鍼の好転反応(ニキビと余分な熱)

    ニキビと余分な熱

    東洋医学では、ニキビや吹き出物のことを「痤瘡(ざそう)」や「粉刺(ふんし)」と言います。ニキビや吹き出物は「身体の余分な熱」が発生しているとあらわれやすくなります。ここでいう「身体の余分な熱」とは、湿熱(しつねつ)のことです。そしてこの湿熱を生み出す原因のひとつが、甘い物、脂肪の多いもの、味の濃いものなどの過食です。

    「身体の余分な熱」は、上半身に集まります。例えば暖房をつけていると、足元は寒いのに天井に近づくほど暖かい空気が充満している状態と同じです。そのためニキビや吹き出物は主に顔にできますが、顔以外では頭皮、胸元、背中などで上半身に多く出てきます。そして、この熱に老廃物という要素が組み合わさるとニキビや吹き出物になります。

    また、ストレスや生活リズムの乱れによって、身体の中のバランスが崩れてしまい、皮膚への影響としてニキビや吹き出物という形で出てくることがあります。例えば夜更かしや睡眠不足だと肌が荒れる経験がある方は多いはずです。

    ニキビの種類

    ニキビは毛穴の詰まりから、皮膚の常在菌である「アクネ菌」が増殖することで皮膚に炎症が出来て進行していきます。専門的には、ニキビを尋常性ざ瘡(じんじょうせいざそう)と言います。このニキビは、白→黒→赤→黄の順番で進行し、進行が進むにつれて治りにくく跡が残りやすくなります。

    白ニキビは、ニキビの最初の段階ですが、毛穴に皮脂などの分泌物が詰まった状態です。ニキビは、薄い皮膜で覆われて閉じていて発疹が白~乳白色に見えます。

    黒ニキビは、白ニキビが進行した状態です。皮脂が盛り上がって穴が開き、メラニン色素や酸化された皮脂などによって黒っぽく変色した状態です。

    赤ニキビは、黒ニキビがさらに進行した状態です。毛穴に詰まった皮脂に雑菌や細菌が繁殖し炎症を起こして膿がたまり、ニキビ患部の周りが赤く腫れ上がった状態です。ここまで来ると、ニキビ痕が残ってしまうこともあります。

    最後は、 赤ニキビがさらに悪化し、炎症が激しくなったのが黄ニキビです。てっぺんに黄色い膿(うみ)が見える状態です。

    ニキビ治療の第一歩は、まずはご自身がどの状態にあるかを知ることです。ニキビの状態により、美容鍼で治るスピードも変わってきます。

    ニキビが悪化する理由

    ニキビの原因は、皮脂の分泌が増え、毛穴が詰まり、その中でアクネ菌が増殖するからです。皮脂の分泌が増える原因は、男性ホルモンの増加が一番の原因です。特に生理前にニキビができるのは、生理前に増えてくるプロゲステロンが男性ホルモンのような役割をして皮脂が増えます。増えた皮脂は分解されて遊離脂肪酸となりますが、毛穴の出口を詰まらせ白ニキビになります。

    この白ニキビが赤ニキビに移行するのは、詰まってしまった毛穴の中では、酸素が嫌いな嫌気性菌というアクネ菌がより増えていき炎症を起こします。このアクネ菌を駆除するために白血球の一種である好中球が集まり活性酸素を放出して炎症が強まり赤ニキビになります。

    そして赤ニキビが黄ニキビまで悪化してしまうのは、毛穴の周囲で止まっていた炎症が毛穴の周囲へ大きく広がり、アクネ菌と戦った好中球などの壊れた組織が膿となって溜まり、それが黄色く見える黄ニキビになります。

    このように早い段階で炎症を抑えるのがニキビケアには大事で、放置してしまうとニキビ跡が残りやすくなります。皮膚深く炎症が進んでしまえば、非常に治りにくいニキビ跡の瘢痕になってしまいます。またニキビの炎症が長引くことでメラノサイトが活性化して、シミのようなニキビ跡が残りやすくなります。

    マイクロコメド(微小面皰

    ニキビができやすい人は、白ニキビになる前のマイクロコメド(微小面皰)に注意しましょう。普通のコメド(面皰)は白ニキビと同じ意味で、皮脂が毛穴に詰まっている状態です。皮膚の表面から見ると皮脂が溜まっているので白く見えて点のようになっています。

    この前の段階がマイクロコメド(微小面皰)でニキビ予備軍になり、毛穴の詰まりが始まっていて、皮脂が徐々に溜まり始めている状態です。このマイクロコメド(微小面皰)が白→赤→黄ニキビと症状が強くなっていきますが、赤や黄ニキビになると炎症が治まっても、色素沈着が残ったり、瘢痕やクレーターのような凹凸が残ってしまう場合があります。そのためマイクロコメドの状態で毛穴の詰まりを治すことが大事になります。

    マイクロコメドをつくらないためのホームケアとして、皮脂分泌を高めるような生活習慣(睡眠不足、ストレス、食習慣など)を改めることが大事です。皮脂のコントロールは難しく、すぐに効果は期待できませんが、確実に生活習慣を整える方が効果が高くなります。またクリームやリキッドより油分が少ないパウダータイプのノンコメドジェニック化粧品を使うことも考えられます。

    ニキビ跡(色素沈着)

    ニキビには様々な種類があり、炎症を起こした赤ニキビ、黄ニキビは炎症が治った後も綺麗に治ってはくれません。赤いニキビ跡が残ったり、クレーターのような深いニキビ跡残ることがあります。シミのような茶色い跡が残ってしまった場合は、炎症後の色素沈着(PIH)です。

    良くニキビが治った後で跡が気になるという方の中に、跡が赤くなっている場合は、これはニキビ跡の色素沈着とは言いません。赤い跡はニキビ跡を治すために血管が集まってきて血管が透けて見えている場合があります。これは色素沈着の一歩手前とも言えます。

    そもそも色素沈着が起きる原因は、赤ニキビや黄ニキビのようにニキビ部位に強い炎症反応が起き、メラニン色素をつくるメラノサイトが活性化することでメラニン色素が多くつくられて茶色いシミのようなニキビ跡になるからです。色素沈着させないようにするためには、なるべく早く治すことが大事です。触ったりいじったりしないこと、化膿したニキビを自分で潰すと早く治るような気がしますが、そこから化膿したり、ばい菌が入ったりして余計に炎症を強めてしまうことがあります。潰すのであれば皮膚科でする、その他市販薬(抗菌薬)で対応するなどで早く治るようにケアしましょう。

    ニキビには低GL食

    ニキビは体内の炎症が原因で、それが肌に表れていることがあります。その場合は、外からアプローチするのではなく、体の中に目を向ける必要があります。特に食習慣が体内の炎症に大きく関わるため、低GL食を選ぶことで大人ニキビが改善されます。

    この低GL食を示すGL値はまだまだGI値(血糖値が上がりやすさを表す)に比べて知名度はありませんが、GL値は食材に含まれているタンパク質の量を考慮したものです。

    例えば、スイカのGI値は72ありますが、実際は糖分よりも水分が多いため、食べる量を考えればそれほど血糖値が上昇することがないため、GL値は6.8しかありません。他にもイチゴもGI値が40ありますが、GL値で3.6しかありません。このような食べ物が多くあり、実際に食べる量を考えたGL値の良い食生活に変えただけで、ニキビが改善されたという研究報告がされています。

    この研究は、中程度のニキビに悩む人、18から25歳を対象にし、12週間の調査を行なったところ、低GL食を食べた半分のグループ(基本治療も含む)は、単にニキビ治療をしたグループに比べて大幅にニキビが改善されたことが報告されています。

    ナイアシンアミドでニキビ予防

    肌を外部からの刺激を守る役割を担うのは、表皮の角層です。角層では角質細胞が層になって重なり、その間にあるのが角質細胞間脂質です。この主な成分は、セラミド、コレステロール、脂肪酸です。これらの成分が不足すると皮膚のバリア機能を損い、外部からの刺激に対して肌荒れを引き起こします。

    一方でナイアシンアミドには、セラミド合成系の酵素の発現や酵素の活性化を促進する働きがあり、さらにセラミド(前駆体)、コレステロール、脂肪酸の合成を促進する働きがあることが分かっています。このメカニズムにより、ナイアシンアミドは肌のバリア機能の改善、角質層の働きをアップする効果があるため、肌荒れやニキビ予防に有効と考えられています。

    アゼライン酸でニキビケア

    ニキビができやすい方、毛穴の開きに気になっている方、皮脂で顔が赤いと思っている方、そんなお悩みを解決してくれるかもしれない成分が、アゼライン酸です。まず皮脂が多い方は、それによって毛穴が開いていたり、表面はテカテカしているのに乾燥がある方に効果的な成分です。

    アゼライン酸は、小麦とかライ麦などの穀物に含まれている天然酵母です。海外ではニキビの治療薬として、かなり前使用されていましたが、残念ながら日本では保険の認可が降りていません。しかしアゼライン酸は、天然の酵母からできているため、例えば妊婦さんが使っても安心な製剤の1つになっています。

    アゼライン酸には5つの作用があると言われており、まず1つ目が抗菌作用です。これはアゼライン酸を塗ることによって、ニキビ菌が減少したり、pHが弱酸性になっているとよりその機能を出しやすいと言われています。

    もう1つは皮脂の抑制です。皮脂は5αリダクターゼが活性化されて、皮脂腺を刺激することで皮脂分泌が活発になります。アゼライン酸は、この5αリダクターゼの活性を抑えることによって、皮脂の分泌を抑えるということができます。

    そして3つ目が、角質が厚くなるのを抑える角化抑制です。角質が厚くなることで毛穴が詰まってしまうってこともあるため、角化を抑制して皮脂の分泌を抑えて、ニキビ菌を殺菌することによってニキビの治療ができます。海外ではニキビの治療に使われているのは、この3つの効果によるものになっています。

    その他も抗炎症作用があります。私たちは、紫外線に当たると炎症性のサイトカインが放出され、それによって炎症が起こりますが、アゼライン酸はこの炎症性のサイトカインを抑えてくれる作用があります。特にUVBが当たった時に出る炎症性のサイトカインを抑えてくれるため、例えばシミの予防、日焼けの後の赤みも抑えてくれます。

    そして5つ目が美白作用です。これは美白の有効成分として日本で認められているわけではないですが、アゼライン酸は、チロシナーゼの活性を抑制することによってメラニン産生を阻害する働きがあります。つまり炎症性のサイトカインを抑えながらチロシナーゼの活性も抑えるので、ある程度美白やニキビ跡、色素沈着などの改善にもつながります。

    美容鍼でニキビ、ニキビ跡ケア

    東洋医学では赤ニキビの原因をストレスや冷えが関係すると考え、手足の冷え、お腹の冷えによって体の熱が顔へ上昇して、その熱によってニキビが生まれると考えます。そのため、赤ニキビに対しては鍼を周辺に刺鍼して血行を良くしていきます。

    また、美容鍼がニキビケアに良いのは、創傷治癒(そうしょうちゆ)の力を活かすことができるからです。創傷治癒力は、人が本来持つ自然治癒力のことで、鍼による皮膚表面の目に見えない傷(マイクロトラウマ)を修復する過程で、肌の真皮層の線維芽細胞が活性化され、コラーゲンやエラスチンの生成が促進されます。

    ニキビができターンオーバーが乱れた肌は、コラーゲンやエラスチンのバランスが崩れた状態です。美容鍼で、肌のターンオーバーを促進することで、徐々にニキビが良くなってきます。

    また、大人ニキビは内臓の不調やストレスが顔に表れるケースが多く、お顔だけでなく体全体を治療することをおススメします。是非ニキビで悩んでいる方は担当の鍼灸師にご相談ください。

    美容鍼の好転反応

    美容鍼でニキビが増えた、美容鍼でニキビが悪化した、などのお話を聞くことがあります。しかし、それはニキビが悪化したのではなく、鍼特有の好転反応によるものです。

    多くの方が、美容鍼をした直後や1~2日後は施術前よりお肌が赤くなります。鍼によって、身体の代謝が活性化し、老廃物を身体の中から追い出す作用の過程で起こるのが好転反応です。その際に赤みがでたり、体を重く感じたりします。美容鍼でニキビが悪化したように感じるのはこの好転反応が原因になります。

    インディバでニキビ改善

    お顔は体の健康状態を表し、お顔に発生するトラブルの大半が体の状態にあるといわれています。インディバは、生体熱(ジュール熱)を上げることができるため、基礎代謝(血行)の促進、リンパ液の増加やホルモン分泌のバランス等を整え、体質改善することでスキン・トラブル、肥満、その他多くの美容トラブルを根本から改善することができます。また活性酸素の排除、血中の酸素を膨張させる事によって効果的に細胞・組織の活性に導くことができるため、欧米では疼痛緩和を目的とした理学療法器としても高く評価されています。

    さらに、インディバはニキビ改善にも効果的です。インディバで細胞を正常化させるときに高い解毒作用が起こり、皮膚表面のケアだけでは治すことが難しい、内部要因を伴うニキビの改善が可能です。さらに皮膚表面の新陳代謝も活発になるため、繰り返しできるニキビの再発も防ぐことができます。

    また、繰り返す大人ニキビに悩む女性の多くが、手足の冷えに悩まれており、特に下半身の冷えが酷く、上半身は熱がこもりやすくなっている方が多くいます。それが原因の一つでニキビができやすくなっています。加齢とともに代謝や筋肉量が落ち、身体が冷えやすくなるため、冷えた身体のままでは、スキンケアを頑張っても改善のスピードは遅くなります。

    一方で、年齢を重ねると内臓機能の疲れがダイレクトに肌に表れます。例えば胃腸の疲れがあると口周りにニキビが出来やすくなります。他にも便秘になれば、腸に悪玉菌が繁殖し、その毒素は血液に乗って全身に運ばれ、その不調が肌に表れます。特に忙しくストレスが多い人は、交感神経が優位になっているため、腸の蠕動(ぜんどう)運動が起こりにくく、便秘なります。
    インディバによって体の内から温めることで、自律神経のバランスを整え、ニキビの原因を排除してくれるだけでなく、腸などの内臓機能を取り戻すことができます。

    身体の養生方法

    身体に熱が溜まりやすい熱タイプの人は水をたくさん飲まなくてはなりません。
    良く水を飲むと肌が綺麗になると言われるのは熱タイプの人に当てはまります。

    ただし、寒タイプの人は身体が冷えやすいので水をたくさん飲むと身体を冷やして腎臓に負担をかけ、血液や胃液を薄め消化力を落とすことになりかねません。

    熱タイプか寒タイプかを見分ける方法は、

    ①汗っかきで顔が赤く、ほてりが強い人→熱タイプ(熱証)

    ②局所が冷えていて顔色が悪く、温かいものを飲みたがる→寒タイプ(寒証)

    ほてりや寒がりから病気へつながることがあるので、どちらでもない「正常」の状態を目指して、体質改善していきましょう。自分の体質を理解して、正しい美容法や健康法を取り入れてください。

    身体の余分な熱を取り除くツボ

    ニキビは、「身体の余分な熱」が原因です。その熱を取り、大人ニキビに効くツボは、肘を曲げて出来るシワの外側端の「曲池(きょくち)」です。

    曲池(きょくち)

    気持ちの良い強さで押して下さい。また、押しながら反時計回りに刺激を加えることで体内の熱を冷ます効果を更に上げる事が出来ます。

    ハリニーでは必ず鍼の前に東洋医学的診断を行い体質を診ます。体質に合わせた鍼をすることで悩みの改善だけでなく悩みが起こらない体質に変えていきます。

    東洋医学の強みを活かした痛くない鍼がハリニーの特徴です。ぜひ一度、体験してみてください。

    【本コラムの監修】

    HARRNY 院長/鍼灸師 菊地明子

    ・経歴
    大学卒業後、美容の世界に入り、セラピストへ。豊富な美容知識や実務経験を活かし、その後、10年間は大手企業内講師として美容部員やエステシャンの育成、サロン店舗運営のサポートを行う。現在は、セラピスト、エステティシャン、美容カウンセラー、鍼灸師の経歴を活かし、お肌とこころと身体のトータルビューティースタイルを提案。表面だけでなく根本からのケアとして、老けない生活についてのコーチングを行う。

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