東洋医学における「美しさ」とは

    東洋医学における「美しさ」とは

    東洋医学には『健康の先に、本当の美しさがある』という考え方があります。これは『健美互根』といって、美しさは健康を基礎として成り立つという意味であり、健康と美しさは互いに深い結びつきがあるという考えが元になっています。

    例えば、体調が悪いとニキビができたり、寝不足で生活が乱れると、皮膚がくすんだり、肌の調子が悪くなったりした経験があると思います。つまり「美しさは、健康な体の上に成り立つ」ということです。

    そして東洋医学において、その基礎と為す重要な概念が「陰陽論」と「五行論」です。「陰陽論」は、すべての物事には表と裏があり、この世の中はそのバランスによって成り立っていると考えます。「五行論」は、すべてのものは5つの要素からなり、それらが互いに影響を与え合いながら存在していると考えます。この2つをまとめると「ひとつひとつが陰陽のバランスで成り立ち、それらが集まることでひとつの機能体を構成している」ということです。

    その中で「五行論」では、人の「美(華)」は、「面色」「髪」「毛」「唇」「爪」という5つから成り立ち、それぞれは人の生理的機能(臓)である「肝・心・脾・肺・腎」の状態を表すと言われています。つまり美しさ(華)と生理的機能(臓)には互いに深い結びつきがあることが分かります。

    一方で「東洋医学」の基本的理念で、「心身一如(しんしんいちにょ)」という言葉があります。「一如」は真理はただ一つである意、「一」 は不二、「如」は不異の意味です。これは心と身体を分けずに、一つのものとして認識するということです。
    諸説ありますが、「心身一如」という言葉は鎌倉時代に道元(1200〜1253年)により書かれた「正法眼蔵」の“身心一如”起源としています。

    「病は気から」という言葉があるように、健康な「心」が、健康な「身体」をつくり、健康な「身体」が「美しさ」をつくるという流れがあることが分かると思います。

    本来の美しさの追求へ

    美容技術の進歩し、レーザーなどを用いてシミなどを簡単に除去することが可能になっています。しかし、その時はキレイになっても体質が変わらなければ近いうちにまた再発する可能性があります。もちろん、シワ・たるみ・くすみ(STK)も同様です。

    最新美容技術の中には副作用(ダウンタイム)が生じるものがあり、その即効性や効果が大きければ大きいほど肌への負担が大きい傾向があります。またお客様によっては、最新美容技術に即効性や効果を期待する反面、自分の肌や身体を総合して評価してもらえないという不安を持つ方もいらっしゃいます。

    一方で、美容鍼灸においても、お顔への刺鍼による刺激効果のみに終始し、内外のバランスを整えるという本来の美しさからは逸脱した、外面のみを重視したものが増えています。

    当院の美容鍼コースでは、外側からのアプローチはもちろん、内側からのアプローチも重要視し、お客様それぞれの目的の実現に向けサポートします。根本的な体質改善することで、得られた効果を長く継続することになり、本来の美しさを追求することができます。

    当院の東洋医学的体質診断では必ず、今起きている症状の病因を探ることから始めます。診察やカウンセリングでは今のお悩みの原因を詳しく探り、弁証結果に基づき施術方針を打ち立てます。

    美容のお悩みと五臓の関係

    東洋医学での気・血・水の生成や代謝を行う五臓(肝・心・脾・肺・腎)の中で、美容のお悩みに最も関わりの深いのが脾、肝、腎の3つです。

    五臓のひとつに問題が起こると必ず他の臓腑(大腸・小腸・胃・胆・膀胱・三焦)へ影響が及び、肝と脾、肝と腎、腎と心、脾と胃、肺と大腸など、その関係の中で複数の臓腑で問題が生じます。

    表面にあらわれている問題とその根本原因を見極めることで、複数の症状が同時に改善することができるのが、美容鍼灸の特徴のひとつです。

    美容のお悩み正常五臓の関係
    敏感肌、ニキビ、たるみ、むくみ弾力性や張りがあり、透明感やツヤがある脾(胃)・腎・肺(大腸)
    血色不良、黒ズミ、シミ(肝斑)、くすみ、乾燥、やつれ、目の下のクマ、瞼のむくみ、髪のトラブルなど血色良好、髪の毛はツヤがあり、抜けにくい肝・腎 肝・脾
    乾燥肌、目の乾き、唇のひび割れ。疣、目蓋の腫れ、浮腫み、水太り等正常な津液が満ち足りている状態、目に輝きがある、肌はみずみずしい腎・肺

    ハリニーでは、診察やカウンセリングでは四診を用いて美容のお悩みの原因を詳しく探り、弁証結果に基づき施術方針を打ち立てます。

    美容のお悩みと五臓の関係を整理しましたが、具体的に診てみましょう。

    老けて見える最大の原因「たるみ」

    老けて見える最大の原因は「たるみ」です。たるみの原因は(1)肌弾力の低下、(2)代謝機能の低下、(3)筋力の低下に大きく分けられ、特に筋力の衰えによって、皮膚や皮下脂肪を支えきれなくなりたるんでしまいます。

    東洋医学では、生命活動を維持するために必要な身体の全ての働きを、肝・腎・脾・肺・心の5つのグループ(五臓)に分けて考えます。これらがお互いの機能のバランスをとりながら、健康が保たれていると考えます。

    その五臓のなかで、たるみと関わりが深いと言われているのが「脾(ひ)」で、消化器全般、胃腸の働きのことを指すとされています。またその特徴的な働きのひとつとして、筋肉を統括するのが脾胃であり、内臓や組織をある一定の位置に留めておくという働きがあります。

    そのため、胃腸が弱いと全身の筋肉が弱くなり、顔にもたるみが現れやすくなると言われています。さらには、胃腸が弱いと栄養の吸収が悪くなり、筋肉がつきにくくなるため内臓の筋肉も弱くなり、胃下垂や内臓下垂、もちろん皮膚の下垂を起こす原因にもなります。

    さらに、水分代謝と関わる「腎(じん)」とも深く関わります。腎は水臓と言われ、体内の水分調整の役割を持つため、腎の機能が弱いと体の水分保持ができず、肌はハリや潤いを失い、たるみとなります。このように、たるみを改善するためには、胃腸の強化が不可欠です。

    シミの原因(血行障害)

    30〜40歳代に発症することが多いシミの1つが「肝斑(かんぱん)」です。主に、ほほ骨に沿って左右対称性に、または目尻の下あたりに左右対称に表れます。肝斑は、女性ホルモンのバランスの乱れが原因といわれています。このシミは「肝斑」と書くように「肝」との関係が深い肌トラブルです。
    また、代謝が悪くなり、老廃物で血液が淀み、血行が悪くなるとシミやくすみの大きな原因になります。さらに加齢により皮膚の代謝が衰えるため色素が沈着しやすくなります。

    血液をキレイにするのは肝臓で、主に心身の休息時、つまり寝ている間です。全身を巡り老廃物を集めてきてくれた血液は、肝臓できれいになり栄養を補給して明日に備えます。ところが、強いストレス、睡眠不足によって、肝臓の緊張状態が続くと、血液の浄化と再生作業が停滞し、血液をきれいすることができません。そのため汚れたままの血液が体中を巡ることになります。

    東洋医学的には、美容のためにも肝胆経の時間にあたる23時〜3時には質の良い睡眠を取れることが理想です。

    血行不良によるくすみ

    明るさやツヤが失われたくすんだ肌、特に血行不良に起因するくすみは、スキンケアだけでは解消されにくいものの1つです。

    くすみもシミと同様に肌の新陳代謝の低下や、肝臓や内臓の疲労や老化、睡眠の質の悪さに関係しています。特に冷えによって血行が悪くなると、肌が青白かったり濁ったように暗く見えてしまったりします。まさにそれが「血行不良によるくすみ」です。

    改善ポイントはお顔の血流を促すこと、体から冷えを取り除くことです。全身の血行がアップすると、肌のすみずみまで新鮮な血液や栄養が届けることができ、老廃物が滞らずに排出されます。その結果、肌の働きが正常化されて、メラニンや古い角質など肌をくすませている他の原因も含めて改善が期待できます。

    乾燥は肌の栄養不足

    肌は「脾」との関わりがありますが、「肺」とも深く関わっています。東洋医学で言う「肺」は呼吸だけの働き以外にも全身の水分調整の役割も担っています。その他にも「肺は皮毛を主る(つかさどる)」とも言われていて、肌を潤いのある美しい状態を保つことも「肺」の大切な働きです。

    また、脾と肺はお互いに助け合う相生の関係があり、脾が弱ると肺も弱ります。肌の栄養源をつくり出す「脾」と潤いあるきれいな肌を保つ「肺」、お肌の乾燥を防ぐためにも、この二つを同時に養生する必要があります。

    お肌は身体の不調を日々教えてくれています。いつもよりも肌が刺激に敏感になっていたり、乾燥しているならそれは生活スタイルを振り返ってみる良い機会です。「肌や心や体に目を向けること」「丁寧に生きること」、日常生活の積み重ねが大切です。

    病気を未然に防ぐ

    病気を未然に防ぐ方法として、鍼灸治療が世界で注目されていますが、その背景にあるのが、様々な神経科学や神経生理の研究から鍼灸の治療メカニズムのひとつである「ニューロモデュレーション」です。ニューロモデユレーションは、電気や磁気などで神経を刺激して、その働きを調整する治療法です。この治療法によって様々な病気の原因となる炎症を防ぐ治療法の開発が世界中で進められています。

    通常、私たちが病原体などに感染すると、免疫細胞が病原体を攻撃する炎症反応が起こります。病気を治すための体の仕組みですが、ところが意外な原因で免疫細胞が病気の種を生み出すことが分かってきています。

    例えば心理的なストレスや環境的な刺激によって、特定の神経回路が活性化し、一部の血管の近くに神経伝達物質が分泌されます。すると刺激を受けた血管の細胞の隙間が緩みゲートが作られ、老化とともに体内で増える病原性T細胞と呼ばれる免疫細胞が組織の中に侵入します。病原性T細胞が周囲の組織を攻撃して微小な炎症が起こります。このことを世界で初めて解明したのが北海道大学村上教授で、これを「ゲートウェイ反射」と名付けました。

    これまでの様々な研究から関節リウマチや動脈硬化、糖尿病、認知症まで小さな炎症が原因であることが分かってきており、そこで開発を進めているのが微弱な電気で耳のツボを刺激する「taVNS(経皮的耳介迷走神経刺激)」です。

    耳には免疫機能に関係する迷走神経が分布しており、電気刺激によって迷走神経に入ったシグナルは脾臓に到達し、すると神経伝達物質が放出され、最終的に免疫細胞に作用し、暴走を沈めて炎症を抑えます。このように病気を未然に治す、もしくは病気にさせない治療法の開発が鍼灸のツボを応用して取り組まれています。

    マインドセットで若返る

    自分の置かれた状況をどのように経験するのか、またその中で成功できるかどうかはマインドセット、すなわち心の持ちようによって絶えず変化します。この心の持ちようによって、現実の結果が変わってしまいます。

    心の持ちようで時間さえも巻き戻という面白い実験があります。75歳の男性たちが若い頃のように振舞うようにと指示され、1週間の合宿を行いました。その中で、これから1週間、今が1959年であると思ってくださいと告げられました。 1959年は、彼らが55歳だった年です。今が1959年であることの臨場感を出すために、自分が50代だった頃の写真が入った身分証明カードが配られ、その当時の服が用意され、その時代に起きたことを話すように指示されました。また当時の雑誌などが与えられ、本当に今は1959年であり、自分は75歳ではなく 55歳ということを感じさせるために様々な工夫が行われました。

    その結果、1 週間後に検査すると姿勢がよくなり、握力も強くなり、視力に至っては平均して10%も改善し、記憶力テストも同様でした。また半分以上の参加者は、これまで思春期以降は変わらないと思われていた知的レベルが向上していました。そして見た目すら若くなっていました。

    このように人が自分自身をどう捉えるかが、老化の肉体的プロセスに直接影響したことを、年齢という客観的な事実すらもマインド次第で変えられることが、この実験で明らかになりました。

    また仕事や作業に対するマインドは、その人の能力そのものを変えるということも分かっています。つまり自分の能力を信じれば信じるほど成功するということ、自分の人生は良い方向に行くんだとを信じるだけでモチベーションも仕事の成果も上がることが実証されています。

    美しさは健康がベース

    人は誰もが「自然(自己)治癒力」という素晴らしい力を持っています。「陰陽論」でいうバランスのとれた(中庸たる位置)場所に常に戻そうとする力が身体には働いています。 その力を利用するためにも、まず健康であるために、免疫力を上げて抵抗力をつけ、心と身体をリラックスさせて、自律神経のバランスを整えていくことが大切です。

    鍼灸では「未病治」という言葉があり、ハリニーでは、バランスを崩した状態を整える為の治療を行います。なぜかというと、美容トラブルの改善を求める方の多くは、主に病気の方ではありません。病気の状態ではなく、何らか心身のバランスが崩れている状態にアプローチすることで、内臓、精神面、身体のコリなどを総合的に治療することで、美容そして健康をサポート致します。

    本来の力を引き出すことで肌の状態を健康に保つ、それこそがハリニーの目指す『健康の先に、本当の美しさがある』です。また得られる美容効果は、人の「自然(自己)治癒力」によるものであるため、化粧品やエステやマッサージでは得ることができません。個々の体質、年齢、コンディションなど特性に応じた、体調や体質改善をめざした治療を行うことで、より人の美しさを総合的に増進させることができます。

    しかしながら、日々のエイジングケアも大切です。食事と運動と睡眠、この3つのバランスはどれが欠けても健康でいることが難しくなります。エイジングケアに関わらず、本当の美しさは健康がベースです。

    ハリニーでは、東洋医学の知識を基に、お客様一人ひとりに合わせた方法で、お悩みの改善が出来るよう全力を尽くすことをお約束します。

    【本コラムの監修】

    恵比寿院長

    HARRNY 院長/鍼灸師 菊地明子

    ・経歴
    大学卒業後、美容の世界に入り、セラピストへ。豊富な美容知識や実務経験を活かし、その後、10年間は大手企業内講師として美容部員やエステシャンの育成、サロン店舗運営のサポートを行う。現在は、セラピスト、エステティシャン、美容カウンセラー、鍼灸師の経歴を活かし、お肌とこころと身体のトータルビューティースタイルを提案。表面だけでなく根本からのケアとして、老けない生活についてのコーチングを行う。

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