
グリシンはたんぱく質を構成をしているアミノ酸の内、最も単純な形をしているアミノ酸です。このグリシンは生体内のいろんな部分で利用されています。
その有効性で知られているのが、グリシンが睡眠の質を改善するというものです。大阪府内科医会会誌に掲載されていた臨床研究よると、臨床研究では不眠傾向にある患者がグリシンを摂取した際の安全性と有用性について検討されています。
この報告では、グリシンを3g寝る直前に摂取することを30日間行ってもらいました。そして使用前1回目、使用後の朝、使用最終日の計3回のアンケートを行い、それらの比較解析を行っています。今回調査した項目は、主観的に判断するしかないような情報調査を行っており、そういう意味でもアンケートという形になっています。この結果、睡眠についての諸問題が主観的に改善されていました。
睡眠の質を改善するグリシン
通常、深部体温は体内時計によるコントロールを受けており、入眠する際には体は深部体温を下げるために、抹消の血管が拡張して熱を発散し、その結果深部体温は1度ほど低下し、睡眠中はそれを維持し続け、そして朝に向けて徐々に体温が上昇します。
一方で、グリシンは末梢の血流量を増加させることで、その深部体温を優位に下げる報告がされています。つまり眠りにつく際の体温の発散を補助してくれます。またグリシンを寝る前に3g摂取することで、ノンレム睡眠の時間が有意に増加しているという報告があります。
つまり疲労回復が行われていると言われているのはノンレム睡眠の時と言われているため、ノンレム睡眠を増加させることは睡眠の疲労回復効果を高めてくれることになります。ただし、これらのようなグリシンの作用機序は、明らかになっていません。
グリシンで寿命が延びる!?
グリシン(アミノ酸)は、ただの睡眠サプリという認識はもう古く、ロンジェビティサイエンス(長寿研究)の分野において、安全で数少ない抗酸化物質として注目を浴びています。なぜアミノ酸を摂るだけで生物学的に老化が遅れる可能性があるのか、その鍵は現代人が抱える食生活とそれを分子レベルで修復するメカニズムにあります。
その根拠は、アメリカが行っている ITP という巨大プロジェクトの結果にあります。このITPの目的はただ1つ、寿命を伸ばす物質を見極めることです。その審査基準は厳しく、ミシガン大学、ジャクソン研究所、テキサス大学という全く離れた場所にある3つの研究拠点で同時に同じ実験を行いました。これは誰がどこでやっても同じ結果(再現性)が出ることが重要視されたからです。
実際、過去に長寿に効くと言われてきた数々の成分、例えばレスベラトロールやクルクミン、緑茶カテキンが3拠点同時実験の壁に阻まれ、寿命延伸効果なしという判定を受けています。つまり健康効果は認められたものの、寿命は伸びなかったこととなり、それ故健康効果と老化を送らせる効果は別物と考えられています。
しかし、2019年に発表されたITPの研究結果では、遺伝的に多様なマウスたちにグリシンを与えたところ、寿命の延長が確認されました。これは特定の病気に効いたのではなく、老化のスピードそのものが遅くなったことを示唆しています。この実験データの面白いところは、オスとメスで現れた効果に少し違いがあったことです。
オスは中央値だけでなく最大寿命まではっきりと改善し、中央値が伸びるというのは、集団全体の平均的な寿命が底上げされたことを意味します。つまり早死にする個体が減り、皆が長生きできたことを示しています。また、これは病気の予防効果が高いことも示しています。
一方で、最大寿命が伸びるのは、その集団の中で最も長生きしたエリート長寿マウスたちの記録が、さらに更新されたことを意味します。最大寿命の延伸は、単なる病気の予防を超えて、老化プロセスそのものにブレーキをかけた証拠とされています。つまりオスは、老化のスピード自体が遅くなった可能性が高いことになります。
メスも平均寿命はしっかりと伸びましたが、驚くべき変化が現れています。メスは、グリシンを摂取していただけで体重が優位に軽くなっていました。通常のマウスと同じ量の食事を摂っていたにも関わらず、メスのマウスだけは脂肪がつきにくく、スリムな体系を維持していました。これは過剰なメチオニンをグリシンが処理することで代謝がスムーズになり、余分な脂肪の蓄積を防いだ結果とも考えられています。
グリシンが寿命を伸ばすメカニズム
健康のためにと信じて食べている赤身肉こそが、ある条件では老化を加速させる要因になりるります。当然、タンパク質は体を作る大事な栄養素で、肉を否定しているわけではありません。問題なのは肉そのものではなくバランスです。
私たちの祖先は、獲物を仕留めた時に獲物を丸ごと全て食べていました。その無駄にしない食べ方が、実は栄養学的に完璧なアミノ酸を生み出していました。動物の筋肉である赤身肉には、メチオニンという必須アミノ酸が大量に含まれており、一方で動物の皮や骨、結合組織にはグリシンが大量に含まれています。獲物を丸ごと食べていた祖先たちは、筋肉からメチオニンを摂ると同時に皮や骨からグリシンも摂っており、プラスとマイナスが打ち消し合って均衡が保たれていました。
しかし、現代人はスーパーでパック詰めされた肉を食べ、皮や骨、筋と言ったグリシンが豊富な部分を食している人はほとんどいません。そのため現代人はメチオニンの摂取量が多く、それを中和するグリシンが圧倒的に不足しています。そしてこの過剰なメチオニンこそが、老化のアクセルを踏み込む物質です。
細胞の中には、mTORという成長と老化を司るスイッチがあり、メチオニンはmTORを強力に活性化させます。つまり栄養は十分ある状態だからと言って、どんどん細胞分裂して成長する命令を出します。そのため細胞は休息することも、オートファジーをすることも許されず、フル稼働を強いられることになります。それが老化を加速させる大きな要因の1つです。
実際、動物実験でメチオニン制限食を与えられたラットは寿命が劇的に伸びることが分かっています。カロリー制限と同じくらい強力な延命効果が認められています。一方で、私たちの肝臓には過剰に入ってきたメチオニンを感知して、それを分解、排出しようとするシステムが備わっています。そのプロセスにおいて必要となるのがグリシンです。
過剰なメチオニンが代謝される時に、グリシンが過剰なメチル基を引き受けて無害な物質に変えてくれます(メチオニン制限模倣)。つまり好きなお肉を食べながら体の中ではメチオニンを控えて、健康に気を使っている人と同じ状態を作り出す、これこそが現代人がサプリメントとしてグリシンを摂取すべき最大の理由です。
グリシンでアンチエイジング
さらにグリシンは、体を作る材料として重要な働きをしています。スペインの生科学者メレンデスヘビア博士が発表したグリシンのボトルネック説があります。博士は、人体の代謝プロセスを徹底的に計算し、特に私たちの体を支える最大のタンパク質であるコラーゲンの合成に、どれだけのグリシンが必要なのかを引き出しました。コラーゲンは、骨、軟骨、腱、血管、内臓の膜、人体のあらゆる構造を作っているのがコラーゲンです。
全タンパク質の約30%をコラーゲンが占めており、コラーゲンはアミノ酸が並んだ鎖となっており、アミノ酸3個に1個は必ずグリシンと決まっています。博士の計算によると、体重70kgの成人が古くなったコラーゲンを毎日修復して健康な体を維持するために必要なグリシンの量は、 1日あたり約10gから12gになっています。
一方で、私たちの体が自力で合成できるグリシンの量は、1日当たり3g程度です。生学的な限界としてこれ以上は作れません。また食事からは、一般的な食生活では1.5gから3g程度、つまり合成量と食事を合わせても理想的な必要量に対して毎日数gから10g近く足りていません。
これこそが老化原因の1 つで、体はまずは生命維持に直結する脳や心臓の機能を優先し、命に直結しない肌のハリや関節のクッション、血管の弾力といった部分へのグリシン供給を減らします。つまり年を取ると肌がたるんだり、膝が痛くなったりするのはもちろんのこと、コラーゲンのターンオーバーが滞り、古くて硬いコラーゲンが積み重なり、これがシワになります。
老化の2大原因を食い止める
老化の2大原因には、酸素によって体が錆びる「酸化」と、余分な糖によって体が焦げる「糖化」があります。実はグリシンは体内で作られる最強の抗酸化物質であるグルタチオンを作るための必須材料の1つです。
グルタチオンは、美容クリニックで白玉点滴とも言われ、一般的にはシステインという成分が重要視されがちですが、実はアンチエイジングの観点ではグリシンの不足もボトルネックになることが分かっています。
グルタチオンは、3つのアミノ酸が合体してできていますが、現代人はグリシンが圧倒的に不足しており、いくらの材料があってもグリシンが届かないせいで肝心のグルタチオンが合成しづらくなります。そのためグリシンを補給することで停滞していた生産ラインが動き出し、本来の錆取り機能が復活することになります。
一方で体が焦げる「糖化」は、AGEsという毒性の高い物質が生成されています。そして本当に怖いのは、体温でゆっくりその反応が進んでいることです。例えばケーキやご飯を食べて血糖値が上がると、血液中に溢れた余分な糖が血管や皮膚のタンパク質にベタベタと張り付きます。そして体温で温められ続けることでタンパク質が変出し、固く茶色く劣化します。これが血管で起きればやがては動脈硬化、肌で起きればシワや黄くすみ、骨で起きれば骨粗鬆症になります。
実はグリシンには、この糖化反応を食い止める、言わば身代わりとしての特殊能力があります。グリシンというアミノ酸は、構造がシンプルで小さく、血液中にグリシンが十分に存在すると余分な糖が大事なコラーゲンや血管に貼り付きそうとする前に、グリシンが割って入ることができます。サイズが小さいため体に溜まりにくく、尿で出やすいと言われています。つまりグリシンは体を守るための盾であり、糖の攻撃を引き受けるおとりになってくれます。
実際に糖尿病のラットを使った実験でも、グリシンを投与することでヘモグロビンの糖化や組織のAGEs蓄積が優位に抑えられたデータがあります。どうしても甘いものが止められない人たちにとって、グリシンがセーフティネットになることは間違いありません。
そして、グリシンの摂取量は、1日3gからスタートするのがおすすめです。寝る前に飲めば睡眠の質を上げつつ、寝ている間に成長ホルモンの分泌を助け、さらに体内のコラーゲン合成の材料にもなります。グリシンは食品にも含まれるアミノ酸のため、基本的には安全性は極めて高いですが、一部の人たちは注意が必要です。
特に注意が必要なのは統合失張症の薬を副用している場合、グリシンが薬の作用に干渉する可能性があるから自己判断での摂取はNGです。また腎臓や肝臓に重篤な持病がある人も要注意です。これはグリシンに限った話ではありませんが、アミノ酸を代謝、排出する時には臓器に負荷が掛かります。健康な人であれば全く問題ないレベルですが、機能が落ちている人にとっては負担になりうるため、必ず主治医さんに相談しましょう。
グリシンとグルタチオン違い
グリシンは20種類ある必須アミノ酸のひとつです。グリシンは、体内で他のアミノ酸と組み合わさってタンパク質を作る材料となり、肌や筋肉、臓器の機能を支える役割があります。また神経伝達物質としても働くことが分かっており、睡眠や脳の働きと関連する研究も進んでいます。
そしてグリシンとグルタチオンの役割や性質はまったく違います。このグルタチオンは、グリシン・システイン・グルタミン酸という3つのアミノ酸が結合してできています。
グルタチオンは、強力な抗酸化作用を持ち、体内の酸化ストレスを減らし、細胞を守る役割を担います。そしてグリシンは、グルタチオンの成分のひとつであり、グリシンが不足すると、グルタチオンの生産が滞り、体の抗酸化力も低下しやすくなります。そのため日常の食事で適度にグリシンを摂り、同時に十分な栄養を摂ることが大切になります。
また、これらは摂取の仕方についても違いがあります。グリシンは、食事から摂り入れられ、タンパク質を多く含む肉や魚、乳製品、豆類などに多く含まれます。またミネラルやビタミンと一緒に摂取すると吸収が良くなります。
一方で、グルタチオンは食品にも含まれますが、体内での合成が主であり、天然の食品だけでは十分でありません。当然、サプリの選択もありますが、まずは日常の食事と生活習慣を整えることが大切ですグルタチオンは、体内での合成を助ける栄養素、特にシステインを豊富に含む食品(鶏肉、豚肉、レバーなどの肉類、カツオや鮭、魚介類、卵、大豆製品、胡麻、ニンニク、ブロッコリーなど)を意識するのが大事です。
美白成分グルタチオン
グルタチオンは、韓国コスメで配合されているものも増えている印象です。日本においても、グルタチオンが配合されたサプリメントが人気になっています。このグルタチオンは、抗酸化成分の1 つで、紫外線やストレスなどで過剰に産生される活性酸素を除去してくれる成分です(還元型と酸化型の2種類)。
また、グレルタチオンはメラニンの合成にも関与すると言われており、間接的にはメラニンの生成を抑制する効果があると考えられています。そしてグルタチオンが本当に美白効果があるのかに関しては、これまで十分なエビデンスがないという状況がありましたが、少しずつエビデンスも出てきて、美白効果もあることが分かっています。
このグルタチオの取り入れ方には、サプリメントなどによる内服、化粧品による外用、そして3つ目は点滴(白玉点滴)です。これまでの報告で、最も効果が高いと考えられているのは内服です。
25年に、グルタチオンに関する臨床研究の結果をまとめたものが発表されましたが、この調査によると内服のグルタチオンは、1日あたり500mg 程度摂ることによって優位にメラニンの指数が低下したことが分かっています。また肝斑などの色素沈着に対しても、グルタチオンの研究はいくつかあり、いずれも一定量以上を内服した場合、肝斑の改善効果があったことも分かっています。
一方で、グルタチオンの外用の効果(化粧品)については、十分なエビデンスはないのが現状です。ただし、これまでの報告では、外用単独で行った場合よりも外用と内服を併用した場合、併用した方がよりその効果が高かったという報告もあります。
そして点滴(白玉点滴)と呼ばれるものも以前からありますが、世界的にはあまり推奨されていません。なぜならグルタチオンの点滴によっていくつかの重篤な副作用(アレルギー反応)が報告されているからです。
肝斑とグルタチオン
日本人で非常にその頻度が高いと言われているのが肝斑です。肝斑は30代以降のアジア人女性を中心に、頬骨あたりに左右対象にモヤモヤっと出てくるタイプのシミのことです。
肝斑は出産などをきっかけに出てくる方が多く、また紫外線によって炎症が起こり、この炎症によってメラニンが作られやすい状態になるためと考えられています。そのため肝斑、つまり過剰なメラニンに対しては、その大元の炎症になりやすい肌の状態を改善する、トラネキサム酸が非常に効果が高いと言われています。
ただし、高量のトラネキサム酸を長期で内服した場合には血栓という重篤な副作用が確認されています。一方でグルタチオンも肝斑に対して有効だと言われていますが、トラネキサム酸の方が効果は高い印象です。すで高量を飲んでいる方、あるいはピルを内服していて血栓のリスクが高い方は、そもそもトラネキサム酸との併用が難しいため、このグルタチオンは良い選択肢になります。
一方で2026年、Dr.K薬用ABC-GプレミアムクリームTA(医薬部外品)がリニューアルされました。紫外線だけでなく、元々皮脂が多い方は、そもそも肌に炎症が起きやすく、皮脂の中に不飽和脂肪酸が増えるため、毛穴が目立ったり、炎症が生じます。それが慢性化すると、正常な細胞まで炎症がどんどん大きくなります。これが炎症老化と呼ばれるものです。
このクリームには、炎症老化を抑えるために有効成分を3つ配合しており、1つ目がトラネキサム酸です。トラネキサム酸は、紫外線による炎症も抑えるだけでなく、元々肌にある炎症、メラニン産生など、赤色や黒色の原因になる炎症を抑える成分です。
そしてトラネキサム 酸と相性の良いナイアシンアミド、もう1 つは抗炎症のグリチルリチンサンジカリウムが挙げられます。グリチルリチン酸で抗炎症対策、トラネキサム酸で美白、そしてナイアシンアミドがDNAの修復を助けてくれます。
このクリームの製品名のTAはトネキサム酸、Gはグルタチオンです。Cは、ビタミンCですが、活性酸素と一緒にくっつくことで燃えカスみたいなものができます。しかしグルタチオンが入ってることによって、この燃えカスがもう1度蘇えさせるのがグルタチオンです。つまり、ビタミンCがグルタチオンと一緒になるように活性酸素を取り除いてくれるようなシステムが構築されています。
さらに、カフェインという成分が入っています。これは、細胞のエネルギーを作る工場のミトコンドリアにアプローチし、その稼働スイッチを押すのがカフェインの働きです。なぜなら炎症が起こるとミトコンドリアが疲弊し、エネルギーであるATPを作れなくなります。ここにカフェインとナイアシンを入れることによって工場をしっかり稼働することができます。
抗炎症作用があるグリチルリチン酸やトラネキサム酸で抑えた後に、細胞のエネルギーを作るミトコンドリアを活性化させることで、エイジングケアもしていくクリームになっています。
【本コラムの監修】

・経歴
大学卒業後、美容の世界に入り、セラピストへ。豊富な美容知識や実務経験を活かし、その後、10年間は大手企業内講師として美容部員やエステシャンの育成、サロン店舗運営のサポートを行う。現在は、セラピスト、エステティシャン、美容カウンセラー、鍼灸師の経歴を活かし、お肌とこころと身体のトータルビューティースタイルを提案。表面だけでなく根本からのケアとして、老けない生活についてのコーチングを行う。
















