
世の中には美容・健康に関する本が沢山あり、本によってまるっきり正反対なことを言っていることもあります。糖質制限をしているのに思ったほど体重が落ちない、ジムに通っているのに健康診断で引っかかったなど、健康思考に気つけて努力しているにも関わらず、なぜかあまり成果が得られない方が多くいらっしゃいます。健康的に痩せられる方法や病気や老化を予防する方法など試しても一向に効果が出ないのは、正しい知識と正しい情報に基づいた美容・健康法を選んでいない可能性があります。
正しい歩き方
歩くことは良いということで、美容・健康のために日常生活の中で歩くことを心掛けている方も多くいらっしゃると思います。しかし美容・健康効果は単に歩くだけでは得られません。特に歩数や時間を基準にしている場合、実は歩いた歩数や時間は美容・健康にあまり関係ありません。
なぜなら、筋トレを思い浮かべて頂くと分かりやすいですが、ある程度負荷がなければ筋肉は鍛えることはできません。例え1万歩を歩いたとしても、ゆっくり歩いていただけなら体に負荷はかかっていません。運動したと思っていてもそれは単に歩き疲れただけで、美容・健康にあまり効果がないのです。効果を得るためには体に負荷をかけた歩き方が重要で、歩き方には「速度」が大変重要な要素であり、欠けてしまうと効果が半減します。
「速度」を意識した歩き方の一つがインターバル早歩きです。この歩き方は、早歩き3分、ゆっくり歩き3分、これを1日5セット、週4日を目安に行う方法です。中高年の方々がこのインターバル早歩きを5ヶ月間行ったところ、体力年齢で10歳も若返ったという結果が報告されています。その他で効果的なのが、ややキツイと感じる速度で歩く方法があります。いずれにせよある程度負荷をかけることが大切になります。
また「姿勢」も歩き方に重要な要素です。体をしっかり使えていないと、猫背歩き、反り腰歩き、ガニ股歩きになっており、体全体の筋肉を正しく使うように姿勢にも注意しましょう。
正しいアンチエイジング
外見や美容に関するアンチエイジングは、その正確なメカニズムは良く分かっていません。老化は人によって進み方が異なります。だだし老化は病気であると捉える考え方は、医学会では常識になりつつあります。老化は原因を突き止めて、ある程度は予防や対策ができる時代になってきています。
老化の原因は「酸化」「糖化」「慢性炎症」の3つです。特に「酸化」と「糖化」は、私たちの細胞の劣化の引き金になっていると考えられています。
私たちの体に欠かせない「酸素」は、その一部が「活性酸素」に変化して、細胞の主な成分であるタンパク質を傷つけ、劣化させてしまいます。次に「糖化」は、体の中でタンパク質がブドウ糖に結合して起こる反応であり、この反応により「終末糖化産物(AGE)」がつくられ、これが肌のシミやシワの最大の原因になります。また見た目の問題だけでなく様々な病気の原因になります。
一方で「酸化」と「糖化」は、細胞の劣化を引き起こすだけでなく、「慢性炎症」を引き起こし、様々な病気や不調の原因なってしまいます。
これら原因の対策には、食生活と運動の習慣を変えること以外あり得ません。「酸化」を防ぐ食べ物は、ビタミンA,C,Eなどの抗酸化ビタミンやポリフェノール、カロテノイドといった成分を含む食品です。具体的には、人参、かぼちゃ、ピーマン、パプリカ、ブロッコリーなどの色の濃い緑黄色野菜を積極的に食べましょう。また果物、ワカメや昆布などの海藻類、キノコ類などもおすすめです。
「糖化」を防ぐためには、まずはできるだけ高温調理されたお肉やお魚は避けることが対策の一つです。なぜならAGEは高い熱を加えた調理によって大量にできてしまう特徴があるからです。具体的には肉や魚を揚げたもの、直火で高温で焼いているものです。そして悪性のAGEはブドウ糖からつくられることが分かっているため、血糖値が上がる糖質やタンパク質の過剰な摂取は控えましょう。具体的にはお菓子、ジュースは絶対に控えましょう。沢山食べることで、血糖値が急激に高まり、この急激な変化がAGEを体内に貯めてしまう原因になることが指摘されています。
正しいプチ断食
プチ断食をして夜にまとめて食べる方は、時間栄養学の観点では間違った食べ方になります。プチ断食をしても効果を感じられない方は、夜にまとめて食べている方が多く、朝食べたものはエネルギーとして燃やされやすいことや、夜食べたものは脂肪として溜め込まれやすいという体の仕組みを無視している可能性があります。
私たちの体には体内時計という仕組みがあり、朝は体温や血圧を上げて活動の準備をし、夜になると体温や血圧を下げて眠りにつくリズムがあります。この体内時計リズムに合わせた食べ方を考える「時間栄養学」という概念が注目されています。
最近発表された16時間断食の効果を調べた研究では、朝を主体としたグループ、昼から夜を主体としたグループ、時間制限を設けない時間帯自由のグループで食べる時間帯を制限した場合、朝を主体としたグループが最も効果が高かったことが分かっています。このグループでは、インスリン抵抗性、空腹時血糖値、体重、体脂肪量で最も高いダイエット効果が得られています。
同じく13時間断食の効果を調べた研究でも、朝を主体とした時間帯に食べた方が効果が高いという結果になっています。余談ですが断食時間が長くなりすぎると、オートファジーが過剰になり、分解された脂肪が肝臓に取り込まれて脂肪肝になったり、高齢者では筋肉が減少するサルコペニアのリスクが高まったりするなど健康を害する可能性も指摘されています。また16時間断食で、食べる時間帯が短くなるとタンパク質不足に陥りやすく、筋肉量が減るためタンパク質を意識して摂る必要があります。
また、糖質は朝食べることで速やかにエネルギーで消費されるため、血糖値の上昇を余り気にしなくても良いということも言われています。そして遅い時間に沢山のものを食べないようにしましょう。このようにプチ断食をするのであれば、体内時計のリズムを理解し、そのリズムにあった方法で行いましょう。
正しい油・脂の選び方
油はダイエットの天敵であるという共通認識がありますが、一方で脂質は三大栄養素の一つです。脂質は体を動かすエネルギーだけでなく、体をつくる材料でもあります。脂質はビタミンA,D,E Kなどの脂溶性ビタミンの吸収を助ける働きもあります。そのため脂が不足すると肌ツヤがなくなり、髪がパサつくことになります。
アブラには様々な種類があり、無自覚に摂り続けると健康を害してしまう可能性があります。肉の脂身やバターなどの常温で固体の「脂」とサラダ油やオリーブオイルなどの常温で液体の「油」があり、また動物性のものよりも植物性のものがヘルシーであるというイメージがあります。
しかし、アブラの性質を決めているのは、その構成成分である「脂肪酸」です。この脂肪酸には以下の4つがあります。
脂肪酸名 | 含まれる食材 | 内容 |
飽和脂肪酸 | 牛脂やバターなど常温で固体の油に多く含まれる | コレステロール値を上げて動脈硬化のリスクを高める作用がある。 一方で摂りすぎないと、脳出血の発症率が高まるという報告がある |
n-3系脂肪酸、オメガ3系脂肪酸 | 魚(DHA,EPA)、えごま油、亜麻仁油などに多く含まれる | DHAは脳の血流を良くして活性化させ、EPAは動脈硬化や心筋梗塞のリスクを下げる |
n-6系脂肪酸、オメガ6系脂肪酸 | コーン油や大豆油、お菓子、インスタント食品、加工食品にも多く含まれる | 摂りすぎるとアレルギーや動脈硬化を起こすリスクが高くなる |
n-9系脂肪酸、オメガ9系脂肪酸 | オリーブオイルや菜種油などに沢山含まれている | コレステロールを下げる作用を持つ |
どんなアブラもこれらの複数の脂肪酸で構成されていて、その割合がアブラによって違います。例えば植物油で有名なパーム油はオメガ9系よりも飽和脂肪酸が多く含まれています。そのため摂り過ぎるとコレステロール値を上げて、動脈硬化のリスクを高めてしまう作用があります。このように単に動物性だから健康に悪い、植物性だから健康に良いとは限りません。
いずれにせよ脂は、魚などからオメガ3系を中心に摂り、その他は摂りすぎが健康に良くないため程々にしましょう。ポイントは悪い油が使われている加工食品はなるべく避けること、原材料表示をみて先頭に「植物性油」「植物性油脂」などが記載されている商品はオメガ6系が多く含まれている可能性があるので控えましょう。
【本コラムの監修】

・経歴
大学卒業後、美容の世界に入り、セラピストへ。豊富な美容知識や実務経験を活かし、その後、10年間は大手企業内講師として美容部員やエステシャンの育成、サロン店舗運営のサポートを行う。現在は、セラピスト、エステティシャン、美容カウンセラー、鍼灸師の経歴を活かし、お肌とこころと身体のトータルビューティースタイルを提案。表面だけでなく根本からのケアとして、老けない生活についてのコーチングを行う。