
2026 年に発表されたアメリカの大規模調査NHANES(米国国民健康・栄養調査)のデータを使って成人 15050人を解析した研究があります。この研究では、食事とサプリを含めたビタミン摂取量と生物学的老化の進み具合の関係を調べました。その結果、ビタミン摂取量が多い人ほど生物学的老化が遅い傾向が確認されておいます。複数のビタミンの中で、特に寄与が大きかったのがビタミンCとビタミンB2です。
疲れや不調の原因にビタミンB2不足
ビタミンB2が足りなくなると体は、老けやすい状態に傾いていきます。なぜなら細胞がエネルギーを作る力や、ダメージから立て直す力が落ちやすくなるからです。最近の寝ても疲れが抜けない、なんだか肌に元気がないなど、小さな不調も関係しており、もちろん全部がビタミンB2不足で説明できるわけではありませんが、特に40代以降の不調の裏では、細胞のガス欠が起きている場合があります。
このような不調の回復に、食べ物から糖質や脂質を摂っても、それをうまくエネルギーとして使うには、補酵素が必要となり、その働きにビタミンB2が深く関わっています。つまりビタミンB2 が不足しているとせっかく栄養を摂っても、それが使いにくくなって余った分は脂肪として蓄えられやすくなります。そのため三食しっかり食べているから大丈夫と思っていても、ビタミンB2は意外と不足しやすい栄養素です。
不足する理由は大きく3つあり、まず1つ目はビタミンB2が水溶性ビタミンだからです。つまり長く貯めておけないため、余った分は排出されやすく、細めに補給する必要があります。2つ目はストレスや加齢など、体の修復で消費されやすいからです。私たちの体は、ストレスを受けたり、炎症やダメージに対処するためエネルギーを多く使う状況になると、補酵素もたくさん必要になります。つまり体の中で貯めにくく、さらに忙しい時や疲れてる時ほど減りやすい栄養素になります。さらに年齢を重ねるほど体の中では酸化ストレスなどのダメージが増えやすく、ビタミンB2も沢山必要になります。
そして3 つ目が、年齢と共に食事の量や内容が変わったり、胃腸の働きが弱ることで必要量を充しにくくなることです。つまり吸収だけの問題ではなく、そもそも食べ方や体の状態も変わってきます。このように貯めにくい、減りやすい、充しにくいため、ビタミンB2は不足状態になりやすい栄養素です。
ビタミンB2の不足のサイン
見逃されやすい地味なサインとして、疲れやすさ、朝からだるい感じ、なんとなく集中力が続かない、肌の調子が前より落ちた、髪や口周りが荒れる、そんなはっきり病気ではないけど調子が悪いことが挙げられます。
有名なビタミン Cは、外から補給する前線の盾であり、ビタミンB2 は体の中の守りそのものを動かす電源に近い存在です。抗酸化と言うと、外からビタミンCやポリフェノールを入れて守る発想になりますが、実は私たちの細胞の中には元々自前の守りが備わっており、その代表がグルタチオンです。
グルタチオンは、細胞の中で起きる酸化を抑える重要な守りの仕組みです。ただしグルタチオンは、酸化ダメージを打ち消すと自分も消耗して働きが落ちます。しかし消耗したグルタチオンを、もう1度使える形に戻して再利用する、この再生を担当しているのがグルタチオン還元酵素です。
そして、その酵素が働くために必要なのがビタミン B2から作られるFADです。 FADは、酵素を動かすための専用パーツみたいなもので、ビタミンB2はFMNやFAD になって支えています。つまり不足状態が続くと細胞の中で酸化が溜まりやすくなり、ビタミンCなどの抗酸化成分を入れても細胞の中の再生ラインが弱っていれば守りきれなくなります。そのためビタミンB2が、守りの仕組み全体を止めないための重要な裏方になっています。
さらに、ビタミンB2は守りだけではなく、ミトコンドリアのエネルギー作りにも活躍しています。私たちが食べた糖質、脂質、タンパク質は最終的にはミトコンドリアの中でエネルギーに変えられます。その流れを支えている酵素にもビタミンB2由来のFMNやFADが深く関わっています。つまりビタミンB2 が足りないと食べ物をちゃんと食べても、うまくエネルギーに変えにくくなります。
これが細胞のガス欠につながり、寝ても疲れが抜けない、朝からだるい、なんとなく頭が回らないみたいな感覚が出る原因の1つとして、ビタミンB2不足は十分あり得ることになります。さらにB2は、他のビタミンやミネラルの仕事にも深く関係しています。
ビタミンCは美容、ビタミンB群は疲労回復など、それぞれ単独で働いているイメージがありますが、実は1つの栄養素が足りないだけで他のビタミンやミネラルまで力を発揮しにくくなります。
例えば、ビタミンB群のB6や葉酸、ナイアシンは、体に入ってすぐフルで働けるわけではなく、使いやすい形に変わってから本領を発揮します。その変換をビタミンB2が支えており、ビタミンB2は補酵素として、その流れを支えるため、足りないと他のビタミンを摂っても、うまく力を出しにくくなります。
さらにB2は、特に鉄の利用を支えることで知られており、銅とも代謝の中で関係しています。鉄は酸素を運ぶのに重要であり、銅も鉄をうまく使う流れに関わっています。ビタミンB2が不足すると、こうした連携が鈍り、全体の働きが落ちやすくなります。
さらに、抗酸化の面でもビタミンB2は地味に重要です。ビタミンEのような抗酸化の仕組みも、体の中では単独で完結しているわけではなく、ビタミンB2が関わる補酵素の助けを受けながら全体で守っています。ビタミンEだけ摂れば終わりではなく、周りの栄養素がちゃんと揃ってこそ働きやすくなります。
また、ビタミンB2は、血管の老化にも関係しています。ホモシステインは、タンパク質に関わる代謝の途中で生じる物質ですが、これが血液中で高すぎる状態になると、血管の内側に負担をかけて動脈硬化のリスクとの関連も指摘されています。人体には、ホモシステインを別の形にする代謝ルートが備わっていますが、この代謝ルートを回す仕組みの一部でもビタミンB2が重要な役割を持っています。
効率よくビタミンB2を摂る
ビタミンB2の多い食材は、鮭、牛や豚のレバー、卵、納豆、乳製品、アーモンド、また量はそこまで多くはありませんが魚や肉、キノコ類があります。また気をつけたいのは、ビタミンB2は、熱には比較的強いが水には溶けやすいため、茹でたり煮たりした時に流れ出る性質があります。
そのためスープ、味噌汁、シチュー、鍋など、溶け出した分までまとめて回収できる料理は相性が良いです。また茹でる代わりに電子レンジで加熱して、水に流れ出る量を抑えるのも賢いやり方で、調理法を少し変えるだけで摂れる量は変わってきます。
一方で、サプリで摂取する場合で大事なのは、量が多ければ多いほど良いわけではありません。また1日1回まとめて飲むことは効率が良くありません。ビタミンB2 は水溶性であるため体内に貯め込みにくく、1度に吸収できる量にも限りがあります。
腸には、ビタミンB2を体の中に摂り込むための専用の運び屋みたいな仕組み(トランスポーター)がありますが、この処理能力にも限界があります。たくさん飲んだからと言って、そのままたくさん使えるわけではありません。例えば100mgを1回で飲むより、もっと少ない量を朝と夜に分けた方が体としては扱いやすく、小まめに補う方が良いです。
そしてもう1 つ、気をつけたいのがサプリのボトルです。ビタミンB2にとって1番厄介なのが光です。紫外線だけではなく、照明などの日常の光でも長く当たると分解が進みやすい傾向があることに注意しましょう。
NMNとは
まずは、NMNという物質が体の中で何をしているのかを正しく知る必要があります。NMNは、私たちの細胞を動かすためのNADという物質の材料になるものです。ここで抑えておくべきポイントは、NMNはあくまでNAD を増やすための手段に過ぎないということです。
NMNは、体内に吸収されてから酵素の働きでNADに変換されて初めて意味を持ちます。そしてNADは、細胞という工場を動かすための燃料のような役割を果たしています。このNADには大きく2 つの重要な役割があり、1 つはミトコンドリアでエネルギーを作ること、もう1つは細胞の修復や制御です。つまりNADはサーチュインやDNA 修復酵素が働くためにも必要になります。
このようにNADは、健康維持の土台みたいな存在であり、NADが多いほど若さを保てます。しかしNADは、加齢と共に体内で減り、しかも年齢を重ねると NADを作る力が落ちて、逆にCD38のようなNADを分解する酵素は増えやすくなります。その結果、代謝や修復がうまく回りにくくなり、老化が進みやすくなります。
そこでNADの材料を補って、体内のNADを支えられないかと注目されたのがNMNです。NADを増やしたいなら、NADそのものを飲めば良いと考えるかもしれませんが、NADは分子が大きく、そのままでは細胞の中では使いにくいものです。そのため材料の形で補って、体内でNADを作らせる方が現実的になります。
運動機能への影響
実際に、人間で現在確認されている、具体的な効果の一つが運動機能への影響です。人への試験では中高年がNMNを摂取したことで歩行速度や距離に改善が見られた報告があります。歩行速度は健康状態や将来の自立度と関係が深い指標として知られています。
なぜなら年齢を重ねると筋力や自給力、全身の代謝機能が落ちやすくなるため、歩行能力の低下は体全体の衰えのサインとして見られることが多いからです。NMNで細胞内のNADが増えることで、筋肉のエネルギー代謝や働きが支えられたと考えられています。
睡眠や体内時計への影響
NADは、体内時計の調節にも関わっており、年齢と共にNADが減ると睡眠リズムも乱れやすくなる可能性があります。65歳以上を対象にした研究では、NMNを12週間摂ったことで、特に午後摂取のグループで日中の眠気や疲労感の改善が報告されています。
NMNは、体内時計やエネルギー代謝を支えることで、生活リズムを整える助けになる可能性があります。また睡眠が改善されば、脳のゴミを掃除したり、細胞を修復したりする機能も高まります。
代謝機能の改善
代謝機能の改善には、筋肉のインスリン感受性への影響が挙げられます。食事で取った糖は、血液を通って運ばれますが、筋肉はその糖をたくさん使う重要な組織です。インスリン感受性が高いことは、その糖を筋肉がスムーズに取り込みやすい状態を指します。
逆に、感受性が低いと糖がうまく処理されにくくなり、それが続くと血糖コントロールの悪化につながりやすいことになります。アメリカの研究では、糖代謝に課題を抱える太り気味の閉経後女性を対象に、NMNを10週間摂ってもらったところ、NMNを摂ったグループでは、筋肉のインスリン感受性の改善が報告されています。
つまり、筋肉が糖を取り込みやすくなった可能性が示されています。NMNでNAD代謝が支えられることで、筋肉のエネルギー代謝や機能に良い影響が出たと考えられています。ただしNMNは筋肉の糖の摂り込み機能を正常な状態に近づけるものであって、摂取したカロリーをなかったことにする魔法の薬ではありません。
NMNで若返り!?
NMNが人気になった若返り効果の根拠は、ほとんどがマウスを用いた基礎研究のデータです。この発端は、ハーバード大学などの研究機関が行った動物実験の劇的な成果にあります。老齢のマウスにNMNを投与したところ、運動能力が劇的に上がり、代謝が改善し、さらには血管やミトコンドリアの機能で明らかな若返りが見られたという報告が次々と示されました。つまり加齢でエネルギーを作れなくなっていた細胞が、NMNから作られたNADにより再び活発に働き始めました。
それだけ目に見えて効果が出たことで、特にサプリ業界がこぞって使ったのが人間に換算すると60歳が20 歳になったような変化というキャッチーな表現でした。確かに、マウスの寿命や身体機能の改善率を人間のスケールに当てはめればそういう計算になるかも知れませんが、マウスと人間では体のサイズも代謝のスピードも寿命の長さも全く違います。つまりマウスでこれだけ若ったから人間でも同じように若えるとは限りません。
しかしながら、ハーバード大学のマウス実験自体が意味のないものでは決してなく、この研究は科学の世界では、常識が大きく変わることになりました。これまで老化は時間が経てば自然に衰えていく避けられない現象だと考えられていましたが、NMNの研究によって老化にはNADの減少があり、それを補えば治療可能なプロセスかもしれないという新しい認識が生まれることになっています。
ちなみに、有名なマウス研究では体重1kgあたり100mgから300mg前後のNMNが使われていましたが、ざっくり人間に換算すると体重60kgなら大体1日500mgから1.5g前後が目安になります。これはサプリとしてはかなり多めであり、マウス研究のインパクトと人間で実際に試せる量の間には、まだギャップがあることになります。
またサプリの過剰摂取は、肝臓や腎臓などの代謝期間に負担をかけるリスクがあり、長期間飲み続けた場合の安全性は人間ではまだ証明されていません。そのため推奨量の250mgでは、マウスのような劇的な効果は保証されていませんが、全く効果が無いというわけではありません。
250mg程度のNMNを摂取すれば、人間の体でも血中のNADレベルがしっかり上昇することは、複数の人研究で確認されています。ただしNAD上がって一部の機能が改善する兆候は見えたとしても、それが魔法のように顔のシワを消し去ったり、人間の寿命を何十年も伸ばしたりするような劇的な若返りデータは得られていません。
人を対象にした研究は、まだ歴史が浅く、参加人数が数十人規模と少なかったり、追跡期間が数週間から数ヶ月と短かったりするため、最終的な結論を出す段階にはありません。また若い健康な人がNMNを飲んでも効果を体感できない可能性が高いです。そもそも10代から20代の健康な人の体の中では、細胞を動かすための燃料であるNADが十分に作られています。そのため年齢を感じるようになった人が試すべきものです。
一方で肥満や睡眠不足、持続的なストレスなどによって体の中のあちこちで、慢性炎症が起きると免疫細胞がそれに反応して、CD38という酵素を大量に分泌するようになります。そしてCD38は活動するためにNAD をものすごい勢いで消費してしまいます。つまりNMNの効果を最大限に引き出すために、まずは体の慢性炎症を沈めるのが最優先になります。あくまでもNMNは、普段の生活習慣の土台がしっかりした上で、さらに上を目指すためのサポート役になります。
【本コラムの監修】

・経歴
大学卒業後、美容の世界に入り、セラピストへ。豊富な美容知識や実務経験を活かし、その後、10年間は大手企業内講師として美容部員やエステシャンの育成、サロン店舗運営のサポートを行う。現在は、セラピスト、エステティシャン、美容カウンセラー、鍼灸師の経歴を活かし、お肌とこころと身体のトータルビューティースタイルを提案。表面だけでなく根本からのケアとして、老けない生活についてのコーチングを行う。


















