
腎臓が悪くなってしまえば連鎖的に様々なデメリットが生じてしまいます。例えば、血圧が下がりにくくなる、貧血になる、病気の診断をしにくくなる、高血糖にも低血糖にもなりやすくなるなど、腎臓の機能が低下する問題から様々な健康問題が生まれてきてしまいます。
そしてクレアニン値が高く、腎機能が低下し、慢性腎臓病が悪化している人は、健康な人と比べ死亡率が4倍にもなることが分かっています。腎臓病は症状が出てからでは手遅れになりやすい病気です。日本における慢性腎臓病の有病率は約13%、約1300万人です。つまり国民の8人に1人が該当する計算です。
しかし多くの人は自覚がなく、知らない間に病気が進行しています。腎臓は沈黙の臓器と呼ばれるほど症状が現れにくい特徴があります。実際に症状を自覚しているのは患者全体の10人に1人程度と言われており、検診を受けなければに気づくことは困難です。そのため気づいた時にはすでに病状が進行していて、治療が難しくなっているケースが多いです。
腎臓が悪くなってしまう主な要因としては、糖尿病、高血圧、脂質異常症、肥満といった生活習慣病です。そして腎機能が低下すれば心筋梗塞や脳卒中、癌などの発症リスクが高まり、その進行を早めてしまいます。特に腎臓と心臓の関係は深く、心腎連関症候群という概念があり、2004年の研究では推算糸球体濾過量(eGFR)が低いほど心不全や脂肪効率が上昇することが明らかになっています。
クレアニン値が高く、腎機能が低下している人は健康な人と比べ、死亡率が4倍にもなることが分かっています。また慢性腎臓病の患者は、腎不全に至る前に、心筋梗塞や脳卒中、癌といった他の病気で亡くなることが多いのも特徴です。これは腎機能の低下が、血管の機能にも悪影響を与え、動脈硬化を進行させてしまうからです。その結果、血液の循環が悪くなり全身の健康状態が悪化してしまいます。
また、腎臓の血管と脳の血管は密接に関連しており、年齢とともに腎臓の動脈硬化が進行すれば、血管の狭窄や血流不全が起こりやすくなります。その結果、腎臓の働きが低下するだけでなく、脳への血流や酸素供給も不足し、認知機能が衰える可能性が高まります。これはデータの上でも示されており、高齢者に多い腎臓病が認知症と深く関わっていることは明らかです。
【最新研究】肝心要の腎臓
最新の研究によって腎臓は単なる老廃物の排出器官ではなく、私たちの寿命を左右する重要な役割を果たしていることが明らかになってきました。例えば最先端の医療現場では、高血圧の治療に腎臓の外科手術をする治療が始まっています。なぜ腎臓の手術で血圧が下がるのか、それは体内のネットワークの要が腎臓だからです。
実は、腎臓は血圧を監視し、コントロールしていることが分かっています。そのために腎臓が全身に送っているメッセージ物質がレニンです。このレニンの放出をきっかけとして全身の血管に変化が起こり、血圧が上がります。腎臓はレニンの量を常に変化させ、血圧を絶妙にコントロールしています。つまり血圧のコントロールにおいても腎臓が中心的な役割を果たしています。一方で高血圧患者の多くは腎臓がレニンを出しすぎています。外科手術が腎臓の自律神経に作用することで、こうした血圧調節の不具合を改善します。
これまでの人体のイメージは、脳が司令を出して他の臓器はそれに従うと考えられてきました。しかし研究によって臓器同士が直接会話しながら働いていることが明らかになっています。その情報を運ぶ回線こそが全身に張り巡らされた血管です。その中でも特に血管が密集しているのが腎臓です。腎臓はこのネットワークの要として他の臓器に対するメッセージとなる物質を生み出し、全身を巧みにコントロールしていることが分かりました。
一方で、先進国の入院患者全体の中で5人に1人が急性腎障害になっていたというデータがあります。なぜ腎臓以外の病気で入院した患者が腎障害を起こすのか。それは腎臓が体内のネットワークの要だからです。腎臓以外の病気であってもその影響が波及します。例えば心不全になると体内を流れる血液が減少し、大量の血液が流入する腎臓はダメージを受けます。同様に腎臓は他の臓器とも深く関わっているため、どこが悪くなっても腎臓に悪影響が出ることが分かってきました。
こうした関係は「心腎連関」「肝腎連関」「肺腎連関」「脳腎連関」「腸腎連関」「骨腎連関」などと呼ばれ、医学界で重要なキーワードになっています。またネットワークの要である腎臓がダウンすると今度は全身の臓器に悪影響を与えます。そうして陥るのが多臓器不全で、わずか数日で様態が悪化し、命を落とすことにもつながります。これまで単に多臓器不全と言われて亡くなった多くのケースで、実は腎臓が引き金となっていた可能性があると考えられています。
腎臓に良い食事の基本
腎臓病の食事療法は実践するのが非常に難しいと言われています。なぜ難しいのかと言うと腎臓病の状態に応じて制限すべきポイントが多岐に渡るからです。例えば高血圧の人は、塩分を控え、糖尿病の人は炭水化物の管理を行うなど、一般的な病気の食事管理では、単一の制限に注目します。しかし腎臓病の場合は、塩分制限に加え、リンやカリウムの調整、タンパク質の摂取量、水分管理、鉄分補給など気をつけなければいけない項目が増えます。そのため全ての条件を完璧に満たすことは現実的にはとても難しいです。
重要なのは腎臓病にならないよう予防することであり、そして発症した場合には悪化させないために何ができるかを考えることです。多くの腎臓病の患者さんは糖尿病も併発しており、血糖値の管理が必須です。また血圧が高くなれば腎臓への負担が増すため、塩分の摂取量にも注意が必要です。さらに動脈効果を防ぐためコレステロールの管理も重要となり、病気の進行に伴い食事に関する制限が増えていきます。全ての制限を完全に守るのが難しい場合は、1番優先すべき制限を決め、それを確実に実行することが現実的な対処法です。
著者 の場合患者さんにはご自身の体に適した カロリーを取ることを優先して意識して くださいと伝えていますなぜならば エネルギーが不足すると体は筋肉を分解し てエネルギーを補としますそしてこの プロセスが進め腎臓にさらに負担がかかる だけでなくエネルギー代謝の際に生じる 老廃物が腎臓に悪影響を与える可能性が あるからですそのため必要なエネルギーを 確保するということが重要となるのです 適切なカロリー摂取量は年齢性別体格生活 習慣によって異なりますが一般的には体重 1kgあたり25から35KCが目安とされています患者さんにはそれぞれの体の 状態に応じた適切なカカロリー摂取を 心がけるように著者は指導しています
一度、腎臓病になってしまうと腎臓病の食事療法はとても複雑で長期的な取り組みが求められます。しかし適切な食事管理を続ければ病気の進行を送らせ、生活の質を維持していくことも可能です。腎臓を悪くしてしまった人は、食事制限に対する理解を深め、自分の体にあった食生活を見つけていくことがより健康的な日々を送るための鍵となります。
アミノ酸スコアの高いタンパク質
腎臓を守るために欠かせない栄養素はタンパク質です。長生きをしている人は、タンパク質をしっかり摂っていることが分かっていますが、多くの人にとってタンパク質不足が非常に深刻な問題になっています。
そしてタンパク質を摂取する上でお勧めできる食材は魚です。魚は心血管の健康に良いとされ、EPAやDHAが豊富に含まれています。そのため魚料理は毎日摂取しても問題なく、食材でできるだけ意識して摂り入れると良いでしょう。またタンパク質は、20種類のアミノ酸で構成されおり、体内で合成できない9種類の必須アミノ酸と呼ばれるものは食事から摂取する必要があります。例えば必須アミノ酸の1つであるトリプトファンは、幸福ホルモンと呼ばれるセロの原料になります。不足すると気分が不安定になり、活力が失われることがあります。こうした点からも必須アミノ酸の摂取は、健康維持に欠かせません。
そして必須アミノ酸の含有量を評価する指標としてアミノ酸スコアがあります。このスコアが100に近い食品ほど理想的なタンパク質源と言え、アミノ酸スコアが高い食品には、肉、魚、卵、大豆、乳製品などが挙げられます。特に肉や魚は、ビタミンやミネラルも豊富に含まれているため、積極的に摂ることが推奨されます。
興味深いことに、100歳以上の長寿者の多くがタンパク質をしっかりと摂取しているという研究結果があります。適切なタンパク質の摂取は、健康寿命を伸ばす上で重要です。例えば大豆製品や豆腐は、古くから健康食品として親しまれ、その理由の1 つがアミノ酸スコアの高さにあります。
塩分は1日6g以下
外食や加工食品に含まれている塩分の多さは、現代の食生活において注意すべきポイントの1つです。特に高血圧は腎臓に最も影響を及ぼすとされており、塩分の摂取量を減らすことが腎臓を守る基本的な考えとなります。日本食はとても健康だというイメージがありますが、日本人の塩分の摂取量は依然として世界的に見ても高い傾向にあります。
厚生労働省が実施した令和元年の国民健康栄養調査によると、日本人の平均摂取量は1日約10gでした。平成7年の1日約14gからは減少傾向にあるものの、腎臓を守るためにはさらなる減塩が必要とされています。
塩分を過剰に摂取すれば体内の塩分濃度が上がり、腎臓がその処理に追われることになります。その結果、血圧が上昇し、腎臓への負担が増すという悪循環が生まれます。特に高血圧の患者は、塩分を6g以下に抑えることが推奨されていて、一部の医師は5g以下を目標とするように指導しています。
しかし、1日6g以下に抑えるのは容易なことではありません。例えば食パン1枚には約1g、お味噌汁1杯にも約 1gの塩分が含まれています。カレーライス1杯で約10gの塩分を摂取することになります。こうした数字を見ても1食あたり2g以下に抑えるのがどれほど難しいかが分かるでしょう。
また加工食品や惣菜には塩分が多く含まれています。これは食品の保存性を高め、風味を増すために使われているためです。例えばコンビニのおにぎりには1から1.2g、スーパーの惣菜には1から2gの塩分が含まれています。これらを知らずに食べていれば無意識のうちに1日の塩分摂取が基準を大きく超えてしまうことになります。
減塩を実践するためには、食品成分表示を確認する習慣をつつけることが重要です。特に麺類は塩分を多く含むためスープは飲まない、汁物を減らすといった工夫が必要になるでしょう。また外食では漬け物を控えたり、ソースや醤油の使用量を減らすことで塩分を抑えることができます。特に調味料にはたくさんの塩分が含まれているため、食べ物にソースをかけたり、醤油をかけたり、塩をかけるという習慣は真っ先に改めるべきです。
そして塩分の代わりに味を引き立てる方法として、七味や山椒、生姜、わさび、辛子などの香辛料や酢やレモンの酸味を利用するのも良いでしょう。こういったものは腎臓に負担をかけにくく、料理に風味を加えるのに適しています。
加工食品と添加物に多い無機リン
無機リンは老化促進物質として、近年問題視されており、日々の食生活の中で 意識して減らしていくべき成分の1つです。リンには、肉や魚、卵、乳製品、豆類などに自然に含まれている有機リンと加工食品に添加される無機リンの2種類があります。無機リンは、ハムやベーコン、練り物、プロセスチーズ、インスタント麺、缶詰、ファストフードなどに多く含まれています。
有機リンと比べると無機リンは、腸から吸収されやすく、その結果血液中のリン濃度が上昇しやすくなる特徴があります。特に腎機能が低下している人は、無機リンを含む食品を控えることで、腎機能の負担を減らしていくことが必要 です。
また、無機リンはカルシウムと結合しやすく、これが血管の石灰化を促す原因になってしまいます。血管が固くなることで動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳卒中といった重大な疾患のリスクが高まってしまいます。つまり無機リンの過剰摂取は、単なる腎臓への影響に留まらず、全身の健康に悪影響を及ぼす可能性があります。
食事の中で無機リンを減らしていくためには、やはり食品成分表示を確認する習慣を見つけることが大切です。商品の原材料表示をチェックし、リン酸塩やpH調整剤などの記載がないかを確認することをお勧めします。ただしほとんどの加工食品には無機リンが含まれているため、完全に100% 避けるのは難しいかもしれません。100%排除するのは難しいにしても、徐々に摂取量を減らして いく努力が求められます。
腎臓に良い黒い食べ物
黒酢
腎臓が健康になる食べ物には共通する特徴があります。それは腎臓に良い食べ物は黒いという特徴です。黒い食べ物が腎臓に良いというのは東洋医学では古くから知られており、五臓五色という考え方では肝臓や腎臓といった各内臓には、それぞれに対応した色の食べ物が適しているとされています。
そして腎臓に対応した食べ物が黒い食べ物です。そして数ある黒い食べ物の代表が黒酢です。黒酢には、D-アミノ酸によって腎臓を保護してくれる効果、血液をサラサラにして腎臓への負担を減らす効果、塩分を控えめにして腎臓を元気にする効果があります。中でもD-アミノ酸の効果は最新の研究によって明らかになってきた効能です。
アミノ酸は、タンパク質の構成要素となる栄養素として有名で、私たちの体のうち水を除く部分のほとんどがタンパク質でできており、そのタンパク質は全20種類のアミノ酸からできています。タンパク質は、筋肉やホルモンの材料となることから体の中でも最も重要な物質で、その元となるアミノ酸も、また最重要の栄養素であると言えます。
このようなアミノ酸には、L-アミノ酸とD-アミノ酸の2つが存在しています。これらは異性体と呼ばれるもので、左右逆対象の構造をしています。そして私たちの体の中でタンパク質の元となるアミノ酸のほとんどはL-アミノ酸です。そのためD-アミノ酸は、体内にはほとんど存在せず、従来その機能は不明でしたが、D-アミノ酸には 美肌効果や脳の機能向上、そして腎臓の保護作用といった様々な効果があることが分かってきました。
D-アミノ酸の一種であるD-セリンと腎臓の関係を調べた研究では、D-セリンには、腎臓の細胞の増殖を促進することで腎臓を大きくする作用があることが分かりました。そもそも腎臓は、血液の中のゴミを濾過して尿にするというフィルターの役割をしており、このフィルターは加齢とともに徐々に壊れていき、腎臓自体が小さく縮んでしまうことが知られています。
実際、腎臓の機能が大きく損なわれた慢性腎臓病では、腎臓のサイズが小さくなってしまうことが分かっており、D-セリンは逆に腎臓を大きくすることで低下したフィルター機能をアップしてくれることになります。このようなD-アミノ酸の摂取によって慢性腎臓病が改善できるかもしれないと医学的にも注目が集まっています。
そして、このD-アミノ酸が医薬品ではなく黒酢という天然の食材から摂れるのです。またD-アミノさんは腸内細菌が作り出すことで有名ですが、実は発酵食品の中にも多く含まれています。その代表が黒酢で、複数のお酢のD-アミノ酸の量を調べた研究では、黒酢の中でも特に体に良い玄米黒酢には、一般の米酢の55倍ものD-アミノ酸が含まれていることが分かっています。
さらに、黒酢には血液をサラサラにすることでD-アミノ酸によって増えた腎臓の細胞を守ってくれる働きもあります。年を取って腎臓が疲弊してしまう大きな原因の1つが、血液がドロドロになってしまうことです。腎臓は血液を濾過するフィルターの役割をしていますが、血液がドロドロであればフィルターに負担がかかります。D-アミノ酸によって腎臓が大きくなっても血液がドロドロのままであれば、増殖した腎細胞が再び破壊されてしまいます。
しかし、黒酢を飲んで血液をサラサラにしてあげれば、増殖した腎細胞でサラサラ血液がスムーズに濾過されて腎臓が元気になっていきます。さらに黒酢を料理に使うことで食事の塩分や糖分を減らせるメリットもあります。
黒米
黒米は雑穀米の一種で、別名古代米と呼ばれることもあります。黒米が古代米と呼ばれる所以は、弥生時代から日本で食べられていたためと言われています。黒米は普通の米に比べて栽培量が難しく、収穫量が少ないため、徐々に私たちが現在食べている白米が主流になってしまいました。
しかし、雑穀米は白米にはない健康効果があり、黒米の黒さの由来はポリフェノールです。実は黒米の黒さは、ブルーベリーの黒さと同じアントシアニンというポリフェノールによって生み出されています。このアントシアニンは高い抗酸化力を持っていることで有名で、それ故に黒米を食べることで体中の錆びついた細胞をピカピカにしてくれる効果があります。
アントシアニンを含む様々なポリフェノールと慢性腎臓病との関係を調べた実験では、これらのポリフェノールが腸内環境を良くすることで腎臓まで綺麗になるという結果が報告されています。この実験ではアントシアニンなどのポリフェノールを摂取することで腸内細菌のバランスが整い、腸のバリア機能が正常化することが分かっており、腸内バリア機能がアップすることで慢性腎臓病 が改善する可能性が示されています。
このようなアントシアニンの効果だけでなく、黒米には様々な腎臓への健康効果があることが分かっています。黒米は玄米と同じ雑穀米の1つであるため、白米と違い、タンパク質やビタミン、ミネラルといった栄養の宝庫です。さらに黒米は白米と違って食物繊維が豊富であり、糖質の吸収を緩やかにしてくれる効果があります。
白米は食べる度に寿命が縮むとも呼ばれており、私たち日本人が腎不全になって透析になってしまう原因の第1位が糖尿病であり、そんな糖尿病を白米は引き起こしてしまうからです。一方で糖質制限をすることで寿命が縮んでしまうという研究も数多く存在し、極端に糖質を全く摂らないのもよくありません。
そこでおすすめなのが黒米や玄米といった雑穀米です。黒米であれば食物繊維によって糖質の吸収が緩やかになり、必要な分の糖質を摂取しつつも糖尿病のリスクにならないというメリットがあります。そして黒米は腎臓の他にも高い美肌効果や髪を若々しくする効果、そして目の健康をアップする効果など様々な美容・健康効果があります。
特に黒米には、ヒアルロン酸を分解してしまうヒアルロニダーゼやコラーゲンを分解してしまうコラゲナーゼといった悪玉酵素の活性を抑えてくれる効果もあります。ヒアルロン酸やコラーゲンは、肌の潤いやハリの維持のためには不可欠な要素であり、年を取るとこれらを分解する悪玉酵素が増えてしまいます。しかし黒米を食べることで、このような酵素をストップし、美肌効果を期待することができます。
また黒米は、その美しい黒色から髪まで黒に染めてくれる効果があるとされています。これは黒米に白髪予防に有効な各種ビタミンや亜鉛が多く含まれているからです。そして黒米は味は違えど、ブルーベリーにそっくりな食べ物のため、ブルーベリーが目に良いのと同じで黒米も目に良い食べ物です。
海苔
黒い食べ物と聞いて多くの方が思い浮かべるのが海苔です。海藻由来の真っ黒な海苔もまた腎臓に良い影響を与えてくれることが知られています。海苔にはカリウムによる利尿効果、水溶性食物繊維による腸内環境改善効果、良質なビタミンによる貧血予防効果といった腎臓に関する様々な健康効果があります。
カリウムによって余分なナトリウムが排泄され、腎臓への負担が減らすことができ、また水溶性食物によって腸内環境が改善してくれれば、それだけ腎臓の炎症も減ります。さらに海苔にはビタミンB12や葉酸、鉄といった栄要素によって貧血を予防してくれる効果まであります。
実は、腎臓は血を作るために重要な臓器で、血液は骨の中心部分にある骨髄で作られていると言われていますが、血を作るためには腎臓から分泌されるエリスロポエチン(EPO)というホルモンが必要です。そのため慢性腎臓病になると尿が出なくなって血液が汚れるのみにならず、腎性貧血という貧血状態になることが知られています。また逆に鉄やビタミン不足によって貧血になると、血を作らないといけないと腎臓が頑張りすぎて腎臓に負担がかかってしまいます。
このような事態を予防するためには、鉄や葉酸、ビタミンB12といった造血に必要な栄養素を日頃から摂取する必要があります。特に重要なのが葉酸やビタミンB12です。貧血予防のために鉄が大事であるのは有名ですが、よく見落とされがちなのが葉酸やビタミンB12といった栄養素です。
これらのビタミンは鉄のように血液の材料になるわけではありませんが、血を作る時に不可欠なビタミンです。葉酸やビタミンB12が不足すると赤血球が変な形に作られてしまって結局は脾臓で破壊されて貧血になってしまいます。そのため鉄や葉酸、ビタミンB12といった造血に必要な栄養素を含んだ海苔は、貧血予防には最適の食べ物と言えます。
また、海苔をおやつ代わりにすれば、健康的に痩せられるのも嬉しいポイントです。肥満は喫煙や飲酒と並んで、ありとあらゆる病気のリスクになりますが、腎臓病のリスクになることも知られています。63万人以上を10年間調査したオーストラリアの研究では、健康的な食生活によって肥満を予防することで慢性腎臓病のリスクを30%も減らせることが分かっています。また肥満は糖尿病のリスクであり、海苔をおやつ代わりにして肥満を予防してあげることで間接的に糖尿病が原因で起こる腎疾患を予防することにつながると言えます。
黒にんにく
にんにくは、ありとあらゆる病気を予防してくれるスーパーフードとして有名 です。中でも黒にんにくは腎臓に対する素晴らしい健康効果があります。普通の白いにんにくと黒にんにくとの大きな違いは、熟成しているかどうかです。普通の白いにんにくを、高温多湿の環境で数ヶ月熟成させたものが黒にんにくで、白いにんにくには含まれない様々な栄養素が醸成されています。
黒にんにくの腎臓に対する効果としては、S-アリルシステインによる血液循環 アップ効果、アルギニンによる尿素サイクルの回転効果、プロリンによる腎細胞の寿命アップ効果です。ここに上げた3つの栄養素は、いずれも普通の白いにんにくにはほとんどない栄養素です。
1つ目のS-アリルシステインは、白ニンニクが持つアリシンという成分が熟成によって変化してできるものです。アリシンといえばニンニクの匂いの元となる成分として有名ですが、黒にんにくではアリシンが S-アリルシステインに変化することで大幅に匂いが減少するので安心して生のまま召し上がることができます。
さらにS-アレルシスティには、血管の炎症を抑えることで血液の循環をスムーズにしてくれる作用があります。腎臓の濾過フィルターが正常に機能するためには、血液の良行な循環が必要になるため、黒にんにくからS-アリルシステインを摂ることで腎臓が元気になっていくことでしょう。
また、黒にんにくに豊富に含まれているアルギニンの効果もあります。アルギニンは私たちの体内で合成できない必須アミノ酸の1つで、必ず食べ物から摂取する必要があります。アルギニンは血管を拡張させる一酸化窒素の生成をアプすることで、S-アリルシステインと共に血液循環をスムーズにしてくれる効果が期待できます。
さらにアルギニンには、尿素サイクルという解毒作用の回転を高めてくれる効果もあります。尿素サイクルとは、肝臓でアンモニアを解毒するための代謝機能のことです。この尿素サイクルが歯車のように回転することで有毒なアンモニアが解毒されて尿素に変わりますが、歯車の回転に不可欠な油の働きをしてくれるのがアルギニンです。
そのためアルギニンが減ると尿素サイクルの回転が遅れることでどんどん体にアンモニアが溜まってしまい、本来であれば無害な尿素を排泄していれば良かった腎臓がアンモニアという毒素を処理しなければならなくなり、腎臓に大きな負担がかかります。
そして、プロリンによる腎細胞の寿命アップ効果もあります。酸化ストレスによって障害を負った腎臓にプロリンを与えた研究では、細胞のアポトーシスが緩和されたことが分かりました。酸化ストレスは紫外線や肥満、食生活の乱れなどによって体内で発生してしまう有害物質で、そのような酸化ストレスによって腎臓が傷つくと細胞が自分自身を破壊してしまうことが知られています。このような細胞の自己破壊がアポトーシスです。
この実験では、プロリンを摂取することで酸化ストレスによる腎臓のアポトーシスが抑制され、結果的に腎臓の寿命が長くなることが分かっています。もちろん腎臓の健康のためには、そもそもの原因である酸化ストレスを減らすために生活習慣を整えることが重要ですが、プロリンを摂るだけで腎臓の寿命が伸びるのは嬉しい効果です。
このプロリンはコラーゲンの構成成分の1つで、豚の角煮など限られた食べ物からしか摂取することができませんが、黒にんにくには豊富なプロリンが含まれており、不足しがちなプロリンを補給するのにはうってつけの食べ物です。
ちなみにプロリンがコラーゲンの構成成分になるだけでなく、軟骨の新陳代謝を活発にすることで関節痛を和らげてくれる効果があると言われています。そしてコラーゲンの構成成分になることは、もちろん肌のコラーゲンにも有効です。
人の皮膚の細胞にプロリンを投与した実験では、コラーゲンを作る皮膚の繊維芽細胞が1.5倍に増加するとともに、皮膚の瑞々しさを保つヒアルロン酸が3.8倍に増えることが分かっています。このことからプロリンを豊富に含んでいる黒にんにくには腎臓の健康だけでなく、関節痛や肌にも素晴らしい効果があります。
とにかく運動する
医療の世界では、従来の常識が突如として覆ることが少なくありません。かつて腎機能が低下した患者は安静第一が鉄則と言われていました。なぜなら、運動をすると一時的に尿中のタンパク質が増加し、それが人工透析へと進むリスクを高めると考えられていたからです。このため腎臓病患者には運動制限が課せられ、体を動かすことはむしろ避けるべきであるとされていました。
しかし、近年の研究で明らかになったのは、運動しないことのデメリットの方が遥かに大きいという事実です。心筋梗塞の患者にも同じような考え方が長く 定着していましたが、今では適度な運動がむしろ腎機能を改善し、生活の質を高めることが証明されています。
ただし大切なのは適度な運動量です。無理をして過剰に体を動かせば、かって体調を悪化させるリスクがあるので、適切な範囲内で運動を取り入れることが求められています。例えば軽い有酸素運動やストレッチ、筋力トレーニングは腎機能の改善に役立つことが分かっています。クレアニン値の低下を促し、腎臓の負担を軽減する効果が期待されています。
健康作りのための身体活動基準では、自給力や筋力を維持向上させるため週2日以上最低30分の運動を行うということが推奨されています。運動不足は生活 習慣病の発症リスクを高めるだけでなく、心身の機能を低下させます。
また、運動のもう1つの大きなメリットとしては、一酸化窒素の分泌促進があります。一酸化窒素は血管を拡張し、血圧を下げる働きを持ちます。これは慢性腎臓病の進行を抑えるために重要です。また一酸化窒素は、動脈効果の改善にも役立ち、心筋梗塞や脳卒中のリスクを減らしてくれます。特に下半身の筋肉を動かすことが一酸化窒素の分泌を促すため、ウォーキングやスクワットなどの軽い運動が効果的です。
そして運動には、大きく分けて有酸素運動と無酸素運動の2種類があります。無酸素運動は短距離走や重量上げのように瞬間的に大きな力を発揮するもので、交感神経を刺激し血圧を上昇させるため、腎臓への負担が大きいとされています。そのため腎機能を守りながら運動したいということであれば、有酸素運動を選ぶのが懸命です。
有酸素運動とは、酸素を使いながら継続的に体脂肪をエネルギーとして燃焼する運動のことで、ウォーキングや水泳、サイクリングなどが代表的で、息が上がらず長時間継続できる運動が理想とされています。特に手軽に始められるウォーキングは、多くの研究で健康への素晴らしい影響が報告されています。
研究ではウォーキング習慣がある人は、寿命が伸びるだけでなく人工透析や腎移植のリスクも低下することが示されています。また頻繁にウォーキングをするほどその効果は大きいとされています。またウォーキングに加え、水泳や水中ウォーキングも腎機能を守るためにはおすすめの運動です。水の浮力によって膝や腰への負担が軽減されるため、関節の痛みがある人でも安心して取り組むことができます。
また、運動後には体が軽く感じられ、血流が促進されることで疲れにくくなるという効果も期待できます。さらに運動の頻度も重要で、例えば週に1回1時間運動するよりも、30分の運動を週に3回に分けて行う方が健康に良いとされています。自分の体調や生活スタイルに合わせ、無理なく有酸素運動を取り入れていくことが大切です。
東洋医学で診る「腎」機能
東洋医学では、冬は腎を養わないと老化すると言われています。東洋医学の腎は、臓器の腎臓のことではなく、私たちの成長、発育、老化、生殖機能、髪の毛、歯、骨、腰などに関係していると考えます。
この腎が弱っている人の症状には、疲れやすい、手足が常に冷たい、耳なり、目まい、不眠、ホットフラッシュ、寝汗、顔色がくすむ、不安になりやすい、疲れやすい、抜け毛や白髪が増える、生理周期が不安定などの症状があります。特に50代後半や60代に入ると症状が分かりやすくなってきますが、まだ20代 30代40代なのに、このような症状が出てきている人は、日々の生活習慣や食事に関係している可能性がとても高いです。しかも冬になると症状が悪化しやすい場合が多いです。
また、腎気が衰えていくことで老化が始まると考えます。この老化を遅らせるのは腎を養う事が鍵となります。そして東洋医学では「和於術數、諸法養腎」という言葉があり、季節や気候に従ってさまざまな方法で腎を養う意味です。腎を養う方法は多く、ひとつ目が薬食補腎です。食材であり、薬でもあるものを食べて補っていく方法です。腎虚には、腎陰虚、腎陽虚、腎気虚など様々なタイプがあります。
腎陰虚
陽は体を温める力ですが、陰は体を冷やす力です。腎陰虚は、足腰に力が入らない以外に、よくイライラする、何に対しても鬱陶しい、全てが気に入らない、怒りやすいことが挙げられます。特に手足がいつも熱く、火照り気味の人が多いです。そして陰が足りないと、めまい、耳鳴り、足腰に意味不明の痛みを感じる、寝汗をかく、手足が熱くてイライラしやすい、不眠、物忘れが激しい、口が渇きやすい、尿が黄色っぽく量が少ない、便が乾燥していて硬い、生理の量が少ない、生理の期間が短いなどの症状があります。
これらの原因は長期的に夜更かしをしている、辛いものをよく食べる、ストレスが多い、もうよく鬱々しているなどがあります。特に夜は陰の時間帯なので夜更かしをしてしまうと陰を異常に消耗してしまいます。できれば23時までには寝た方が良いでしょう。また、このタイプはストレスに影響されやすので、リラックスする時間が大事になります。そして軽めの運動がおすすめで、散歩、ヨガ、ストレッチなども行いましょう。
また、このタイプのおすすめの食材は、白キクラゲ、ゆりね、山芋、はちみつ、豆乳、豆腐、白菜、梨などがおすすめです。漢方では五心煩熱と言い、腎陰虚の人は、是非クコの実を食べてみてください。クコの実は山芋と同じ食薬両用で、肝と腎に帰経して陰を補ってくれます。おすすめはクコの実と黒ゴマのおかゆです。陰と血の両方とも補ってくれます。そしておすすめツボは、三陰交、腎兪、関元がおすすめです。
三陰交(さんいんこう):内くるぶしの一番高いところから指幅4本分上がったところ

腎兪(じんゆ):背骨中心から指2本分外側

関元(かんげん):おへそから下に指幅4本分のところ

これらのツボを3秒法則で、押して3秒キープ、3秒離して押す、これを繰り返して3分から5分ほど押してみてください。またはお灸を乗せて15分から25分ほど温めてもいいと思います。
腎陽虚
腎陽は命の炎とも呼ばれており、生まれつきに持っているエネルギーが溜まっている中心みたいなものです。陽なので熱を持っており、腎陽が足りないタイプの人は、手足が冷たい、低体温、腰膝足が冷えている、下半身がむくみやすい、疲れやすい、顔色がくすむ、朝方に下痢する、白髪が増える、抜け毛が多い、子宮が冷えているなどの症状があります。
特に腎陽虚は、とても寒がりで手足が冷えて、そして汗をかきやすいことが挙げられます。しかし腎陰虚の人とは違い、寝ている間に汗かくのではなく、起きてる間、特に動いていないのに汗が勝手に出てくることです。また便秘気味で、軟便の人が多いです。
これらの原因には、生まれつき虚弱体質、長期的な過労、加齢による衰え、大きな病気や手術の後、長期的に湿気が高くて寒い場所です生活しているなとかあります。また改善する食事は、山芋、羊肉、ニラ、黒豆、黒胡麻、かぼちゃ、ピーナッツ、桑の実、雑穀、栗なのです。特に羊肉、海老がとても良いです。これらは腎を温めてくれて、陽を補う効果があります。そしてシナモン、桑の実、夏目、クコの実などのお茶がおすすめで、特に杜仲茶がお勧めです。おすすめのツボには、湧泉、腎兪、命門があります。
湧泉(ゆうせん):足の中央部分

命門(めいもん):ちょうどおへその反対側に位置

それぞれ3秒の法則で3分から5分ほど押してみて ください。
腎気虚
腎気虚は、足腰に力が入らなくなり、年に似合わず老化が速い人です。例えば40代なのに物忘れが激しい、老眼、耳が遠いなどです。こういう症状を持っている人は、腎気虚と考えられます。
このタイプの人は、是非山芋を食べてください。山芋は山薬という名前があり、食薬両用です。食材でありながら漢方薬としてもよく使われています。例えば六味地黄丸、腎気丸などです、山芋は平属性で毒性がなく、誰でも食べることができ、脾胃と腎を補う効果があります。
山芋をとろろにして食べる人が多いと思いますが、ととろは便通をよくしてくれます。しかし漢方的には加熱して食べたほうが良いです。例えば山芋とクコの実のおかゆ、山芋のバター醤油焼きなどです。
【本コラムの監修】

・経歴
大学卒業後、美容の世界に入り、セラピストへ。豊富な美容知識や実務経験を活かし、その後、10年間は大手企業内講師として美容部員やエステシャンの育成、サロン店舗運営のサポートを行う。現在は、セラピスト、エステティシャン、美容カウンセラー、鍼灸師の経歴を活かし、お肌とこころと身体のトータルビューティースタイルを提案。表面だけでなく根本からのケアとして、老けない生活についてのコーチングを行う。