体調不良の原因は脳にある?

    体調不良の原因は脳にある?

    朝なかなか起きられない、疲れやすい、集中力が続かない、健康診断では異常はないのになんだか調子が悪いなど、このような悩みを抱えている方が多くなっています。

    このような原因として最近注目されているのが、脳内回路の断線です。この断線によって必要な栄養が脳に届いておらず、上記のような悩みにつながっているのではないかという研究があります。

    メチレーション回路

    この断線は、脳内ホルモンに必要な栄養が届いていないということですが、人によって断線回路が異なり、例えばAという栄養素が届かない人、Bという栄養素が届かない人など、その人の遺伝的に違いが出ます。つまりその人にあった栄養素が届くようになれば、疲れにくくなる、不安感が改善、睡眠の質が向上、集中力がアップするなど様々なメリットが得られるようになります。

    近年の遺伝子検査によって、脳の特徴、必要な栄養素が分かるようになってきており、欧米では脳を効率的に働かさるための必要な栄養素を分析するメチレーションに関するSNPs(スニップス)検査などがあり一般化しつつあります。

    脳内回路には、3つのメチレーション回路(メチオニン、葉酸、BH4回路)があり、それらが上手く回ることで、ドーパミン、ノルアドレナリン、セロトニンなどの脳内ホルモンがしっかり産生されるようになります。逆にこれらが上手く回らないで断線することで脳内ホルモンが適切に分泌されなくなり、上記のような悩みにつながるのです。

    また、日本人の46%が葉酸回路に遺伝子的な変異がみられて不足しやすいことも分かっています。そしてBH4回路が回りにくい人にはタンパク質が不足していることも分かっています。

    このように不調の原因は遺伝子上、脳内ホルモンを合成しているメチレーション回路に断線が起こり、上手く回っていないため、必要な栄養素が脳に届いていないからかもしれません。

    脳に必要な栄養素

    メチレーション回路を効率的に回すためには、①タンパク質を毎食こまめに摂取する、②葉酸とビタミンB12を摂取する、④腸に毒になる食べ物を避ける、です。

    ①タンパク質を毎食こまめに摂取する

    タンパク質は一度にたくさん食べても体内利用される量には限界があります。そのため筋トレした後にプロティンを沢山飲んでもあまり意味がありません。さらに内臓に負担をかけるリスクもあります。そのため1食あたり20〜40gを目安にこまめに摂取することが体づくりや筋肉維持に良いことが研究でも明らかになっています。

    タンパク質は私たちの体の基本となるものです。タンパク質を摂れば、消化酵素の働きによってアミノ酸に分解され、小腸で吸収されます。そして肝臓で再合成されたタンパク質は血液にのって、血や骨などの組織をつくる材料やホルモンなどの構成成分になります。

    メチオニン回路のメチオニンはアミノ酸の一種であり、タンパク質がなければメチオニン回路は回りません。またBH4回路のトリプトファン、チロシンもアミノ酸の一種です。つまりホルモンの材料であるタンパク質をしっかり摂っておくことが重要になります。

    ②葉酸とビタミンB12を摂取する

    葉酸はビタミンB群の一種で、文字通り葉物野菜に多く含まれる栄養素です。日本人は遺伝的に葉酸が不足しやすいと言われており、しっかり摂る必要があります。葉酸とビタミンB12をセットで摂ることで赤血球をつくり、DNAの合成や修復することができます。

    ③脳を良質な油で構成する

    炭水化物、タンパク質、脂質は三大栄養素と言われ、私たちの体の細胞膜は脂質でできており、細胞膜をしなやかに保つためにも重要な栄養素です。また脳の6割は脂質で構成されているため、オメガ3系の良質な油をしっかり摂りましょう。

    ④腸に毒になる食べ物を避ける

    腸の状態を整えることで、必要な栄養を吸収できるようになります。そのためにも、特にグルテン(小麦に含まれるタンパク質)とカゼイン(乳製品に含まれるタンパク質)は避けなければなりません。グルテンとカゼインは体内で分解されにくく、体を冷えやすくするため栄養の吸収を妨げ、代謝を下げます。さらに腸の粘膜を荒らし、腸に負担をかけるため消化吸収力が下げる原因となります。つまり良い栄養を摂る前に腸の調子を整える必要があるのです。

    このようにメチレーション回路をうまく回すことで不調を改善することができます。どんな栄養素が不足しがちなのかは遺伝子の影響を受けますが、回路を効率的に回すためのベースとなる栄養の摂り方、食べ方は原則があるのです。

    脳の働きを決める食べ物

    食べ物に含まれている栄養素と脳の機能は切っても切り離せません。日々の食事の質が、脳の働きを決めると言っても過言ではありません。

    トマトが活性酸素を撃退

    細胞の錆の原因となる活性酸素は、安定して存在するために体内の他の原子から電子を奪い、体内の安定した細胞を破壊します。そして電子を奪われた原子は不安定になり、そして破壊された細胞は他の細胞から電子を奪うという連鎖反応が起きて健康な細胞にダメージを与え、老化や癌など様々な病気を引き起こすと言われています。

    この活性酸素は当然ながら脳の細胞も攻撃し、酸化ストレスに晒される人はアルツハイマー病を含む認知症のリスクも高くなってしまいます。もちろん活性酸素は自然に生活していても少しずつ体内で発生しますが、食品添加物、酸化した油を摂取したり、タバコ、紫外線、激しい運動など様々な体に悪いことが原因となり体内で増加します。

    そこで活性酸素の働きを抑えてくれる抗酸化物質を含む食べ物を食べることです。抗酸化物質を摂取すると体内の活性酸素の働きを抑え、脳への損傷を防いでくれます。抗酸化物質は、野菜や果物に含まれているポリフェノールやカロテノイドなどを様々な種類がありますが、抗酸化作用を持つおすすめの食材の一つがトマトです。

    トマトに含まれているカロテノイドのリコピンが強い抗酸化作用を持っており、日常的に摂取することで活性酸素の働きを抑える効果が期待できます。実際、認知機能に問題がある人やアルツハイマー病の患者さんがトマトを食べると、 血中のカロテノイド値が上昇したとの研究報告もあります。

    リンゴの脳卒中予防効果

    リンゴを食べると脳卒中予防になるという研究報告があります。脳卒中を発症する原因の一つに血中の悪玉コレステロールの増加があります。悪玉コレステロールが動脈などの主要な血管にたまると、血栓となって血管を狭くしたりします。そうすると血流が悪くなって、十分な血液が脳に届かなくなり、脳梗塞やくも膜下出血などの脳卒中を引き起こすリスクを高めてしまいます。脳卒中を予防する手段の一つが悪玉コレステロールの増加を防ぐことです。

    リンゴの果肉に含まれている水溶性の食物繊維はペクチンと呼ばれ、ペクチンを摂取することで悪玉コレステロールが体内に吸収されるのを防ぐ効果が期待できます。またヨーロッパの研究によるとペクチンは、鉛や水銀などの有害な重金属を体外に排出するのを促す働きも指摘されています。

    例えば水銀は、脳の神経系を犯して運動障害や感覚障害、認知機能の障害を引き起こすリスクがあります。また妊娠中の母親がメチル水源を摂取した結果、赤ちゃんの脳に障害が残るリスクも指摘されているなど有害な金属は可能な限り摂取を避けるか、体外に排出する必要があります。

    私たちは普通に生活しているだけでも、どうしても微量の有害物質を摂取してしまいます。そのため毒性のある重金属の排出を促すペクチンの摂取はとても大切と言えるでしょう。さらにリンゴに含まれているポリフェノールの一種であるケルセチンが活性酸素によるダメージを修復してくれる研究報告もあります。

    一方で、アルツハイマー型認知症になるのは、脳は記憶力に欠かせない神経伝達物質のアセチルコリンが不足していることが原因の一つと言われています。アセチルコリンは、脳内の神経細胞間の情報伝達を行う物質です。アセチルコリンが不足することで、脳内の情報伝達に障害が発生して、記憶力や学習能力の低下に繋がります。リンゴには脳内でアセチルコリンの分泌を促す力があるため、認知機能の維持を助けて、認知症予防の効果が期待できます。

    かぼちゃの種

    かぼちゃの種の栄養価は凄まじく、脳にあらゆる良い影響を与えてくれるスーパーフードです。例えばオメガ3やオメガ6などの必須脂肪酸を多く含み、脳の60%は脂質でできており、脳の機能を高めるためには良質な脂質であるオメガ3の摂取が欠かせません。特に記憶を司る海馬にオメガ3が多く存在するため、オメガ3は記憶力を高める効果が期待できます。

    2017年にイリノイ大学が発表した研究によると、オメガ3を摂取することで記憶力が改善されたり、問題に対処する能力を司る脳の組織が強化されたりする効果が指摘されています。またハーバード大学の研究でも気分の浮き沈みの原因となる脳のシグナルが、オメガ3脂肪酸によって抑制される効果が指摘されています。

    またかぼちゃの種にはマグネシウム、亜鉛、マンガン、鉄、銅、リンなどの必須ミネラルが多く含まれています。例えばマグネシウムは、ニューロンの代謝を助けて、特定の抗酸化物質の効果を促進する働きがあります。またマグネシウムにはアルツハイマー病を予防する役割も期待されています。

    研究によりと多くのアルツハイマー病の患者さんは、マグネシウムが不足していて、カルシウム過多であることが分かっています。健康な脳はマグネシウムとカルシウムが、ほぼ同じ割合で存在しているため、マグネシウムを摂取することで健康な脳を維持することが可能となります。

    また、亜鉛は神経伝達物質を生成するのに欠かせないミネラル成分のため、亜鉛を十分に摂取することで脳の機能を高めることができるでしょう。そしてもう一つ欠かせないのが、抗不安作用のあるγ-アミノ酪酸、通称GABAの生成を促す役割がある点です。GABAには不安を和らげて精神を安定させる効能の他、睡眠の質が改善される効果もあると考えられています。

    脳の健康維持に欠かせない大豆

    納豆や豆腐などの大豆食品も脳の機能アップに効果的な働きをします。例えば大豆にはホスファチジルセリンと呼ばれる細胞膜を作るのに必要なアミノ酸が含まれています。このホスファチジルセリンは、脳の機能を向上させる効果が指摘されており、アメリカの医学誌に掲載された報告によりと、大豆由来のホスファチジルセリンを1日に300mg 補給することで、脳の情報認識能力と記憶力に大きな改善が見られたと言います。

    ホスファチジルセリンには、他にも集中力アップやストレスホルモンであるコルチゾールの抑制など様々な効果があると言われています。また大豆由来のタンパク質には、血中のコレステロール値を下げて血栓や血小板の凝固を防ぎ、血管の弾力性を高めてくれる効果もあります。血管の弾力性が高まって血流が改善されることで、脳卒中のリスクを下げることができます。

    さらに、大豆由来のタンパク質には悪玉コレステロールの酸化を防いで、血管の内側にプラークができるのを防いでくれます。プラークは血管の内側にできるこぶのような塊です。プラークは血液をせき止めてしまうため、心筋梗塞や 脳梗塞の原因の一つと言われています。つまりプラークの生成を防ぐという観点からも大豆は脳卒中の予防効果があると言えます。

    そして大豆には、ポリフェノールの一種であるフラボノイド(大豆イソフラボン)が含まれています。近年の研究ではフラボノイドが神経毒から脳を守る役割があることが分かっており、記憶力や学習能力などの認知機能全般を向上させる効果が期待できます。このプラモノイドには、抗酸化作用もあるため脳を活性酸素から守り、認知症予防にもつながり、さらには脳の神経炎症を抑える効果も指摘されています。

    パセリで脳の健康維持

    パセリには脳の機能を維持するために必要なビタミンA、ビタミンC、ビタミンK、ヨウ素、鉄などの栄養素が豊富に含まれています。実際、パセリに含まれているビタミンCは、柑橘類よりも多く、体内の炎症を鎮める効果が期待できます。またパセリには抗酸化作用があるフラボノイドも豊富で、活性酸素が脳や体内の細胞にダメージを与えるのを防いでくれます。

    科学雑誌のジャーナルオブニュートリション誌に掲載された研究報告によると、パセリに含まれているルテオリンというフラボノイドが脳の健康を維持する効果があるといいます。別の研究ではパセリには、抗うつ作用があることも指摘されています。

    朝に良質な脂質を摂る

    朝に良質な脂質を摂ると脳を活性化させて1日のパフォーマンスを高めることができることが分かっています。朝に摂りやすい良質な油としてMCTオイルやエキストラバージンオリーブオイルなどが挙げられます。

    いずれの油も腸内あるいは肝臓で短鎖脂肪酸に変換されます。短鎖脂肪酸は腸壁の腸内細菌と腸粘膜の保護作用がある他、血中に入ると直ぐに脳に送られて 脳のエネルギーとしても使われます。つまり脳のエネルギーに適した脂肪酸が短鎖脂肪酸であり、この短鎖脂肪酸に変換される油というのは非常に良質な油になります。

    また、バターコーヒーを作って飲むのもお勧めです。バターコーヒーとはコーヒーにMCT オイルとグラスペットバターを加えてよく撹拌した飲み物です。このバターコーヒーは、シリコンバレーのエンジニアの間で生産性が飛躍的に高まるとして爆発的に広がったものです。良質な脂質が入ったバターコーヒーで仕事の生産性がアップするのは医学的にも理にかなっています。またバターコーヒーは、チベットやモンゴルのバター茶がルーツとも言われており、伝統的な裏付けもあります。

    頭の鍼と脳内ホルモン

    頭の鍼でツボを刺激すると、脳の視床下部にその刺激が伝わり、神経伝達物質である脳内ホルモンの分泌を促すことが実証されています。脳の視床下部は、ホルモンの合成、分泌、抑制を調整しており、下垂体に働きかけることで、成長ホルモン、女性ホルモンなどをコントロールしています。

    このホルモン分泌をコントロールしているのが自律神経(視床下部)です。つまり自律神経を整えることでホルモンバランスを整えることが可能とも言えます。特に自律神経を整えるために注目されているのが「頭の鍼」であり、その根幹にあるのが経絡治療になります。

    経絡治療は経絡という一種の身体のエネルギーの通り道を整えるために、鍼やお灸などでアプローチをする伝統的な東洋医学の考え方による方法です。前述したような食生活を整え、また身体の自然治癒力を向上させることで体の内側からの変化を引き出すことができます。

    【本コラムの監修】

    恵比寿院長

    HARRNY 院長/鍼灸師 菊地明子

    ・経歴
    大学卒業後、美容の世界に入り、セラピストへ。豊富な美容知識や実務経験を活かし、その後、10年間は大手企業内講師として美容部員やエステシャンの育成、サロン店舗運営のサポートを行う。現在は、セラピスト、エステティシャン、美容カウンセラー、鍼灸師の経歴を活かし、お肌とこころと身体のトータルビューティースタイルを提案。表面だけでなく根本からのケアとして、老けない生活についてのコーチングを行う。

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