ビタミンと老化の関係

美容のビタミンC、土台のビタミンB2

2026 年に発表されたアメリカの大規模調査NHANES(米国国民健康・栄養調査)のデータを使って成人 15050人を解析した研究があります。この研究では、食事とサプリを含めたビタミン摂取量と生物学的老化の進み具合の関係を調べました。

その結果、ビタミン摂取量が多い人ほど生物学的老化が遅い傾向が確認されておいます。複数のビタミンの中で、特に寄与が大きかったのがビタミンCとビタミンB2です。

なぜ年を取ると「疲れやすく」なるのか

加齢に伴う体の不調の根本には、細胞がエネルギーを作る力の低下があります。私たちの体は約37兆個の細胞で構成されており、細胞一つひとつがエネルギーを作り出し、互いに連携しながら体全体の機能を維持しています。細胞は常に新しいものへと生まれ変わっていますが(ターンオーバー)、その新陳代謝にもエネルギーが必要です。

このエネルギーを作り出しているのが、細胞内にあるミトコンドリアという器官です。ミトコンドリアに酸素が供給されることで、「ATP」と呼ばれる細胞のエネルギーが生成されます。

  • 「ATP」が十分に作られると→肌のターンオーバーが促進・コラーゲン生成が活発・髪のハリが保たれる
  • 「ATP」が不足すると→シミが残りやすくなる・コラーゲンが壊れてたるむ・白髪が増えるなどの老化サインが出やすくなる

つまり、見た目の若々しさも、体の機能的な元気も、すべてミトコンドリアのエネルギー産生能力にかかっていると言えます。

そしてこのミトコンドリアは、加齢とともに機能が低下し、数も減少していきます。40歳前後から変化が現れ始め、60歳以上になると若い頃の約半分にまで減少するとも言われています。同じことをしていても疲れやすくなるのは、エネルギーを作る工場自体が半分になっているのですから、ある意味当然のことです。

加齢によるミトコンドリア減少とATP産生量が肌・髪に与える影響

栄養もしっかり摂っているのに、なぜ変わらないのか

特に40代を過ぎてから、こんな悩みが増えていませんか。「しっかり寝ているのに、朝から体が重い」「プロテインを飲んで筋トレしているのに、昔ほど体が変わらない」「食事に気を使っているのに、お腹周りがなかなか落ちない」。

多くの方はこれを「年齢のせい」「努力が足りないせい」と思い込みがちですが、実は問題の根本は摂っている栄養素の種類ではなく、その栄養を受け取る側の細胞が弱っていることにある可能性があります。

どれだけ良質な材料や道具を揃えても、それを受け取る器がボロボロでは意味がありません。肝臓も筋肉も脳も、すべては細胞の集まりです。その細胞が正常に代謝できる状態を維持できているかどうかが、40代以降の体の変化を左右する大きな鍵になっています。

ストレス・過食・運動不足・睡眠の乱れといった現代生活の負担が積み重なると、細胞は水分を保つ力を失い、栄養を受け取る力も徐々に落ちていきます。つまり「プロテインを飲んでも筋肉にならない」「野菜を食べても疲れが取れない」という状態は、細胞という器がカラカラになっているサインかもしれないのです。

疲れや不調の原因にビタミンB2不足

ビタミンB2が足りなくなると体は、老けやすい状態に傾いていきます。なぜなら細胞がエネルギーを作る力や、ダメージから立て直す力が落ちやすくなるからです。最近の寝ても疲れが抜けない、なんだか肌に元気がないなど、小さな不調も関係しており、もちろん全部がビタミンB2不足で説明できるわけではありませんが、特に40代以降の不調の裏では、細胞のガス欠が起きている場合があります。

このような不調の回復に、食べ物から糖質や脂質を摂っても、それをうまくエネルギーとして使うには、補酵素が必要となり、その働きにビタミンB2が深く関わっています。つまりビタミンB2 が不足しているとせっかく栄養を摂っても、それが使いにくくなって余った分は脂肪として蓄えられやすくなります。そのため三食しっかり食べているから大丈夫と思っていても、ビタミンB2は意外と不足しやすい栄養素です。

不足する理由は大きく3つあり、まず1つ目はビタミンB2が水溶性ビタミンだからです。つまり長く貯めておけないため、余った分は排出されやすく、細めに補給する必要があります。2つ目はストレスや加齢など、体の修復で消費されやすいからです。

私たちの体は、ストレスを受けたり、炎症やダメージに対処するためエネルギーを多く使う状況になると、補酵素もたくさん必要になります。つまり体の中で貯めにくく、さらに忙しい時や疲れてる時ほど減りやすい栄養素になります。さらに年齢を重ねるほど体の中では酸化ストレスなどのダメージが増えやすく、ビタミンB2も沢山必要になります。

そして3 つ目が、年齢と共に食事の量や内容が変わったり、胃腸の働きが弱ることで必要量を充しにくくなることです。つまり吸収だけの問題ではなく、そもそも食べ方や体の状態も変わってきます。このように貯めにくい、減りやすい、充しにくいため、ビタミンB2は不足状態になりやすい栄養素です。

水溶性・消耗増・吸収力低下、不足サイン、体を守る2つの役割

ビタミンB2の不足のサイン

見逃されやすい地味なサインとして、疲れやすさ、朝からだるい感じ、なんとなく集中力が続かない、肌の調子が前より落ちた、髪や口周りが荒れる、そんなはっきり病気ではないけど調子が悪いことが挙げられます。

有名なビタミン Cは、外から補給する前線の盾であり、ビタミンB2 は体の中の守りそのものを動かす電源に近い存在です。抗酸化と言うと、外からビタミンCやポリフェノールを入れて守る発想になりますが、実は私たちの細胞の中には元々自前の守りが備わっており、その代表がグルタチオンです。

グルタチオンは、細胞の中で起きる酸化を抑える重要な守りの仕組みです。ただしグルタチオンは、酸化ダメージを打ち消すと自分も消耗して働きが落ちます。しかし消耗したグルタチオンを、もう1度使える形に戻して再利用する、この再生を担当しているのがグルタチオン還元酵素です。

そして、その酵素が働くために必要なのがビタミン B2から作られるFADです。 FADは、酵素を動かすための専用パーツみたいなもので、ビタミンB2はFMNやFAD になって支えています。つまり不足状態が続くと細胞の中で酸化が溜まりやすくなり、ビタミンCなどの抗酸化成分を入れても細胞の中の再生ラインが弱っていれば守りきれなくなります。そのためビタミンB2が、守りの仕組み全体を止めないための重要な裏方になっています。

さらに、ビタミンB2は守りだけではなく、ミトコンドリアのエネルギー作りにも活躍しています。私たちが食べた糖質、脂質、タンパク質は最終的にはミトコンドリアの中でエネルギーに変えられます。その流れを支えている酵素にもビタミンB2由来のFMNやFADが深く関わっています。つまりビタミンB2 が足りないと食べ物をちゃんと食べても、うまくエネルギーに変えにくくなります。

これが細胞のガス欠につながり、寝ても疲れが抜けない、朝からだるい、なんとなく頭が回らないみたいな感覚が出る原因の1つとして、ビタミンB2不足は十分あり得ることになります。さらにB2は、他のビタミンやミネラルの仕事にも深く関係しています。

ビタミンCは美容、ビタミンB群は疲労回復など、それぞれ単独で働いているイメージがありますが、実は1つの栄養素が足りないだけで他のビタミンやミネラルまで力を発揮しにくくなります。

例えば、ビタミンB群のB6や葉酸、ナイアシンは、体に入ってすぐフルで働けるわけではなく、使いやすい形に変わってから本領を発揮します。その変換をビタミンB2が支えており、ビタミンB2は補酵素として、その流れを支えるため、足りないと他のビタミンを摂っても、うまく力を出しにくくなります。

さらにB2は、特に鉄の利用を支えることで知られており、銅とも代謝の中で関係しています。鉄は酸素を運ぶのに重要であり、銅も鉄をうまく使う流れに関わっています。ビタミンB2が不足すると、こうした連携が鈍り、全体の働きが落ちやすくなります。

さらに、抗酸化の面でもビタミンB2は地味に重要です。ビタミンEのような抗酸化の仕組みも、体の中では単独で完結しているわけではなく、ビタミンB2が関わる補酵素の助けを受けながら全体で守っています。ビタミンEだけ摂れば終わりではなく、周りの栄養素がちゃんと揃ってこそ働きやすくなります。

また、ビタミンB2は、血管の老化にも関係しています。ホモシステインは、タンパク質に関わる代謝の途中で生じる物質ですが、これが血液中で高すぎる状態になると、血管の内側に負担をかけて動脈硬化のリスクとの関連も指摘されています。人体には、ホモシステインを別の形にする代謝ルートが備わっていますが、この代謝ルートを回す仕組みの一部でもビタミンB2が重要な役割を持っています。

効率よくビタミンB2を摂る

ビタミンB2の多い食材は、鮭、牛や豚のレバー、卵、納豆、乳製品、アーモンド、また量はそこまで多くはありませんが魚や肉、キノコ類があります。また気をつけたいのは、ビタミンB2は、熱には比較的強いが水には溶けやすいため、茹でたり煮たりした時に流れ出る性質があります。

そのためスープ、味噌汁、シチュー、鍋など、溶け出した分までまとめて回収できる料理は相性が良いです。また茹でる代わりに電子レンジで加熱して、水に流れ出る量を抑えるのも賢いやり方で、調理法を少し変えるだけで摂れる量は変わってきます。

一方で、サプリで摂取する場合で大事なのは、量が多ければ多いほど良いわけではありません。また1日1回まとめて飲むことは効率が良くありません。ビタミンB2 は水溶性であるため体内に貯め込みにくく、1度に吸収できる量にも限りがあります。

腸には、ビタミンB2を体の中に摂り込むための専用の運び屋みたいな仕組み(トランスポーター)がありますが、この処理能力にも限界があります。たくさん飲んだからと言って、そのままたくさん使えるわけではありません。例えば100mgを1回で飲むより、もっと少ない量を朝と夜に分けた方が体としては扱いやすく、小まめに補う方が良いです。

そしてもう1 つ、気をつけたいのがサプリのボトルです。ビタミンB2にとって1番厄介なのが光です。紫外線だけではなく、照明などの日常の光でも長く当たると分解が進みやすい傾向があることに注意しましょう。

栄養吸収の土台をつくるベタイン

ベタインは、ほうれん草やビーツなどに多く含まれる天然成分です。体の中で2つの重要な役割を果たします。ベタインは細胞の内側に入り、過酷な環境でも水分を逃しにくくする働きがあります。乾ききった細胞を潤すバリアのように機能し、細胞が本来の仕事をしやすい環境を整えます。

またベタインは「メチル基」という小さな化学的パーツを体内の各反応に提供します。このメチル基の受け渡し(メチル化反応)は、脂肪の処理・エネルギーの産生・不要物の排出など、体内のあらゆる代謝反応を動かすためのスイッチに相当します。

この2つの働きによって、ベタインは「栄養を入れる」のではなく「入れた栄養がちゃんと使われる体の状態に戻す」成分として機能します。さらにベタインは細胞の水分バランスを保ち、細胞がダメージを受けにくい環境を作ることで、炎症という火種を大きくしにくい体の土台を整えます。火を直接消すというより、そもそも燃え広がりにくい体質に整えるイメージです。また、炎症に関わる物質を抑える可能性についても研究が進んでいます。

ちなみにベタインを豊富に含む食品には、ほうれん草、ビーツ、全粒穀物に含まれ、特定の食材だけを大量に食べることにこだわるよりも、これらの食材を日常の食事に少しずつ取り入れていくことが長続きのコツです。またサプリメントではベタインより「TMG(トリメチルグリシン)」と表記されていることが多いです。

臨床試験で効果が確認されたインナーケア

大切なのは、実際に人を対象とした臨床試験で効果が確認されているかどうかという視点です。プラセボ対照試験などの信頼性の高い研究によって乾燥肌の改善効果が報告されている3つの成分があります。

ただし大前提として、インナーケアはスキンケアや食事という土台の上に加えるものです。洗顔・保湿などの基本スキンケアと、バランスのとれた食事が最初にあって、その効果をさらに高めるためのプラスアルファとしてサプリメントがあります。この順番を忘れないでください。

グルコシルセラミド/ヒアルロン酸/コラーゲンペプチドの試験データ比較

グルコシルセラミド——バリア機能を回復させて水分の蒸発を防ぐ

作用のメカニズム

アトピーや乾燥性敏感肌ではセラミドが不足し、肌バリアが低下することで水分が蒸発しやすい状態になっています。グルコシルセラミドはこのセラミドの「材料」として直接作用するのではなく、体内でセラミドを増やすシグナル(生理活性物質)を送ることで、肌が自らセラミドを産生するスイッチをオンにするという特徴的な働き方をします。

セラミドが増えることでバリア機能が回復し、肌からの水分蒸発量(TEWL)が低下します。その結果、肌の水分量が上昇して乾燥が改善されます。「肌に直接水分を与える」のではなく、「肌から水分が逃げにくい状態を作る」というアプローチです。

臨床試験のデータ

乾燥肌を自覚している成人男女133名を対象に実施されたランダム化プラセボ対照二重盲検試験では、グルコシルセラミド1.8mgを含む製品を摂取したグループで、摂取開始から約4週間後にプラセボグループと比較して肌の水分量の増加とTEWLの低下(バリア機能の回復)が確認されました。

消費者庁によるエビデンス審査を経た特定保健用食品(特保)の認定を受けた製品も存在しており、信頼性の高い成分と言えます。

肌バリアの低下が気になる乾燥肌の方。 スキンケアのセラミドに加えて、インナーケアでもセラミドを補いたい方に向いています。

ヒアルロン酸——水分量・バリア・皮脂・シワを多面的にケアする

作用のメカニズム

化粧品成分としておなじみのヒアルロン酸ですが、飲むことでも肌に効果があることが近年の研究で明らかになっています。スキンケアでは肌の表面に水分を保持する働きが中心ですが、経口摂取では表皮と真皮の状態を整えることで、内側から水分量の増加とバリア機能の回復をもたらすという異なるアプローチで作用します。

臨床試験のデータ

150名を対象とした3群プラセボ対照二重盲検試験において、ヒアルロン酸を12週間(3か月)摂取したグループでは次の結果が報告されています。

  • 肌の水分量:60mg摂取グループで9.1%増加、120mg摂取グループで11.5%増加(いずれもプラセボ比)
  • バリア機能(TEWL):60mg・120mg両グループで回復を確認
  • 皮脂量:120mg摂取グループで顔全体の皮脂量が低下(ベタつきの軽減)
  • 小じわの深さと真皮密度:両グループで有意な改善

特に注目したいのが皮脂量の低下です。これは、表面はテカテカしているのに内側は乾燥している「インナードライ肌」の方にとっても有効な可能性を示しています。

さらにレチノールや高濃度ビタミンCなど攻めのエイジングケアが使いにくい敏感肌・アトピー肌の方にとって、ヒアルロン酸の経口摂取は肌への刺激なく穏やかにシワ予防・エイジングケアができる選択肢として特に価値があります。

上記の研究では1日120mgが使用されていますが、この量を摂取できる製品は市場にまだ少ない現状があります。製品を選ぶ際は1日あたりの含有量を成分表示で確認し、研究で有効性が示された量(60〜120mg)を目安に選ぶことをおすすめします。

乾燥改善だけでなく、エイジングケアやインナードライ対策も同時に行いたい方。 多面的なケアをインナーケア1つでまかないたい方に特に向いています。

コラーゲンペプチド(低分子コラーゲン)——NMFを増やして角層からうるおいを引き出す

作用のメカニズム

「飲んだコラーゲンがそのまま肌に届く」というわけではありません。コラーゲンペプチドは体内でペプチドやアミノ酸レベルまで分解され、その過程で生じるヒドロキシプロリンというアミノ酸が生理活性物質として機能します。このヒドロキシプロリンがNMF(天然保湿因子)の産生を促すシグナルを肌に送ると考えられています。

前述のグルコシルセラミドやヒアルロン酸では報告されなかったNMFの増加効果がコラーゲンペプチドでは確認されており、この点が他の2成分との最大の違いです。NMFは角層の水分を直接保持する成分であるため、強いカサカサ乾燥に悩む方に特に有効です。

臨床試験のデータ

乾燥肌の35〜60歳の男女50名を対象としたダブルブラインドプラセボ対照試験では、コラーゲンペプチド1000mgを12週間摂取したグループで次の結果が報告されています。

  • 角層と表皮の水分量:有意に増加
  • バリア機能(TEWL):低下(バリアの回復)を確認
  • 角層のNMF量:有意に増加

なお、真皮のコラーゲンを増やすという真皮への効果については、1000mgでは有意な結果が得られず、10gの摂取で効果が報告されています。乾燥改善・水分量アップという観点では1000mgで十分有効です。

カサカサとした強い乾燥感があり、角層のNMFを増やしてうるおいを内側から引き出したい方。 バリア改善に加えてNMFの産生促進という独自のアプローチが必要な方に向いています。

ビタミンCでお肌のシワを改善

ビタミンCといえば「シミに効く」「美白成分」というイメージが強いかもしれません。しかし実は、シワの改善にも大きな効果があることがわかっています。

フランスで行われた研究では、5%のビタミンCクリームを顔の片側だけに6ヶ月間塗り続けた結果、塗った側のシワが改善されたことが確認されました。この結果が示すのは、ビタミンCが単なる美白成分ではなく、シワにも直接アプローチできる成分だということです。

ビタミンCがシワを改善できる理由は、コラーゲン生成の「起動スイッチ」として機能するためです。コラーゲンは肌のハリや弾力を支えるタンパク質で、加齢とともに産生量が減少します。ビタミンCはこのコラーゲンを作り出す細胞に働きかけ、生成を促進する役割を持っています。つまり、ビタミンCを肌に届けることで、肌の内側からコラーゲン工場を稼働させることができるのです。

ビタミンCの主な肌への効果をまとめると、以下のとおりです。

効果内容
美白・シミ改善メラニン生成を抑制し、シミや色ムラを予防・改善
ハリ・シワ改善コラーゲン生成を促進し、肌のハリをサポート
抗酸化作用活性酸素によるダメージから肌を守る

スキンケアに迷ったときは、まずビタミンCを取り入れることで、複数の肌悩みに同時にアプローチできます。紹介した実験では5%のビタミンCクリームでシワ改善効果が確認されています。一般的に濃度が高いほど効果も高まる傾向があり、現在は10%配合のビタミンC製品も開発・検討されています。ただし、濃度が高い製品は肌への刺激も強くなる場合があるため、肌質や状態に合わせて選ぶことが大切です。

NMNとは

「ATP」で注目されたのがNMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)です。NMNは体内に入ると、NAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)という物質に変換されます。このNADが重要で、ミトコンドリアの中にある「電子伝達系」という回路において、電子を運ぶ役割を担っています。電子伝達系はATPを生成するための中心的な経路であり、NADはその回路を効率よく回すための担い手です。

わかりやすく言えば、ミトコンドリアという工場の作業員を増やすイメージです。NMNを摂取することでNADが増加し、ミトコンドリアがより効率よくエネルギーを産生できるようになります。60歳でミトコンドリアの数が半分になったとしても、残ったミトコンドリアが2倍の効率で働ければ、体の活力は維持できます。

なおNMNと同じようにミトコンドリアの電子伝達系をサポートする成分として、以前流行したコエンザイムQ10や、ATPの産生に必要な酵素を活性化する5-ALA(5-アミノレブリン酸)なども挙げられます。いずれもミトコンドリアを元気にするという方向性は共通しています。

そして、NMNという物質が体の中で何をしているのかを正しく知る必要があります。NMNは、私たちの細胞を動かすためのNADという物質の材料になるものです。ここで抑えておくべきポイントは、NMNはあくまでNAD を増やすための手段に過ぎないということです。

NMNは、体内に吸収されてから酵素の働きでNADに変換されて初めて意味を持ちます。そしてNADは、細胞という工場を動かすための燃料のような役割を果たしています。このNADには大きく2 つの重要な役割があり、1 つはミトコンドリアでエネルギーを作ること、もう1つは細胞の修復や制御です。つまりNADはサーチュインやDNA 修復酵素が働くためにも必要になります。

このようにNADは、健康維持の土台みたいな存在であり、NADが多いほど若さを保てます。しかしNADは、加齢と共に体内で減り、しかも年齢を重ねると NADを作る力が落ちて、逆にCD38のようなNADを分解する酵素は増えやすくなります。その結果、代謝や修復がうまく回りにくくなり、老化が進みやすくなります。

そこでNADの材料を補って、体内のNADを支えられないかと注目されたのがNMNです。NADを増やしたいなら、NADそのものを飲めば良いと考えるかもしれませんが、NADは分子が大きく、そのままでは細胞の中では使いにくいものです。そのため材料の形で補って、体内でNADを作らせる方が現実的になります。

NMNの3つの効果(運動・睡眠・代謝)と、NMN(効率化)とPQQ(新生)の役割の違い

運動機能への影響

実際に、人間で現在確認されている、具体的な効果の一つが運動機能への影響です。人への試験では中高年がNMNを摂取したことで歩行速度や距離に改善が見られた報告があります。歩行速度は健康状態や将来の自立度と関係が深い指標として知られています。

なぜなら年齢を重ねると筋力や自給力、全身の代謝機能が落ちやすくなるため、歩行能力の低下は体全体の衰えのサインとして見られることが多いからです。NMNで細胞内のNADが増えることで、筋肉のエネルギー代謝や働きが支えられたと考えられています。

睡眠や体内時計への影響

NADは、体内時計の調節にも関わっており、年齢と共にNADが減ると睡眠リズムも乱れやすくなる可能性があります。65歳以上を対象にした研究では、NMNを12週間摂ったことで、特に午後摂取のグループで日中の眠気や疲労感の改善が報告されています。

NMNは、体内時計やエネルギー代謝を支えることで、生活リズムを整える助けになる可能性があります。また睡眠が改善されば、脳のゴミを掃除したり、細胞を修復したりする機能も高まります。

代謝機能の改善

代謝機能の改善には、筋肉のインスリン感受性への影響が挙げられます。食事で取った糖は、血液を通って運ばれますが、筋肉はその糖をたくさん使う重要な組織です。インスリン感受性が高いことは、その糖を筋肉がスムーズに取り込みやすい状態を指します。

逆に、感受性が低いと糖がうまく処理されにくくなり、それが続くと血糖コントロールの悪化につながりやすいことになります。アメリカの研究では、糖代謝に課題を抱える太り気味の閉経後女性を対象に、NMNを10週間摂ってもらったところ、NMNを摂ったグループでは、筋肉のインスリン感受性の改善が報告されています。

つまり、筋肉が糖を取り込みやすくなった可能性が示されています。NMNでNAD代謝が支えられることで、筋肉のエネルギー代謝や機能に良い影響が出たと考えられています。ただしNMNは筋肉の糖の摂り込み機能を正常な状態に近づけるものであって、摂取したカロリーをなかったことにする魔法の薬ではありません。

NMNで若返り!?

NMNが人気になった若返り効果の根拠は、ほとんどがマウスを用いた基礎研究のデータです。この発端は、ハーバード大学などの研究機関が行った動物実験の劇的な成果にあります。

老齢のマウスにNMNを投与したところ、運動能力が劇的に上がり、代謝が改善し、さらには血管やミトコンドリアの機能で明らかな若返りが見られたという報告が次々と示されました。つまり加齢でエネルギーを作れなくなっていた細胞が、NMNから作られたNADにより再び活発に働き始めました。

それだけ目に見えて効果が出たことで、特にサプリ業界がこぞって使ったのが人間に換算すると60歳が20 歳になったような変化というキャッチーな表現でした。確かに、マウスの寿命や身体機能の改善率を人間のスケールに当てはめればそういう計算になるかも知れませんが、マウスと人間では体のサイズも代謝のスピードも寿命の長さも全く違います。つまりマウスでこれだけ若ったから人間でも同じように若えるとは限りません。

しかしながら、ハーバード大学のマウス実験自体が意味のないものでは決してなく、この研究は科学の世界では、常識が大きく変わることになりました。これまで老化は時間が経てば自然に衰えていく避けられない現象だと考えられていましたが、NMNの研究によって老化にはNADの減少があり、それを補えば治療可能なプロセスかもしれないという新しい認識が生まれることになっています。

ちなみに、有名なマウス研究では体重1kgあたり100mgから300mg前後のNMNが使われていましたが、ざっくり人間に換算すると体重60kgなら大体1日500mgから1.5g前後が目安になります。これはサプリとしてはかなり多めであり、マウス研究のインパクトと人間で実際に試せる量の間には、まだギャップがあることになります。

またサプリの過剰摂取は、肝臓や腎臓などの代謝期間に負担をかけるリスクがあり、長期間飲み続けた場合の安全性は人間ではまだ証明されていません。そのため推奨量の250mgでは、マウスのような劇的な効果は保証されていませんが、全く効果が無いというわけではありません。

250mg程度のNMNを摂取すれば、人間の体でも血中のNADレベルがしっかり上昇することは、複数の人研究で確認されています。ただしNAD上がって一部の機能が改善する兆候は見えたとしても、それが魔法のように顔のシワを消し去ったり、人間の寿命を何十年も伸ばしたりするような劇的な若返りデータは得られていません。

人を対象にした研究は、まだ歴史が浅く、参加人数が数十人規模と少なかったり、追跡期間が数週間から数ヶ月と短かったりするため、最終的な結論を出す段階にはありません。また若い健康な人がNMNを飲んでも効果を体感できない可能性が高いです。そもそも10代から20代の健康な人の体の中では、細胞を動かすための燃料であるNADが十分に作られています。そのため年齢を感じるようになった人が試すべきものです。

一方で肥満や睡眠不足、持続的なストレスなどによって体の中のあちこちで、慢性炎症が起きると免疫細胞がそれに反応して、CD38という酵素を大量に分泌するようになります。そしてCD38は活動するためにNAD をものすごい勢いで消費してしまいます。

つまりNMNの効果を最大限に引き出すために、まずは体の慢性炎症を沈めるのが最優先になります。あくまでもNMNは、普段の生活習慣の土台がしっかりした上で、さらに上を目指すためのサポート役になります。

活性酸素という落とし穴

しかし、NMNを飲めば万事解決というわけにはいきません。エネルギー産生には、避けられない副産物が生じるからです。工場で製品を製造するときに排気ガスや廃水が出るように、ミトコンドリアがATPを作る過程でも、活性酸素が発生します。この活性酸素がミトコンドリア自体にダメージを与え、徐々に機能を低下させてしまうのです。

つまりNMNで電子伝達系を活発に回せば回すほど、活性酸素も多く発生し、ミトコンドリアの老朽化も進むというジレンマがあります。これを補うために、NMNと一緒にビタミンCなどの抗酸化成分を摂取することが大事ですが、それでも活性酸素によるダメージや、加齢に伴うミトコンドリアの減少を完全に止めることはできません。

そこで最近注目されているのが、PQQ(ピロロキノリンキノン)です。NMNがすでにあるミトコンドリアの働きを高める成分だとすれば、PQQはミトコンドリア自体を新たに生み出す(ミトコンドリア新生)という役割を担います。

  • 加齢によって減少したミトコンドリアの数を増やす
  • 活性酸素によってダメージを受けたミトコンドリアを新しいものへと入れ替える

つまりPQQは、老朽化した工場設備そのものをリニューアルするイメージです。NMNが既存の設備を効率化するのに対し、PQQは設備ごと新しくしてくれるわけです。

老化細胞という別の問題

ミトコンドリアのエネルギー低下とは別に、老化には「老化細胞」という問題もあります。老化細胞とは、分裂・機能が止まってしまった細胞のことで、体内に蓄積するとまわりの健康な細胞にも悪影響を与え、組織全体の機能を低下させることがわかっています。これも老化・不調の一因です。

最近の研究では、金水引き(キンミズヒキ)由来のアグリコンという成分がこの老化細胞を除去する可能性を示すデータも出てきています。まだ解明途中の段階ではありますが、老化のアプローチとして注目されている分野の一つです。

「個体老化」と「細胞老化」は別物

生命科学では、体全体の老化(個体老化=エイジング)と、個々の細胞の老化(細胞老化=セネッセンス)は明確に区別されています。

人間の多くの細胞(腸の一部は数日、皮膚の表皮は1〜4か月など)は常に入れ替わっています。この新しい細胞の供給源が幹細胞です。しかし加齢とともに幹細胞の分裂能力が低下し(幹細胞の枯渇)、新しい細胞が作れなくなったり質が落ちたりすることで、体全体の老化へとつながっていきます。

細胞は数十回の分裂を繰り返すと分裂能力を失い、「老化細胞」となります。この老化細胞が蓄積することが体全体の老化を招く一因と考えられています。ただし、老化細胞だけを選択的に除去する技術はまだ実用化されていません。

何れにせよ生活習慣が土台

どれほど優れた成分も、生活習慣の乱れがあれば効果は半減します。老化細胞を増やさないためにも、ミトコンドリアを守るためにも、次の基本習慣を整えることが大前提です。

  • ストレスを減らす:慢性的なストレスは活性酸素を増やし、細胞老化を加速させます
  • 適度な運動をする:運動はミトコンドリアの機能維持・増加に直接関与します
  • 食生活を整える:偏った食事は細胞へのエネルギー供給を妨げます
  • 紫外線対策をする:紫外線は活性酸素を大量に発生させ、皮膚の老化細胞を増やします

疲れやすい、回復に時間がかかる、肌のくすみやたるみが気になるなど、こうした体の不調は、単なる「年のせい」ではなく、細胞レベルのエネルギー不足や老化細胞の蓄積からくるSOS信号かもしれません。病気になってから対処するのではなく、細胞レベルからエネルギーを高めていくという考え方が、アンチエイジングのトレンドです。そしてその土台となる生活習慣を整えることが、何よりも大切です。

今から始めるエイジングケア

紫外線対策は毎日が勝負

紫外線にはA波とB波の2種類があります。

  • B:表面がジリジリ焼けるような感覚を引き起こす
  • A波:熱さを感じないが、ガラスや薄いカーテンを透過して皮膚の奥まで到達し、コラーゲンを破壊してたるみや深いシワの原因になる

「家の中にいるから大丈夫」は誤りです。窓から入るA波にも注意が必要で、外出しない日でもスキンケアの最後に日焼け止めを塗ることが基本です。

また、SPF値は「強さ」ではなく「持続時間」の目安。塗る量が少なければ意味がないため、顔に指半分ほどの量(約0.6g)をしっかり塗ることを意識してください。メイク上からは「スプレータイプ」や「パウダータイプ」で塗り直しができます。また技術の進化により、最新の日焼け止めは使用感が格段に向上しています。開封後は1年以内に使い切るのが目安です。

乾燥を防ぐ「先回り保湿」

乾燥はバリア機能の低下→ターンオーバーの乱れという連鎖を引き起こします。乾燥してから対処するのではなく、乾燥する前に保湿を重ねる意識が重要です。

  • 日中エアコンで乾燥を感じたら、セラミド配合のスプレーや少量のクリームで部分補湿
  • クリームをさっと塗ったあとスポンジでなじませると、メイク直しと保湿が同時にできる
  • 夜のスキンケアでは目もとや口もとなど乾燥しやすいパーツにアイクリームを必ず使用

アイクリームは20代後半から始めることをおすすめします。選ぶ際はシワ改善効果のあるレチノール・ライスパワーNo.11・シアトリド・ニールワンなどの成分が配合されたものが効果的です。

目もと・口もと・おでこ——「動くパーツ」の表情ぐせに注意

表情ぐせによる繰り返しの動きが、シワの深刻化につながります。特に気をつけたいのが次の2点です。

おでこを使って目を開ける癖
眉毛を上げておでこで目を開けると、額に横ジワができやすくなります。目の奥の筋肉を使い、おでこを動かさずに目を開けるよう意識しましょう。

眉間にシワを寄せる癖
困った顔や驚いた顔を表現するとき、眉間や額にシワを寄せるのではなく、目や口元の表情で感情を表現することを心がけることで、シワの形成を抑えられます。

抗酸化ケアで老化の火種を消す

紫外線・乾燥・摩擦などのダメージは肌の「酸化(さびつき)」を招きます。この酸化を抑えるのが抗酸化ケアです。

スキンケアで意識したい成分はグルタチオン・ビタミンCなど。「エイジングケア」と記載された製品には抗酸化成分が含まれていることが多いため、成分名が覚えられない場合はそのような表記を目安にしてください。

インナーケアとしては、ビタミンA・C・E・アスタキサンチン・ポリフェノールを食事から摂取することも有効です。難しければ、旬の野菜や果物を皮ごと丸ごと食べる習慣から始めるのがおすすめです。

季節・環境の変化に合わせてケアを変える

「一年中同じスキンケア」は肌の変化を見落とすリスクがあります。

  • 冬の乾燥期:オールインワンジェルからクリームに切り替えるなど油分を補強
  • 花粉の季節:敏感になっている肌にシートマスクは負担になる場合も
  • 部分的な乾燥:目もとだけリッチなアイクリームに変えるなど、パーツ別に対応

「これでなければダメ」という固定観念を手放し、肌の状態を日々観察しながら柔軟に調整することがスキンケアの本質です。

最も有効な見た目の老化対策は「紫外線ケア」

外見の老化を防ぐうえで最も科学的根拠があるのは、やはり紫外線対策です。紫外線は夏だけでなく、5月の時点でもUVBはピークの約8割に達しており、1年を通じた継続的なケアが必要です。

  • 短時間の外出でも日焼け止めを塗る習慣をつける
  • SPF(UVBへの効果)とPA(UVAへの効果)の値を確認して用途・肌質に合ったものを選ぶ
  • ただし室内にこもりすぎるとビタミンDが不足するため、適度な日光浴とのバランスが重要

なお、健康習慣は「世間で良いとされているから」ではなく、自分の体で試して合うかどうかを確かめるという姿勢が大切です。

本コラムの監修】

恵比寿院長

HARRNY 院長/鍼灸師 菊地明子

・経歴
大学卒業後、美容の世界に入り、セラピストへ。豊富な美容知識や実務経験を活かし、その後、10年間は大手企業内講師として美容部員やエステシャンの育成、サロン店舗運営のサポートを行う。現在は、セラピスト、エステティシャン、美容カウンセラー、鍼灸師の経歴を活かし、お肌とこころと身体のトータルビューティースタイルを提案。表面だけでなく根本からのケアとして、老けない生活についてのコーチングを行う。

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