
東洋医学では「心(しん)」は血液循環と精神活動をつかさどり、その状態は特にお顔に現れると考えます。例えばストレスや寝不足で「心」が乱れると、ニキビ、クマ、くすみなどの肌トラブルや、むくみ、動悸、不眠を引き起こします。そのため心と体は切り離せない一体のものとする『心身一如(しんしんいちにょ)』の観点から、精神的な安定と質の高い睡眠が美肌に不可欠になります。
肌育の基本はターンオーバー
肌を優しく育てていくことが、美容ケアの中でもスタンダードになってきています。その肌に大切なことのひとつが、ターンオーバーを正常化することです。ターンオーバーが正常化していくと、私たちの肌の水分量を司る細胞幹脂質や天然保湿因子がしっかりつくられます。
そして最終的には、きちっとした角層になり、そのバリア機能もしっかりすると内側の水分も逃げず、外刺激にも強くなります。つまり表皮のターンオーバーが正常化することによって、バリア機能が正常化することで表皮がしっかりします。当然、表皮が状態が良いと真皮の状態も良くなりす。このようにターンオーバーを正常化させることがすごく大事です。
東洋医学と肌トラブル
肌は、紫外線による外的ダメージだけでなく、ストレスや寝不足による自律神経の乱れ、食生活のの乱れによる消化不良といった体の内側の不調によっても左右されます。また朝晩の寒暖差や冷暖房による外気温差によって自律神経が乱れやすく、気分が不安定になったり、体がだるく感じたりすることも多いでしょう。
一方で、人の体は加齢とともにホルモンバランスが変化することよって、肌のバリア機能が弱まりやすくなります。例えば肌の乾燥は、皮脂や天然保湿因子が減少し、水分保持力が低下するためです。またたるみは、コラーゲンやエラスチンの減少、血流の滞りが挙げられます。これらの結果、肌の保護機能を低下させ、乾燥、たるみ、くすみ、肌荒れなどの肌トラブルを引き起こします。
こうした肌トラブルは、単なる肌ケアの問題ではなく、肌は心と体の健康を映す鏡として東洋医学では捉えます。東洋医学では、肌の状態は「気・血・水」の巡りと深く関わっていると考えます。例えば肌の乾燥は、陰虚(うるおい不足)や血虚(血の不足)が原因とし、たるみは、気虚(エネルギー不足)や脾胃の弱りによるものと考えます。いずれにせよ、肌トラブルは単なる外側の問題ではなく、体全体のバランスの乱れが表面化したものと考えるのが東洋医学の特徴です。
東洋医学で診る「見た目が若い人」
同じ年齢でも見た目が若い人、そのような人を東洋医学では「血虚(けっきょ)」という状態が深く関わっていると考えます。この「血虚」は、その言葉通り、単に血液の量が少ないだけでなく、その質や血液が全身に栄養を運ぶ血の巡り(血行)も含みます。血液は全身の細胞に栄養を届け、老廃物を回収する役割を担っており、当然機能が低下すると、肌のハリやツヤ、見た目の若々しさにも影響が現れます。
そして東洋医学の「肝」は血液を貯蔵し、全身の血液が不足しないように血流を調整する重要な役割も担っています。つまり「肝」の気の巡りが悪くなると、全身で血液が不足する状態「血虚」になります。
一方でたるみは、気虚(エネルギー不足)や脾胃の弱りによるものです。例えば人間関係による疲れ、仕事のストレスなどは、精神的な症状と深く関わり、これによって気の巡りが滞ると、「気滞(気虚)」や「肝鬱」といった状態が現れます。
東洋医学では、「気」という性質は「肝」と深く結びつき、「肝」は全身の気の流れが滞らないようにコントロールする重要な役割を担っています。そして「気」は、自律神経の機能に似ており、私たちの心身のバランスを調整する働きを担っています。例えば悩みすぎれば「肝鬱」を招き、過剰な肝鬱は「肝」によって管理されている「脾」に負担がかかり、その働きを低下させてしまいます。
また、たるみは脾胃の弱りによるものしますが、東洋医学の「脾」は消化器系の働きを担っています。例えば食べ物の消化吸収や吸収した栄養を他の部位へ輸送したりする働きです。また呼吸と免疫にも関係しており、そのため「脾」が弱ると、体の運行機能は低下し、いわゆる「脾気虚」の状態になります。
ちなみに中国最古の医学書「黄帝内経」によると、「七十歳、脾気虚、皮膚枯。」と記されており、これを訳すと「脾が気虚になると皮膚は枯れて、ツヤがなくなりくすんでしまう」と示されています。そのため脾を養生することが、肌のアンチエイジングにつながります。
また「脾」は、食べ物の消化吸収の働きだけでなく、血を体全体に巡らせる働きも持っています。そのため「脾」の働きが弱まると「脾気虚」となり、美しい肌のための栄養素が運べなくなります。特に「脾」は「口」を司っているため、口の周りが乾燥してカサカサになり、口元のシワだけでなく全体的に老けた印象を招きます。さらに「脾」は、体内の代謝にも関与しているため、脾胃の働きが弱ると、むくみやすい体質になってしまいます。この「脾」の働きを低下させる一番の原因が食習慣のため、食習慣を改めることで「脾」の養生に繋がります。
そして東洋医学では、「脾」は『後天の本』と呼ばれ、私たちが健康的で美しく、健やかに生きていくためには、まず養生しないといけない根本的な場所になっています。そのため「脾」の養生だけは必ず意識するようにしましょう。
さらに東洋医学では「肺は肌を司る」とされ、肺が弱ると肌の潤い不足になります。肺は呼吸と皮膚を司る臓器なので、呼吸が浅いと血流が滞り、顔色のくすみの原因になります。そのため深く呼吸することも心がけましょう。
ワセリンとは
ワセリンは皮膚の呼吸を塞いでしまう、石油からできていて危険など、そういった情報を目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。しかしワセリンは、非常に使い道の多い便利な成分です。
ワセリンは石油から作られた成分ですが、医薬品や化粧品に使われるワセリンは、不純物を取り除く工程を経たものです。このワセリンには、大きく分けて4つ種類があり、まず黄色ワセリン、白色ワセリン、フロペト、サンホワイトがあります。これは不純物をどれだけ綺麗に取り除いているかによります。ただし不純物があるからといって、肌にも悪いわけでもありません。
そのためワセリンの安全性は、非常に高い成分です。実際、ワセリンは皮膚への刺激も少なく、またアレルギー反応を起こす方もほとんどおらず、皮膚科で処方される外用薬の基剤としても用いられています。
ワセリンには、保湿作用と保護作用があります。前者の保湿作用については、その作用が成分によって少しずつ異なります。大きく分けると3つあり、まず1つがヒューメクタントと呼ばれる保湿成分です。これはグリセリンやヒアルロン酸の成分に代表される保湿成分になり、肌の中で水分を引き寄せてくれる成分です。
2つ目が、エモリエントと呼ばれる保湿成分で、皮膚を柔軟にして角層の手触りを滑らかにしてくれる成分のことです。そして3つ目がオクルーシブと呼ばれる保湿成分で、ワセリンはオクルーシブに分類されます。
オクルーシブは、皮膚の蓋のような役割をしてくれる成分のことで、皮膚から水分が蒸発するのを防ぐ役割を果たします。このためワセリンは、単体で水分を引き寄せて保湿効果を表すことはありませんが、他の保湿成分と組み合わせることによって肌の潤いを閉じ込めて維持してくれる効果があります。
実際、世の中の保湿アイテムは、オクルーシブ、ヒューメクタント、エモリエントと呼ばれる保湿成分を組み合わせて作られています。また異なる作用を有する保湿成分を組み合わせた、いわゆるモイスチャライザーと呼ばれる保湿アイテムの方がワセリン単体よりも保湿効果が高いことも分かっています。
一方で、ワセリンは皮膚の蓋のような役割を果たすため、毛穴が塞がってしまって呼吸ができなくなると疑問を持たれる方もいらっしゃいます。皮膚は、肺のように呼吸しているわけではなく、肌に必要な栄養素は血流によって届きます。そのためワセリンを塗ることによって肌の呼吸ができなくなってしまうことはありません。
ワセリンの正しい使い方
ニキビ肌の人、敏感肌の人、乾燥肌の人、この3つの肌タイプの人はワセリンを使う前に考えるべきことがあります。そもそもワセリンは皮膚の一番上にある角層の上に膜を張って内側の水分が蒸発していかないようにするものです。そのため良くも悪くも、ただ膜を張るだけです。やっぱり肌を守る成分には、皮脂が出て角層の一番上に油分の膜を張ることバリア機能が保たれるため、皮脂の代わりにワセリンを塗って守ることは大事なことです。
しかし、皮脂は大事な成分ですが、それ以外にも角層と各層の間をくっつけている細胞間脂質や天然保湿因子が肌の水分を引張り、逃がさないようにして角層の内側に水分を維持して、それを蒸発しないように膜をしています。しかし乾燥肌や敏感肌の人は、ワセリンだけ塗っても内側の水分を維持するものは何も与えずに、外側の膜だけ張っても、内側が乾燥している状態は改善しません。
つまり、スキンケアはお肌に水分を入れて角層で潤わせて、その一番上に膜を張ることがとても大事なことです。そういう人は、なるべくヒアルロン酸、セラミド、ヘパリン類似物質で細胞の角質の中を潤わせて、その外にワセリンを塗ることが必要です。
また、ニキビ肌の人は、皮脂分泌が過剰なので毛穴の中に皮脂が詰まるので、ワセリンによる油が多いケアすると、皮脂をさらに与えているため、毛穴づまりがさらに助長してニキビをつくったりします。
まずワセリンを使える人は、健康な肌で普通肌の人です。きちんと角層で天然保湿因子や細胞間脂質があり、適度な皮脂が出て、肌荒れをすることがない場合は、ワセリンのような膜を張るものだけを塗っていても潤えることができます。
そして乾燥肌の人、ニキビ肌の人は、自分で潤いを与えて、できれば細胞間脂質の助けになるようなセラミドやアミノ酸系、ヘパリン類似物質、ヒアルロン酸などで、しっかりと角層を潤わせてから膜を張ることが必要です。
ただし、ワセリンを分厚く塗ってしまうとメイク汚れや皮脂が閉じ込められ、クレンジングをうまく使わないとそのままとなり、ニキビなどの肌トラブルになってしまう可能性があります。実際、アメリカ皮膚科学会においても、ワセリンをニキビの方が分厚く塗ってしまうと吹き出物ができやすくなる可能性があると注意しています。
他にも、皮脂によって悪化すると言われている脂漏性皮膚炎という湿疹があり、この脂漏性皮膚炎にはマラセチアと呼ばれる皮膚の常在菌の1つであるカビが関係していると言われています。このマラセチアが、ワセリンを塗布することによって増殖しやすくなるデータもあり、やはりニキビの方、脂漏性皮膚炎の方、そういった特定の肌質の方に関してはワセリンを闇雲に使った場合、その悪化に繋がってしまう可能性があります。
しかし、ワセリンは使い方次第で、様々な用途に使える万能成分にもなり得ます。特に効果的な使い方としては、部分的な追い保湿にワセリンは有効です。具体的には、手の保湿、唇の保湿にワセリンはおすすめです。手の乾燥が極度に酷い方は、ワセリンを塗った後にさらに手袋すると保湿効果をより高めることができます。
一方で、ワセリンの保護効果の1つに、スキンケア成分の刺激を緩和する目的で重宝されています。代表的な成分のレチノールは、ビタミンAの1つで肌のターンオーバーを促して、シワなどの改善効果をもたらしてくれる成分です。特にレチールは目周りの小ジワなどにおすすめの成分ですが、レチノールを目周りに塗ると刺激を感じてしまう方が一定数います。
そのような方には、ワセリンが便利です。ワセリンをレチノールを塗る前に目周りに塗って、それからレチノールを重ねることによって、レチノールの浸透をマイルドにし、副作用を緩和する効果が期待できます。
また春先の花粉症は、鼻などの症状以外に肌に付着すると湿疹の原因になることもあります。実際、花粉の時期になると目周りが荒れやすい方は、ワセリンを目周りに塗っていただくと花粉が直接肌につくのを防いで症状を緩和してくれる効果が期待できます。また花粉症の予防でワセリンを鼻の出口に薄く塗るのもおすすめの使い方です。ワセリンを鼻の出口に塗ることによって、花粉が鼻の粘膜に付着するのを防ぐ効果があるためです。あくまで鼻の出口に塗ることで花粉の付着を防ぐだけでなく、ティッシュで鼻を噛んだ時に肌を保護してくれる効果も期待できます。
そして、注意したいのが目の周りに稗粒腫(はいりゅうしゅ)がある方です。稗粒腫は、袋の出来物で中に角質が溜まることで小さなブツブツとして見られるようになります。稗粒腫がある方がワセリンを分厚く塗ってしまうと、このブツブツが悪化してしまう可能性があると言われています。同じく、レーザーや湿疹など炎症がある状態でワセリンを分厚く塗ってしまうと、それに続いて稗粒腫ができてしまうこともあります。
また最近の報告では、デモデックスと呼ばれるニキビダニの増殖をワセリンが抑える効果があるのではないかと考えられています。デモデックスは、元々私たちの皮膚にいる常在菌の1つですが、その数が増えてしまうと炎症をもたらし、例えば赤ら顔の酒さなどの症状を引き起こしてしまうことがあります。
さらにワセリンの保護作用として、おすすめなのがすり傷に対する使い方です。最近は、すり傷は浸潤療法と言って湿らせた方がその改善効果が早いことが分かっています。軽い切り傷やすり傷の場合は、流水で綺麗にすすいで、その後にワセリンを塗って保護することによって浸潤環境が作れます。
また同じく、例えば靴ずれ、あるいはマラソンなどによって太もが擦れやすい方は、ワセリンを保護目的で使うことで肌トラブルを抑えてくれる効果が期待できます。
統合美容鍼灸の有効性
当院の統合美容鍼灸は、全身のバランスを整えることを目的としています。ツボと経絡から「気・血・水」の流れを改善し、血の巡りが良くなることで、肌に栄養と潤いが届きやすくなります。また全身のバランスを整えることで、ストレスやホルモンバランスの乱れを整えて、自律神経の乱れを整える効果が期待できます。そして全身のバランスが整うと、肌全体のハリや潤いが自然と増します。
【本コラムの監修】

・経歴
大学卒業後、美容の世界に入り、セラピストへ。豊富な美容知識や実務経験を活かし、その後、10年間は大手企業内講師として美容部員やエステシャンの育成、サロン店舗運営のサポートを行う。現在は、セラピスト、エステティシャン、美容カウンセラー、鍼灸師の経歴を活かし、お肌とこころと身体のトータルビューティースタイルを提案。表面だけでなく根本からのケアとして、老けない生活についてのコーチングを行う。














