名前のない猫と不機嫌な感情

    名前のない猫と不機嫌な感情

    名前のない猫という絵本をご存知でしょうか。主人公の猫は名前がなく、名前が欲しくてたまりませんでした。靴屋の猫にも、本屋の猫にも、街中のすべての猫に名前があるのに自分だけは名前がなかったのです。主人公の猫は、名前が欲しくて町中を自分の名前を探して歩き回りましたがどれもしっくりきません。汚い野良猫だと追い払われて孤独を感じていると一人の少女が猫に声をかけました。その時主人公の猫は気づいたんです。欲しかったのは名前ではなく名前を呼んでくれる人なんだと。

    名前がない状態というのは自分が存在しているのか、していないのか分からない宙ぶらりんな状態であると言えます。主人公の猫のように、私たちの日々の感情の中には、複雑で微妙で何とも名づけいいものがあります。自分でも理由が分からずなんとなくむしゃくしゃする、気分が晴れずにネガティブに考えてしまう、そんな名前のない感情を抱え込んでしまう日はありませんか。そんな 時、多くの人が不機嫌になってしまいます。人に嫌味を言ったり、汚い言葉を吐いてしまう方もいらっしゃることでしょう。

    そのような行動の根底には名前のない感情のわだかまりが存在しているのです。主人公の猫と同じように、そのような皆さんの名前のない感情は誰かに呼んでもらえるのを待っています。そして自分の感情に気づき、その名前を呼んであげられるのは自分だけです。そこで是非とも自分は不機嫌だなぁと気づいた時は、その感情に名前を与えてあげましょう。

    例えば仕事が滞っていて焦っているなと分かったら、その感情に仕事をムリムリ症候群というユーモアに富んだ名前をつけてあげる効果的です。そうやって面白い名前をつけてあげるだけで不機嫌な感情はどこかに飛んで行ってしまうものです。自分で自分をしっかりと見つめて、自分が今抱えている不機嫌の現状がわかると対処法も自ずと見えてきます。対処法が見えれば、それだけでイライラや不安は小さくなっていくでしょう。

    私たちは生きていく中で楽しかったり、嬉しかったりといったプラスの感情だけを持って生きられるわけではありません。当然悲しかったり、悔しかったり 妬ましかったりといったマイナスの感情に支配されてしまうこともあります。そのようなマイナスの感情を否定せずに、自分は今そういう状態なんだなと引き受けてあげるだけで構いません。名前のない猫のように不機嫌な感情の存在に気づいてあげるだけで、その感情は救われます。

    心の動きを理解する

    人は多かれ少なかれ、イライラしたり、焦ったり、不満を持ったり、後悔をしたりとこうした感情を抱いて日々生きています。そんな時、人は一般に外の世界に答えを求めます。新しい何かを手に入れれば、その問題は解決できると思うからです。

    例えば上手くいかない時に限って腹の立つ出来事が起こる、イライラしていると小さなことでも目につきますし、いつもより余計に腹が立ちます。しかも時間が経っても何かと思い出しやすかったり、思い出すことでまた腹が立ちます。このように絶え間なく動き続ける心が人間の悩みを作り出しています。この心の動きを止めない限り悩みは一向に解消されません。そしてこの心の動きを止めるためには、心の動きを理解することが欠かせません。

    心が動く仕組み

    心が動く仕組みとは次の5段階です。

    • 心のもとである意識が生まれる
    • 外からの刺激になれる
    • 刺激に反応して感情が生まれる
    • 感情が高ぶり記憶に刻まれる
    • 智慧の反応が継続した状態になる

    意識とは心の中のエネルギーのようなもので、意識を上手に使いこなせば生きる意欲ややるぞというモチベーションにもなります。ですが意識の少し厄介なところは、いつも刺激を求め続けていることです。それが満たされなければ不満や失望という感情に終わってしまうこともあります。

    そして外からの刺激に触れると刺激に反応して感情が生まれる段階は、ほぼ同じタイミングで発生します。 刺激に触れることで、それに反応して感情が生まれるからです。

    その刺激によって生まれた感情が次第に強くなり、衝動や欲求と呼ばれる状態になります。また高ぶった感情は記憶にも残りやすくなります。刺激への反応が継続した状態になる、これは言い換えれば執着です。ブッダはこれを燃える炎に例えていました。意識が一度刺激に反応すると心は別の刺激にも反応してしまいます。

    例えば一度怒りで反応すれば別のことにも腹が立ってきたり、誰かを責める理由を考え始めたりするといった具合です。まるで炎のように別の材料を探し出しては、その火を大きくしていきます。

    人間の心はこの5段階の心の動きを四六時中繰り返しています。つまりこれが 人間の日常であり、人生とも言えます。この心の炎を燃やし続けていることこそ、私たちの苦しみの元凶ですが、多くの人はそのことには気がつきません。そして自分はついていないとか、不幸だと自分の心ではなく外だけを見て反応しています。

    例えば、子供はまだ過去を後悔するほど長く生きていませんし、未来のこともよくわかっていません。目の前のことを、今日を体験するだけで心が十分に満たされます。もしそんな子供のような心を取り戻すことができれば、もう無駄なことを考えることはありません。毎日が新しく体験することを全てが面白く 感じられ、人生もより価値のあるものになります。

    そんな心を手に入れるための心の動きを止めるためには、まずは自分の心の動きに気付くことが大切です。そして自分の心の状態を正しく理解するため、苦しみの原因を突き止め、その原因を取り除くことです。その方法がラベリングです。

    ラベリングとは言葉で確認することを意味します。例えば歩いている時に私は歩いていると意識する、パソコンで作業を始めるときは作業を始めますと確認するなど、今自分がしていることやろうとしていることを、言葉を使って客観的に確認することです。自分の姿を外から客観的に確認する方法を心にも応用していきましょう。

    心に応用する際、使うレベルは3つしかありません。それは妄想、貪欲、怒りです。なぜなら心に浮かぶ思いを反応の種類として分けようとすると、この3つに集約されます。どんな複雑そうに思える悩みでも、結局その悩みを作っているのはこの3つです。

    妄想

    まずは一つ目の妄想ですが、これを最初に取り上げるのには大きな理由があります。それは人間の悩みの99%は妄想が作っているということです。つまり妄想こそが人間の苦しみを長引かせる最大の原因だと言えます。そもそも妄想とは、何かを脳裏に思い浮かべている状態で、頭の中に映像が浮かんだりで考えたり、過去や未来に思いを馳せるのも形は違えど、全て妄想になります。

    ここで洗い流すべきなのは、それ以外のもの、つまり目的につながらない無意味な妄想です。例えば思い出しても不快な気分になるだけの過去を思い出す、悪いことが起こるかもと想像して不安になったり、緊張したりすると言うことです。どちらも考えても仕方のないことです。つまり常に自分の心に目を向け、これはどんな心の状態だろう、これってもしかしたら妄想と自分に問いかけ続けることが心の動きを止める第一歩になります。

    貪欲

    2つ目は貪欲です。貪欲とは過剰な要求に駆られた心の状態のことを言います。いわゆる期待しすぎ、求めすぎといったことです。そして貪欲は妄想から作り出されています。例えば親の愛情を十分に受けられなかった人は、その過去が作る親から愛されたかったという貪欲に駆られます。またあったらいいなという物欲なども妄想からくる欲求です。

    そして貪欲が厄介なのは、決して満足することがないことです。 そのため、ここでも常に自分の心に目を向け、妄想ではと自分に問いかけ続けることが心の動きを止めることにつながります。

    怒り

    怒りとは迂回を感じている心の状態です。この場合、無理に怒りを抑え込もうとするより、怒りは役に立たないことを知ることが肝心です。また人間の心は 怒りを感じると怒りを正当化する心の動きも生じやすいため注意しましょう。怒りの感情が湧いた時、自分は間違ってない、自分は正しいと思うことは経験上あると思います。こうなると他人を傷つけるだけでなく、自分も不満によって、さらに苦しむことになります。もっと自分の幸せにつながることに専念すべきです。

    思想家・中村天風師の言葉

    心というものは厳粛に言うと、

    生きるために使うので、
    使われるために
    あるんじゃないんだから、
    これ忘れちゃだめだよ

    なぜ私たちの心はこんなにも周りの物事に振り回されてしまうのでしょうか。それは必要のない外の物事に、つい反応をしてしまうことです。具体的には、前の人が邪魔でついイラっとしてしまったり、思わずスマホに手が伸びたり、嫌な過去を思い出したりするようなことです。こんな風に全ての物事にいちいち反応していたら心が落ち着くはずもありません。それどころか集中して考えることもできないでしょう。

    私たちが1日に反応しているものの中で、そのうち一体どれだけのものが意味のある反応なのでしょう。特に日々たくさんの情報に囲まれている現代では、毎日どれほどの意味のない反応をしてしまっているのか見直す時期に来ているのかもしれません。

    心を立て直す方法

    人生で不本意な出来事が起きた時、引き起こされる感情の主なものには、後悔、未練、落ち込みがあります。

    後悔

    後悔には、物事に対する2つの反応が隠れています。一つは起きてしまった出来事への怒りです。どうしてこんなことにという、その出来事が許せないと思う感情がずっと残っています。そしてその怒りが解消されないまま過去を振り返ると、また怒りがこみ上げてきます。またあんなことが起こらなかったら、もっと自分がこうしていたらと、変えられない過去を覆そうとする妄想も生まれてきます。つまり後悔とは、怒りと妄想でできているものと言えます。とすれば怒りを消すか、妄想を消すかすれば、その後悔からは卒業できるということになります。

    まず過去に対して怒っても仕方がない、この先自分ができることをやっていくしかないと考えて怒りを手放してください。すると妄想まで和らいでいきます。次にもう過去のことだ今となってはもはや存在しない妄想だと思いましょう。すると記憶も薄れ、その記憶に対する怒りもやがて消えていくはずです。そして最終的に過去を思い出さなくなった、もしくは思い出しても怒りで反応しなくなったという状態になれば、もうその後悔からは卒業しています。

    未練

    あの時はあれをしたかったな、今からでもできるかなと、ふと過去を思うことはないでしょうか。過去を思う感情というと一つ目の後悔とも似ているように感じられます。では後悔と未練は何が違うのでしょうか。

    後悔は、怒りと妄想でできている一方で、未練は怒りではなく、まだ願いが残った状態と言えます。その叶わなかった願いを妄想し、まだ思い続けています。つまり未練は、欲求と妄想で作られていると言えます。同じくここでも妄想を消す必要があります。

    過去を妄想しているという自分の心の状態に気づき、妄想していたって始まらないんだと思い直しましょう。ただ未練の場合はこれだけで終わりではありません。未練の場合はまだ自分の願いが叶う可能性を捨てきっていない状態であるため、その願いは今からでも叶えられるものなのか、それとももう叶えるのは無理なことなのか、ここをはっきり答えを出す必要があります。その答えを導く方法が、正しい思考という考え方です。

    この正しい思考は、方向性を確かめる方法を考えるという大きく二つの内容に分けることができます。正しい思考に基づいて未練について考える場合、抱えている欲求や願いが方向性に当たります。その方向性に向かうためにはどんな方法なら実現が可能になるのかということを考えます。このような正しい思考を辿らず、あーだったらこうだったらと妄想して不満を持っているだけでは意味のない思考でしかありません。

    ですが願いや欲求を叶える方法を考え始めた時点で未来は劇的に変わっていくのではないでしょうか。そしてこのような具体的にできることや、実現可能な方法を考える習慣が身についていけたら、ダラダラと引きずって苦しむことも減っていくはずです。

    落ち込み

    何かに失敗して気分が落ち込む自信をなくしてしまったと思うことは誰しもあります。動揺とは実は自分が自分をどう判断しているのかということに深く関係しています。人の心には人から認められたいという承認欲があります。その承認欲が日々の中で自分は評価されているんだ、うまくいっているんだという自分に都合のいい判断を作り出しています。

    そんな承認欲が作った判断に、時々大きなダメージを与えるものがあります。それが失敗です。すると承認欲が作り上げてきた自身やプライドなどが強ければ強いほど、その分強い反応が生まれてしまいます。自信をなくしてしまった、もう立ち直れないと思うだけでなく。反論したり、逆ギレしてしまう人もいる くらいです。

    そもそも承認欲が作り出してきた判断とは現実のものでしょうか。承認欲でできた評価されたい、うまくいっているという期待も判断も、いずれも人の頭の中にしかない妄想です。後悔や未練と同じように、ここでも妄想に反応しているだけだということに気づいてください。

    そして、すでに起きてしまった失敗をどう捉えるかが肝心です。失敗した人には2つのコースが用意されています。まず一つ目はそのまま承認欲にしがみついて、妄想つまり自分に都合のいい判断を守り抜こうとする道です。この場合は、こんなはずじゃなかったんだ、自分は本当はできる人間なんだという思いにとらわれて落ち込むだけではなく、絶望感すら感じてしまうかもしれません。失敗の原因も他人にだけ求めているので問題は解決されませんし、自分の成長も望めません。

    もう一つの道が正しい思考です。つまり方向性を確認し、今からできる方法を実行に移すことです。そして何ができていれば成功と言えるのかというゴールを設定しましょう。そしてやるべきことに専念することで、気持ちも落ち着いていきます。このようにいざという時は必要以上に自分に執着せず正しい思考を実践することです。

    心の健康を保つために忘れる

    モヤモヤを忘れる

    心の健康を保つために大切なことは、昨日までのモヤモヤを忘れるということです。ああすればよかった、こうすればよかったと、気がつけば過去の出来事に立ち戻り、堂々巡りばかりしてしまいます。

    こんなことが起こってしまうのは、他でもなく私たちの心というのは忘れるのが下手くそだからです。心というのは不器用であり、このようなモヤモヤは忘れようとすればするほどどんどん大きくなっていってしまうものです。

    そこでどうしても忘れたいのに忘れられないことがある時は、心だけではなくて体の働きにも頼ってほしいです。私たちがモヤモヤしている時、大抵体はうつむき加減で視線も下を向いています。そんな時は一度姿勢を正して、全身のストレッチをしてみましょう。

    万歳をするように両腕を上げてを伸ばし、胸を大きく開く、この時吸い込んだ息で胸を膨らませて胸式呼吸をしましょう。一般的に心を落ち着けるためには 腹式呼吸がいいと言われていますが、胸式呼吸では自律神経のうち交感神経が 刺激されるため、気持ちが明るくなりやる気が出てチャレンジ精神が湧いてきます。特に胸式呼ストレッチは朝日を浴びながら行うことがおすすめです。

    ネガティブワードを忘れる

    どうせ私なんかとかもうダメだと言ったネガティブワードが口癖になってしまっている人はいませんか。人を癒し、勇気づけるのも言葉であるならば、自分や他人を傷つけ貶めるのもまた言葉です。心の健康を維持するためにぜひとも全ての言葉をポジティブワードに言い換えてみましょう。この世界にポジティブワードに言い換えられない言葉は一つもありません。

    辛いことがあってもうダメだと追い込まれても、自分には逃げる自由もあれば、立ち向かう自由もある、それを選ぶのは自分だと言い換えてみてください。そのように、まだ選択肢があるということを自覚すれば、もう一度腹をくくり直すことができるはずです。

    私たちが発する言葉というのは、私たちの未来を作る言葉でもあります。発する言葉がネガティブな言葉であればネガティブな未来しか待っていません。そんなネガティブな言葉は忘れてしまっても良いのです。日常をポジティブな言葉でいっぱいにすることによって、未来もまたポジティブになっていくのです。

    そして世の中では、ポジティブ思考の重要性が強調されています。例えばポジティブ心理学は様々なメリットがポジティブ思考によってもたらされるということを明らかになっています。しかしそうは言ってもポジティブになろうと頭で考えているだけではなかなか難しいというのが現実です。

    そこで、まずはポジティブなワードを使いまくることを実践してみてください。ポジティブなワードを使い作っているうちに自然と思考もどんどんポジティブに変わっていけることでしょう。

    放っておく力

    自分で考えて判断し、行動する。他人のすることや言うこと、必要のない情報や知識を上手に放っておける人こそ現代を軽やかに楽しく生きていける人です。

    どうにもならないことや仕方のないこと、終わってしまった過去のことなどを上手に放っておければ、どれだけ毎日が快適に過ごせるようになるでしょうか。

    世の中の大半の人はどうにもならないこと、自分ではコントロールできないことにあまりにも無駄にエネルギーを費やしています。例えば他人を変えようと 頑張ってみたり、過去のことを後悔したり、未来のことをくよくよ悩んで心配したりしています。このようなことに大切な心やエネルギーを費やす代わりに、今やっていること、そしてあなたに今できることに全力を傾けるそんな生き方ができれば、あなたの毎日はどれほど変わるでしょうか。自分にとって大切でないこと、どうしようもないことは放っておく、そして自分ができること、目の前のことに集中する、そんな生き方を1日1日と毎日積み重ねていくことができれば確実に幸せへと向かっていくことができるでしょう。

    しかし、放っておくという言葉にあまり良いイメージを持たれている人いないと思います。例えば物事を途中で放り投げるとか、やんなきゃいけないことを放置するとか、そういったことをイメージし、無責任のように感じるかも知れません。でも現代では、放っておいた方が良いことがたくさんあり、非常に膨大な情報に晒され、SNSの発達によって人間関係があまりにも複雑になりすぎたりしていて全てにきめ細かく対応するのはもはや不可能と言える時代です。

    もっとドライに考える

    最近自分のことを全部理解して欲しいと願望の強い人が増えています。例えば家族でさえ100%自分のことを理解してくれるはずだというのも大きな間違いです。家族だって一人一人性格も、好みも、価値観も、考え方もすべて同じではありません。100%分かり合おうとすればするほど、どこかに無理が生じ、逆に不和が生じてしまいます。重要なのは家族といえども違う人間であるとしっかり割り切ること、その上で互いの生き方を尊重し合うことです。

    例えば、熟年離婚という言葉がありますが、夫婦は長年連れ添ったからといって理解が深まるものでもありません。夫婦だって完璧に分かり合えなくて当然です。どうしても理解できない部分は無理して合わせようとせず放っておけばよい、それこそが夫婦円満の一番の秘訣です。

    また、職場の人間関係もドライでOKです。職場の人間関係に迂闊に深入りしないことが重要です。確かに昔の職場では、濃い人間関係が存在していました。例えば新年の挨拶などの儀礼的な付き合いから運動会や慰安旅行などの行事、お酒を飲みながらのプライベートな部分に踏み込んでの会合などがありました。ですが今の若い人であれば煩わしい人間関係はしんどくて逃げ出したくなります。実際に職場では人のプライベートに立ち入らないことを基本にした方が人間関係は断然うまくいくものです。特に今はドライであることが求められる時代で、関係性を強くしすぎるとパワハラ、モラハラ、セクハラなどのハラスメントが生じないとも限りません。特に職場の人間関係は、極めて特殊な人間関係であり、真っ先に利害関係が発生する関係でもあります。

    自分の選択は全て正しい

    何かを始める前に、こうすればいいかなとか、ああすればいいかなと一体どの選択肢を選ぶのが正解かななどとずっと悶々と考えている人がいますが、実はそれにはほとんど意味はありません。なぜならば人生はやってみなきゃ分からないことの連続であり、そもそも正解は一つではないからです。

    イギリスの詩人のルイスキャロルに次のような言葉があります。「どっちへ行きたいかわからなければ、どっちの道へ行ったって対して違いはない」。

    選択肢のどれを選んだとしても大して変わらないし、選んだ選択肢で良い結果が出るように頑張ることがもっとも大事なことです。これをやろうと一度決めたことをどんな風に良い方向に進めていけば良いのかを考えるのみです。

    そうしていれば自ずと結果はついてくるでしょう。つまりどれが正解かを最初 から考えるのではなく、選んだことを正解にするように努力する、この考え方は人生全てにおいて非常に重要な考えです。

    ご縁に素直に従ってみる

    人生に行き詰まりを感じているという人におすすめなのが、ご縁に素直に従うということです。そうすれば心が軽くなり、あなたの人生はうまく回り始めることでしょう。ご縁という言葉は人間関係でよく使われますが、仕事や日々の細々としたことも全てご縁によるものです。私たちはご縁に導かれて行動することで人生うまくいくようにできています。

    実際、私たちが誰と出会うのか、どんな仕事に就くのか、人生において何が起こるのかといったことはほぼ全て偶然によって決まると言っても過言ではありません。私たちにコントロールできない部分がたくさんあり、ご縁だと思って素直に従ってみる、こうすることで人生はうまく回り始めるでしょう。

    逆に、誰かと何かとうまくいかない場合は、縁がなかったということです。単純に縁がなかっただけだと思ってスパッと諦めることも時には重要な姿勢です。そう考えると心が軽くなり、別にあなたが悪いわけではないし、相手が悪いわけでもない。ただ単に縁がなかったそれだけのことです。逆に、ご縁に逆らって無理やり何かを推し進めたところでうまくはいかないでしょう。

    例えば、5年間付き合っていて結婚まで真剣に考えていた彼氏・彼女に突然別れを告げられる。そんな時は背中を追いかけたくなるかもしれません。ですが去る者の背中を追っかけたところで、それが報われたことがあるでしょうか。私たちは他人を変えることができないんです。他人があなたのもとを去るということを考えて決断したわけですから、それを簡単に変えることはできません。一時的に無理やり引き止めたとしても、いずれその人はあなたの元から再び去っていってしまうでしょう。だから縁がなかったと思って見送るしかありません。去るものを追わず、同時に来るもの拒まずという姿勢も重要です。縁というのは意図的にコントロールできるものではなく、言うなれば自然の巡り合わせですから、あれやこれや深く考えず、去るものを追わず同時に来るもの拒まずという姿勢を貫けば良いのです。

    心配ごと先取りせず、分からないなら考えない

    私たちは毎日たくさんの不安を抱えながら生きています。その多くが将来に対する不安でしょう。しかし不安が生じる根っこには、いくら考えたとしても分かるはずがないことを分かろうとする私たちの欲望があります。その最たるものが未来への漠然とした不安です。至極当たり前のことを言いますが未来は予測不可能なものです。

    100%に近い確率で起こると思っていたことが実際は起こらなかったり、逆に120%ありえないと思っていたことが起こったり、どれだけ多くのデータを揃えどんなに時間をかけて精密に考えたとしても未来を完全に予測することはできません。もちろん未来に何か起こりそうな心配事があるのであれば、今打てる手を打っとくべきだとは思います。しかし何が起こるか分からないのであれば、いたずらに未来のことを心配しても意味はありません。未来に対する不安を考えても分からない、答えが出ないのであればもういっそ何も考えないということが重要です。

    そして今、目の前にあることに自分の持っているエネルギーの全てを注ぐということが極めて重要な生き方です。多くの人は、未来にこんなことが起こったらどうしようと未来の不安を考えることばかりに大切なエネルギーを使っています。その不安を消す、あるいは薄める唯一の方法は、今目の前のことに集中し、あなた自身で未来を書き換えることです。何か問題が起きた時、その場その場で対処すれば良く、問題が起こってから必死に取り組めば良いのです。

    また、あの時あんなことをやってしまったんだろうとか、あの時ああしておけば未来はもっと良いものになっていたに違いない、こんな後悔をしている人がいらっしゃるかと思います。しかし過去のことをいくら後悔しても意味は全く ありません。後悔をやめて、検証するということがお勧めです。これが失敗を生かす一番の方法です。終わってしまったことはもう取り消せません。大事なのは思考の方向を後悔から検証へとシフトすることです。

    例えば、失敗したなと思うなら、じゃあ何がまずかったんだろう、何が原因で何が理由で失敗したんだろうと考え、プロセスを見直してみようといったふうに考えた瞬間、失敗した過去は未来に失敗しないための経験値に変わります。

    落としどころを見つける

    人間関係であれ何であれ、落としどころを見つけるという考え方は重要です。何もかも100人いたら100人、誰一人として同じ人はいません。人によって持っている価値観は大きく異なります。その価値観に良いも悪いもなければ、優劣もありません。お互いに深く尊重し合うべきものです。それなのに自分の価値観こそが正しいとばかりに他人の価値観を認めようとしない人が少なくありません。

    例えば、結婚しないのとか、つまらない仕事して人生楽しいの、みたいなことを言ってくる人も困ったことに結構います。そんな人に出会ったら、その人を反面教師にして注意するべきは、自分が人の価値観を否定したり、批判しないことです。自分の価値観とは違ったとしても、他人の価値観をしっかりと尊重し、よく理解することが重要です。相手の価値観を受け入れた上で、自分の価値観と照らし合わせながら落としどころを見つけることが重要です。

    誰だって良いところもあるし、悪いところもあります。ある程度の落としどころを見つけなければ人間関係を構築するのは難しいと言わざるを得ません。また人間関係だけでなく物事の全てにある程度の落としどころをつけることも重要でしょう。世の中に完璧なことは何一つなく、完璧に楽しい仕事もないですし、自分の理想としていることが全て実現できる100点 満点の人生だってありません。落としどころを見つけなければ、私たちは永遠に存在しない完璧という亡霊を追い求めて人生を彷徨う羽目になるでしょう。

    期待し過ぎない

    期待というは大きければ大きいほど、思うような結果が出なかった時のショックは大きくなってしまいます。誰かに期待していた時、これだけ期待してやったのにと相手に不満をぶつけたくもなるでしょう。ですが期待しすぎることにはデメリットしかありません。高すぎる期待は、現実とのギャップを生み出してしまいます。そのギャップによってストレスや不安を抱えることになります。

    期待と現実が一致しないと、私たちは大きく失望し、無力感を覚えてしまいます。また期待しすぎるとその期待が実現されない時、失望感が大きくなります。あらかじめ期待度を適切に保つことによって自分自身の心理的な安定を保つことが重要です。

    また、期待をしすぎると自分自身や他人に対して、いつも厳しい評価をする傾向にあります。そうなると思うような結果が出なかったり、他人が思うように動いてくれなかった時に、自分や相手を責めてしまうことになります。適度な期待であればパフォーマンスに良い影響を与えますが、過度な期待は心身を強く緊張させるためパフォーマンスに悪影響を及ぼしてしまうことが多くなります。そもそも人生は、期待した通りに物事が運ぶことなどそうそうあるものではないのだから、期待せずに上手くいけばラッキーぐらいに構えていた方が気が楽になります。

    夜の決断は放棄する

    夜の決断は信用しないことが大事です。夜は疲労が蓄積していたり、どうしても思考がネガティブに偏りがちな時間帯です。夜にした判断や決断というのは大抵ネガティブに偏っていたり、間違っているケースが多いです。判断や決断は、それが大事なものであればあるほど心身のエネルギーがマイナスに傾いている時にやってはいけません。夜は自制心を失う時間帯であり、大切な決断をするのにふさわしい時ではありません。感情をコントロールしにくく、ポジティブで積極的な答えを出しにくい時間帯です。

    自然の摂理で、心身の疲れと夜の闇は休憩を促すものです。意思決定疲労という言葉を聞いたことがあるでしょうか。これは1日の終わりになると意思決定の能力が低下するという概念です。人々が一日中多くの決断を下すと選択するたびに脳はどんどん疲れ、選択の質が徐々に低下することが分かっています。これは意思決定のプロセスが精神的エネルギーを消耗するからであり、例えば研究では、裁判官の決定は午前中に最も厳格に行われ、午後になるにつれて寛大になることが示されています。これは裁判官が意思決定疲労に陥っていることを示唆しています。

    よく眠って心身のエネルギーを充電し、夜に何かを決めるという習慣は、そもそもやめましょう。夜は様々な悩み事が頭に浮かんでくるかもしれませんが、とりあえず一旦保留にして、翌朝元気いっぱいの状態でもう1回考えようと思考を切り替えてさっさと寝て下さい。

    本コラムの監修】

    恵比寿院長

    HARRNY 院長/鍼灸師 菊地明子

    ・経歴
    大学卒業後、美容の世界に入り、セラピストへ。豊富な美容知識や実務経験を活かし、その後、10年間は大手企業内講師として美容部員やエステシャンの育成、サロン店舗運営のサポートを行う。現在は、セラピスト、エステティシャン、美容カウンセラー、鍼灸師の経歴を活かし、お肌とこころと身体のトータルビューティースタイルを提案。表面だけでなく根本からのケアとして、老けない生活についてのコーチングを行う。

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