きと発汗を促す効果が強いのは麻黄湯の方です。特に強い寒気のある風邪やインフルエンザのような症状の時には麻黄湯がおすすめです。ただし、その分麻黄湯は体力が充実している人に向いている漢方薬で、実証で特に元々の体力も充実していた方が良いでしょう。

    そして葛根湯の方が優れているところもあり、葛根湯はカッコンという生薬が配合されていて気水のバランスを整えてくれます。つまり肩こりや頭痛などにも効果があり、葛根湯の方が麻黄湯よりも使える症状が多くなります。また、どちらも体力がある人向けのため、もし虚弱な人が服用すると効果が現れにくいばかりか、体の負担になる可能性があります。そのため体力が乏しい傾向がある高齢者にはお勧めしにくい漢方薬です。

    体が弱かったり、高齢の人には桂枝湯がおすすめです。桂枝湯も風邪の引き始めに有効な漢方薬で、体に負担をかけやすい麻黄が入っていない漢方薬です。これも葛根湯や麻黄湯と同じような働きがあり、体をじわりと温め、発汗させる漢方薬です。実はこの桂枝湯は葛根湯と兄弟のような漢方薬で、5種類の生薬にカッコン、マオウの2種類を追加すると葛根湯になります。この3 種類の漢方薬を正しく使えば風邪を悪化させずに早期治療できるでしょう。

    葛根湯の効果が出にくい人

    漢方薬は自分の体質に合わせたものであれば効きますが、全然効かない、効き目が弱いということも普通にあります。例えば葛根湯は、元々健康で体力もある人に適しており、逆に虚弱質な人は効果は弱くなることがあります。このような方は、葛根湯よりも桂枝湯(けいしとう)の方がおすすめです。これは逆に体力がある人には効きにくい漢方薬です。実は桂枝湯に2種類の生薬を追加すると葛根湯になります。桂枝湯は胃腸が弱くて体力のない人にも体に負担をかけづらい処方になっています。

    また同じ葛根湯として売られている商品でも、実はメーカーによってその中身は微妙に違います。粒の大きさや錠剤タイプなどの見た目の違いだけでなく、配合の差とエキス濃度の差もあります。

    ツムラとクラシエの葛根湯の1回分の成分を比較すると生薬の使用量にはかなり差があることが分かります。カッコンの量はクラシエの方がかなり多い(2.0g)ため、肩こりのような症状には効果的で、一方でツムラはショウキョウが多く含まれている(0.67g)ため胃腸の働きをよくして効果が期待できます。つまりショウキョウが多いので食欲が減っていたり胃腸の調子も気になるならおすすめになります。

    また、エキス濃度の差は葛根湯エキス顆粒A(ツムラ)と葛根湯エキス顆粒S(クラシエ)を比較すると、葛根湯エキスはツムラはクラシエの2/3 の量です。医療用の漢方薬と比較して市販の漢方薬はエキスの量が2/3や1/2の量になりますが、これは経費削減ではなく、漢方薬を使う人のことを考えているからです。

    また、エキス濃度は商品によって違い、例えば同じツムラでもツムラ漢方内服液葛根湯は最大量が配合の満量処方になっています。単純に満量処方の方が良いというわけではありません。例えば若者や体格の良い方で利き目を重視する場合には、葛根湯の量が多い葛根湯エキス顆粒S(クラシエ)や満量処方の漢方内服液葛根湯(ツムラ)がおすすめです。そして高齢者や慎重に試したいといった場合には、エキス濃度が少ない葛根島がおすすめで、ツムラ葛根湯エキス顆粒Aのような製品が挙げられます。他にも1日に飲む回数も商品によって違うので注意しましょう。

    葛根湯の注意点

    葛根湯に副作用が現れる多くは、規定量を超えて服用している場合です。薬は規定量があるように、漢方薬にもあります。短時間で何本も飲めば、多量服用により逆に体の毒にもなります。用法・用量はしっかり守ることが大切です。

    また数種類の漢方薬を自分の判断で飲む場合です。例えば葛根湯は、市販の薬と飲む時も注意が必要です。麻黄に含まれているエフェドリンや甘草に含まれているグリチルリチンは、市販の風邪薬にも含まれていおり、効き目が強すぎると返って逆効果になることがあります。

    そして、市販薬に生薬が入っており、気づかず飲んでしまう場合もあります。もちろん重い副作用になることは稀ですが、吐き気、食欲不振、不快感、発疹や発赤、皮膚のかゆみなど、主に消化器系、皮膚系の副作用が確認されています。副作用が出た方は、迷わず医療機関に行くようにしましょう。また妊娠中人は使用する前に医師に確認をとりましょう。

    そして副作用と関連して、こんな人は飲まない方が良いという注意点もあります。まずは漢方薬を3 種類以上服用している人、中高年で身長が低く、体重も軽い人、利尿剤を服用している人、糖尿病のためインスリン治療をしている人、 肝臓疾患を治療している人などです。このような人たちは副作用が出やすいため、医者に必ず相談してください。

    漢方薬にもリスクはある

    漢方薬は、西洋医学とは別の系統の医学で使われている薬の総称のことです。西洋医学が腎臓や肝臓といった体の部別に病気を見るのに対して、漢方の東洋医学は体を全体的に俯瞰し、病気を根本から治療するというアプローチを取ります。そのため東洋医学は、西洋医学ではカバーしきれない部分を補ってくれ役割である代替医療の1つとして注目されています。

    西洋医学には、抗がん剤のような治療効果が高い一方で、副作用もそれなりに強い治療法が沢山あるため、このような副作用から西洋医学を極端に嫌い、アンチ西洋医学を唱える 人たちが沢山います。確かに西洋医学には、様々な問題があるかもしれませんが、一方で使い方を間違えなければ有効な治療となる薬も沢山あるのは事実です。そのため西洋医学を完全にシャットアウトしてしまうのではなく、私たちや自らが正確な知識をつつけるように努力し、西洋医学とつかず離れず、上手く付き合っていくことが非常に重要です。

    このことは同様に東洋医学についても言え、西洋医学を極端に嫌う人がしばしば東洋医学を手放しで信じてしまうようなケースが見受けられます。ですが東洋医学も西洋医学と同じで良い部分もあれば同時に悪い部分もあります。

    その代表例が漢方です。人工的に生成される科学物質でできた西洋医学の薬品に対して、天然の常薬を使った東洋医学の漢方は、一般に健康的で副作用が少なく自然なイメージがあります。確かに大雑把に見れば漢方薬は合成薬に比べれば副作用が少なめのものが多いと 言えるでしょう。ですが漢方にも副作用が全くないというわけではありません。治療効果もあればそれなりの副作用もあることを私たちは知っておかなければいけません。

    例えば日本で最も売れている漢方として有名な大建中湯(ダイケンチュウトウ)という漢方薬があります。大建中湯は代表的な便秘薬で中高年の多くの方が愛用しています。大建中湯は確かに副作用が少ないとは言われていますが、それでも蕁麻疹や腹痛といった副作用は多数報告されています。この大建中湯は、私たちの腸管に作用して蠕動運動をアップさせる薬ですが、そのように考えるとむしろ便に直接作用する西洋医学の酸化グネシウムの方が副作用のリスクは低いと考えることもできます。

    酸化マグネシウムもまた、代表的な便秘薬として多くの人が飲んでいますが、こちらは便に混ざることで便自体が水を吸収するという薬であるため、私たちの体にはほとんど影響がありません。このように漢方薬が必ずしも西洋医学の薬よりも優れているとか、副作用が少ないというわけではありません。

    また、漢方薬の中にも強烈な副作用があるリスクの高い薬も存在します。例えば90年代には、小柴胡湯(ショウサイコトウ)による死亡例があります。小柴胡湯は、主に慢性肝炎や気管支喘息に効く漢方薬ですが、間質性肺炎という副作用があることで有名です。肺炎は一般に細菌感染でおこり、肺胞に炎症をおこしますが、間質性肺炎は薬剤などによって、肺胞だけでなく末端の気管支までまきこんだ慢性炎症になります。

    小柴胡湯の間質性肺炎の発生は、アレルギー作用によると考えられており、他の漢方薬でも起こっています。同じような報告があるのは大柴胡湯(だいさいことう)、半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)、辛夷清肺湯(しんいせいはいとう)、清肺湯、柴苓湯(さいれいとう)などです。また、慢性肝炎に効くからと証に関係なく誰にでも小柴胡湯を使いすぎていることも原因のひとつであると主張する漢方医もいます。小柴胡湯は、現在も肝炎に対して処方され、市販薬として薬局で購入することもできますが、このような死亡リスクがあることを理解していなければなりません。

    このように見ていくと東洋医学であるからと言って決して100%安全なわけではないということが分かると思います。西洋医学も東洋医学も優劣はなく、どちらも治療効果があれば副作用もあります。万全としたイメージだけに囚われず、しっかりとした知識に基づいて 薬を使用するように心がけていきましょう。

    生姜が含まれている漢方薬

    最近の研究では体内で起こる炎症ががんの原因の1つだと言われています。細菌やウイルスなどで感染症になると人間の体の中で免疫細胞が活発に動いて炎症が起こります。それが発熱であり、その炎症は細菌やウイルスから体を守るための反応です。しかし同時に活性酸素も作ってしまいます。また感染症になっていなくても、肥満や生活習慣が原因で体の中で炎症が起こることも分かっており、これを慢性炎症と言います。このような炎症が活性酸素を作り、その活性酸素が細胞を傷つけてしまうとがんを引き起こす原因になります。

    慢性炎症とがんの関連はまだ研究中ですが、炎症ががんにつながることは国立研究開発法人国立がん研究センターの論文でも紹介されています。このような炎症を抑える成分が入った食べ物が生姜です。

    生姜は古くから健康に良いことが知られていて、古代の人たちは防腐剤や医薬品として使っていました。紀元前500年には、中国でも生姜は薬として使われており、古くから現代まで生姜は漢方薬の原料としてよく使われています。ちなみに漢方では生姜を生のまま乾燥させると「ショウキョウ」、蒸してから乾燥させると「乾姜(かんきょう)」と呼んでいます。このように作用が変わるため効用で使い分けられています。

    そして生姜が含まれている漢方薬をいくつか紹介すると、桂枝湯(けいしとう)、葛根湯(かっこんとう)、桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)、香蘇散(こうそさん)、温胆湯(うんたんとう)などが挙げられます。有名な葛根湯は生姜の体を温める効果を生かした漢方薬で、日本に生姜が伝わったのは3世紀頃中国経由で伝来し、栽培が始まったのは平安時代からと言われています。

    生姜がもたらす効果や予防できる病気

    生姜には色々な作用がありますが、その理由は生姜が含む2つの薬効成分「ジンゲロール」と「ショウガオール」を含むからです。ジンゲロールは生の生姜に含まれていて、免疫力アップや殺菌作用があります。因みにお寿司に生姜の酢漬けのガリがつけられているのは食中毒を予防するためでした。また発汗促進作用もあるため、手や足が温まって余分な熱を体から放出して体温を下げる効果があります。さらに血流促進作用によってむくみ解消の効果もあります。これら以外にも吐き気を緩和したり、消化を促進したりする効果があります。

    そしてジンゲロールは、加熱したり、乾燥させるとショウガオールに変化します。ショウガオールはコレステロール低下、血行促進、代謝アップによる脂肪燃焼効果、免疫力向上、抗酸化作用、胃液の分泌促進などの効果があります。ジンゲロールが末端を温めるのに対して、ショウガオールは熱を放出させずに保つため、冬の冷え症の改善に良いでしょう。

    特にジンゲロールには抗炎症作用があり、血圧が下がり血中脂質の値を減らす効果があります。研究によるとこの効果で心臓病のリスクを下げることが分かってきています。また体内の炎症作用で活性酸素が発生し、細胞を傷つけてがんになる可能性が示唆されていますが、生姜はその炎症作用を抑える効果があります。さらに生姜に含まれる成分は細胞を保護する作用もあり、特定のタイプのがんのリスクを減らし、がん細胞の増殖を抑制する効果に繋がります。最近の研究では、リンパ腫やヘパトーマ、大腸がん、乳がん、皮膚がん、肝臓がん、膀胱がんに効果があることが期待されています。

    ただし、生姜には抗凝固作用があるため、血液が薄くなるリスクがあります。また胃腸が弱い人が食べすぎると胃腸の調子が悪くなることもあり、腹痛や下痢の他にも胸焼けや動悸、アレルギーが起こることもあるから注意しないといけません。

    1日の摂取量の目安は5 から10g、スライスで言えば5枚から7枚ぐらいで、健康に良いからと言って食べすぎはしないようにしましょう。結局は食事全体で栄養バランスを考えて生姜を加えて食べることが大切です。

    料理する時は煮汁を捨てないことが注意点として挙げられ、生姜はカリウムも豊富ですが、水に溶け出しやすいため煮汁を捨てるのはもったいないです。また生姜は、加熱した方が健康効果が高くなり、ジンゲロールより加熱後に変わるショウガオールの方が栄養効果が高くなります。そのため細かく刻んで加熱して料理に加えればショウガオールへの変化が期待できるため、忙しい人は加熱加工された生姜を粉末上にした商品を使いましょう。

    どくだみ茶で風邪予防

    どくだみ茶を飲むことは髪の若さを守るだけでなく、肌、血管、脳、そして体のあらゆる場所の老けを遠ざける頼れる一杯になるかもしれません。そしてアンチエイジングだけでなく、古くから毒を抑える草として知られるどくだみは、その名の通り抗菌、抗ウイルス作用にも優れています。江戸時代には生のどくだみの葉っぱを傷口に貼り、化膿を防いだとも言われるほど、その殺菌力は民間療法で重宝されてきました。

    現代の研究でも、どくだみ抽出物が様々な細菌やウイルスの増殖を抑えることが確認されています。例えば黄色ブドウ球菌や病原性大腸菌に対してどくだみは、広い抗菌作用を示すことが報告されています。抗生物質が効きにくい耐性菌に対しても抑制効果を示すことから、どくだみに含まれている成分は天然の抗生物質のような働きを持つ可能性があります。

    また、抗ウイルス作用に関してもどくだみ抽出物がウイルスの感染力や増殖を顕著に抑制してくれるということが示されています。インフルエンザウイルスに対しても、どくだみ由来の成分が感染による肺のダメージを軽減したという報告があります。こうした抗菌、抗ウイルス効果は特に重要です。加齢に伴い、感染症への抵抗力が弱まる中、日常的にどくだみ茶を飲むことで喉や気道の衛生を保ち、風邪や肺炎などの予防に一早く買ってくれる可能性があります。

    実際に、どくだみ茶が喉の薬として民間で愛用されてきた背景には、こうした科学的に裏付けられた効能があったのかもしれません。

    コラムの監修】

    恵比寿院長

    HARRNY 院長/鍼灸師 菊地明子

    ・経歴
    大学卒業後、美容の世界に入り、セラピストへ。豊富な美容知識や実務経験を活かし、その後、10年間は大手企業内講師として美容部員やエステシャンの育成、サロン店舗運営のサポートを行う。現在は、セラピスト、エステティシャン、美容カウンセラー、鍼灸師の経歴を活かし、お肌とこころと身体のトータルビューティースタイルを提案。表面だけでなく根本からのケアとして、老けない生活についてのコーチングを行う。

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