電気治療の種類と効果

    電気治療の種類と効果

    鍼灸接骨院などに腰痛で来院される場合、電気治療をしましょうと漫然と、盲目的に治ると信じて通院される方が多くいますが、どのような効果があるのか、 そもそも電気治療とは何かも知らない方も非常に多くいます。

    電気治療とは

    一般的に、鍼灸接骨院で行われている電気治療の目的は、疼痛の緩和であり、直接的に神経への電気刺激(ゲートコントロール)と、筋収縮に伴う血流改善による関節的効果があり、その両方によって疼痛の緩和が図られます。その他にもたくさんの効果があり、また周波数などによっても様々な種類が存在します。

    その他の電気治療の効果としては、筋収縮作用・筋力改善効果が挙げられます。運動神経に対して電気刺激を与えると、意図的に筋肉を動かせない場合 (麻痺など)を収縮させることができ、筋力増強効果が期待できます。また上記に挙げた筋収縮や、それに伴う血流の改善は、足の浮腫を改善させる作用があります。一方で創傷治癒を促進することも挙げられます。

    電気治療の種類

    電気治療の種類には、いくつか種類はありますが、鍼灸接骨院などで用いられているものほとんどが低周波治療(TENS) ですTENSは、痛みに局所的なもの、または支配する神経の起始部などから通電させる電気治療方法です。

    一方でダイエットやトレーニングで用いられる電気治療がEMS(神経筋電気刺激療法)です。また麻痺した筋肉へ使用することで筋力回復にも用いられています。

    そして美容など用いられているのが、マイクロカレント療法(微弱電流療法)です。主に、組織修復や細胞活性化を目的とした微弱電流を流す電気治療になります。 TENSやEMSに比べて、ほとんど刺激を感じないことも特徴です。

    最後に鍼灸接骨院でも良く使われているのが、HV(高電圧電気刺激療法)です。高電圧を用いた電気治療で、身体の深部にまで到達し、主に疼痛軽減や血流改善に効果があります。

    これらの電気治療を選択する上で大事なのが、その電気治療の効果と、自分がきたしている症状がマッチしているかということです。

    低周波治療(TENS)

    低周波治療とは、皮膚表面に周波数1,200Hz以下の微弱な電流を流して、その刺激により痛みの緩和や筋肉のコリの解消を図るものです。この低周波治療が一般的に知られるようになったのは、1965年に電気刺激が痛みを抑制する仕組み「ゲートコントロールセオリー」が提唱され、その後TENSなどを用いた低周波治療器が開発されてからです。

    特徴としては僅かな時間でも鎮痛効果が現れ、その効果も持続的に作用すると言われています。特に筋肉が緊張し、血流が低下すると、痛みを生み出す物質が筋肉内に放出されて痛みが起こります。低周波治療は、電気刺激により痛みのある部分の血行を促進し、筋肉の緊張の緩和を促すため、発痛物質を血流とともに流すことで、痛みの軽減につながります。また電気刺激により、痛みの伝達を抑制する効果も期待できます。そして低周波治療により、伝導速度の速い触覚神経を刺激することで伝導速度の遅い痛覚神経の伝達を防ぎ、痛みの伝達を抑制する効果が期待できます。

    脳に伝わる痛みのメカニズム

    痛みの情報を伝達するのは、神経細胞のニューロンです。痛みの刺激を受容器が受け取ると電気的な信号に変え、その感覚の情報が後根神経節から脊髄後角(せきずいこうかく)に入ります。脊髄に伝わった信号は、化学物質に変換されて、視床でニューロンを乗り換え、大脳皮質に届きます。この痛みが伝達する途中にゲート(門)があり、痛みの伝わり方をコントロールしているというのがゲートコントロール理論です。

    刺激を伝える神経には、痛覚を伝える細い神経繊維と触覚を伝える太い神経繊維があるとされています。複数の刺激が同時に発生すると、感覚を脳に伝える経路の門番である脊髄は、太い神経からのシグナルを優先的に受け取ると考えられています。そのため後からくる細い神経からのシグナルに対しては門を閉ざし、例えば痛いところを摩ると痛みを緩和することができるのは、このような痛みの門を閉じさせる効果によるものと考えられています。

    痛みの原因「血行不良」

    筋肉にはたくさんの血管が通っており、筋肉が収縮すると血液が押し出され、反対に弛緩すると血液が流れ込みます。この筋肉のポンプ作用によって、血流が生み出されますが、体を動かさない状態が続くと筋肉の伸び縮みがあまり起こらなくなるため、血行不良を招きます。そして血流が低下して酸欠状態に陥ると、筋肉から発痛物質が産み出されます。この発痛物質によって刺激を感知するセンサーが刺激され痛みが生じます。
    つまり痛いからといって体を動かさなければ、ますます筋肉のポンプ作用が働かず、痛みが強くなります。この痛みの悪循環を断ち切るためには、適度な運動やマッサージなどで血行を促すことが大切になります。

    低周波治療で痛みの緩和

    低周波治療(TENS)では、肌の表面から電気刺激を与えることで、痛みの門を閉ざし、その伝達をブロックして、痛みやコリを緩和します。また低周波電流を筋肉に流す(EMS)と、筋肉の緊張と弛緩が繰り返され、適度な運動やマッサージと同じような筋肉のポンプ作用が働きます。このポンプ作用により、血行が促進されて、発痛物質を含む老廃物が排出され、痛みやコリが緩和されます。

    また肉離れや打撲、捻挫などのケガは、完治までに数日から数週間かかるため、早期回復を図るために低周波治療(TENS)が用いられます。炎症が現れる約2〜3日の急性期から慢性期に移行すると痛めた部位が疲労して筋肉が硬くなり、血流が滞った状態になります。その結果、酸素や栄養が行き届かなくなり、腫れや痛みにつながります。そのため電気刺激によって筋肉を収縮・緩和させることで、痛みを和らげる効果が期待できます。ただしピリピリとした刺激のある低周波は、炎症によって熱を持っている部位には使えません。

    マイクロカレントとは

    私たちの体には微弱な電流が流れており、これを「生体電流」と言います。一方で体には、怪我をしたときに「損傷電流」という弱い電流を流して、傷ついた組織を修復する働きがあります。マイクロカレントは、生体電流や損傷電流と同じような弱い電流を使った治療法です。電流の刺激で細胞を活性化することができ、その結果、自然治癒力を高める働きがあります。

    マイクロカレントは、極めて弱い電流(マイクロアンペア)を使用するため、体への刺激感がなく、神経などを興奮させないため、急性期の痛みにも使用できます。そのため肉離れや打撲、捻挫などの回復を早める効果が期待されており、また血行が促進することで発痛物質が排出されるため、痛みの緩和にも効果的です。

    ちなみに低周波は、周波数1,200Hz以下の電流刺激によって、筋肉にポンプ作用が働き、血液の循環が促されます。また電流の単位がA(アンペア)であるのに対し、マイクロカレントはマイクロアンペア(μA)で、1Aのわずか100万分の1程度の強さしかないため、ほとんど刺激を感じません。

    また、マイクロカレントが他の電気療法と異なる点は、電気的な刺激をほとんど感じないほどの微弱な電流なので、神経や筋肉を興奮させないところです。そのためマイクロカレントは、特に急性時の痛みの治療に効果を発揮し、実際プロのスポーツ選手が怪我の治療にマイクロカレントを用いて、回復がより早くなったという報告がされています。そして、なんとなく違和感があるといった場合、コンディションの維持、怪我の一歩前の段階でもマイクロカレントは有効です。ただしマイクロカレントが筋肉疲労や痛みの緩和に効くメカニズムの全容はまだ明らかになっておらず、新たな治療法として研究が進められています。

    このマイクロカレントは、あくまでも早期回復をサポートするものであり、怪我を治すには、その他の要素も必要になります。症状がなかなか良くならない場合は、他の原因が隠れている可能性もあるため、医師に必ず相談しましょう。

    HV療法(ハイボルト)

    HV療法(高電圧電気刺激療法)は、高電圧の刺激を深部に浸透させ、疼痛の軽減や血行促進などに効果があります。最近ではプロのスポーツ選手が、疼痛の軽減や治癒促進などに取り入れています。特に痛みの原因の見極め、炎症を抑制、痛みの緩和が期待でき、痛みの強い時期に使用されます。例えばぎっくり腰などの激しい痛み、慢性的な肩こりや膝の痛み、スポーツ障害による関節の痛みなどに、ハイボルトによる施術がされています。

    HVは、他の電気療法と同じく、痛いと感じる神経の働きを一時的に遮断することで痛みの緩和を図ります。また筋肉が緊張し固くなることで血行不良となり、痛み物質が停滞しているような肩こりや腰痛に対し、筋肉の緊張がみられる箇所にハイボルトを流すことで、筋肉を弛緩させることができるため、痛み物質の排出が促されて痛みの緩和につながります。

    一方で、ハイボルトによって筋肉や筋膜、靭帯などの軟部組織を刺激することで、血液を心臓へと送り戻す働きを促し、損傷箇所の早期回復が期待できます。

    そして、特徴的な使い方としてハイボルトは、痛みを感じる箇所とは異なる部位を刺激し、神経の状態を調べながら、その反応から原因を探ることができます。

    【本コラムの監修】

    HARRNY 院長/鍼灸師 菊地明子

    ・経歴
    大学卒業後、美容の世界に入り、セラピストへ。豊富な美容知識や実務経験を活かし、その後、10年間は大手企業内講師として美容部員やエステシャンの育成、サロン店舗運営のサポートを行う。現在は、セラピスト、エステティシャン、美容カウンセラー、鍼灸師の経歴を活かし、お肌とこころと身体のトータルビューティースタイルを提案。表面だけでなく根本からのケアとして、老けない生活についてのコーチングを行う。

    関連記事

    1. 名前のない猫と不機嫌な感情

    2. 美しくなりたいではなく、美しくありたい

    3. 美しさと幸せ、健康の関係

    4. 東洋医学で診る「むくみ・たるみ」

    5. 肌と心と体はつながっている

    6. 性別ではなく、パーソナリティや個性を重視する「自分らしさ」を…

    7. 東洋医学における「美しさ」とは

    8. キレイになりたい「欲」と「望」

    9. 骨と老け顔の関係性

    10. 「若さ」が、理想的な美しさの基準?

    11. ポジティブな感情がもたらすメリット

    12. 東洋医学と美肌

    13. アンチエイジングと細胞老化(セネッセンス)