
現代社会はストレス社会とも言われており、そのため現代ならではの様々な問題や症状に悩む人が沢山います。特にストレスによって、なぜかイライラする、体調がすぐれない、疲れがなかなか取れない、気力がない、落ち込むなど病気でない不定愁訴を抱えている人が多くなっています。
最新の脳科学の研究
ストレスを受けると交感神経過緊張になり、内分泌系である副腎機能が低下を引き起こします。交感神経過緊張によって、イライラしやすいなどの感情的になるだけでなく、血圧が不安定になる、慢性疲労、頭痛などの慢性疼痛が症状として表れます。
また、副交感神経の機能低下は、胃・十二指腸潰瘍、過敏性腸症候群、腹部膨満、便秘などの症状が現れ、そのほかにも不安障害、パニック障害、うつ病、糖代謝の異常を引き起こします。
最新の脳科学の研究によると、
- ネガティブな感情をコントロールする
- 興奮を鎮める指令を出す
- 痛みの回路の抑制する
のは、前頭部脳領域の前頭前野と呼ばれる場所だと解ってきています。前頭前野は「脳の司令塔」と呼ばれ、考える、記憶する、判断する、コミュニケーション、新創造、行動や情動を整理する、感情をコントロールするなどの重要な働きを担っている部位です。
この前頭前野がストレスを受けると、人の判断、意欲、興味を司っているため、機能が低下してやる気がなくなります。また不安、悲しみ、自己嫌悪、恐怖などの感情も司っているため、不安などの自律神経症状が惹起されたりします。特に前頭前野は、神経伝達物質のドーパミン、セロトニンなどによって支えられています。
特にセロトニンは、心のバランスを整える作用のある伝達物質であり、セロトニンを増やすことで精神的な安定が得られることから「幸せホルモン」と呼ばれています。セロトニンが不足すると、睡眠と覚醒のリズムが乱れる、自律神経が乱れ、慢性的な疲労を感じたり、朝起きられない、イライラするなどの症状を引き起こしたりします。
感情年齢と感情老化
歳を重ねると共に感情のコントロールが難しくなり、嫌なことをずっと引きずったり、昔ほど感動しなくなったりと自覚がある場合は、感情が老化している可能性があります。加齢によって体力が落ちていく健康面の衰え、名前が思い浮かばないなどの脳の衰え、シミやシワが増えていく見た目の衰えなど老化がありますが、これ以上に感情の老化がすべての老化の元凶であることはあまり意識されていません。
感情年齢は思考力、感情、性格、理性などを担う前頭葉の萎縮と密接な関係があります。ワクワクする、ドキドキするなど好奇心、やる気を出すなどの気持ちの切り替えをするなどを担うのが前頭葉です。つまり感情の老化を防ぐと言うのは、前頭葉の老化を防ぐことになります。この前頭葉の老化、つまり萎縮は何もしなければ40代頃から始まり、どんどん進行して感動しなくなったり、やる気が出なくなったり、メンタルが落ち込みがちになるなど状態になります。このような状態になると健康や見た目の老化が一気に加速していきます。
感情の老化を防止する
脳も筋肉と同じように使わなければ急速に老化していきます。歳を取って感情の感度が鈍くなり、気持ちが弾まなくなるのも感情の老化の大きな特徴です。具体的に感情年齢を若く保つための方法は、新しいことにトライすることです。若い頃は何事も経験だからと新しい事にチャレンジしたり、失敗を恐れずに始めてみたりしますが、年齢と共にだんだん臆病になっていきます。結果的に変化のないマンネリした生活が訪れて、感情の老化が進んでしまいます。心に活気がある人が見た目まで若々しく見えるのは、自分が楽しいと思う事や気持ちやワクワクするときめきを探し続けているからです。
この他にも、実は料理をすることが脳を活性化することが分かっています。食材を選んで分量を決める、素材を洗う、野菜の皮を剥き適当な大きさに切る、炒める、煮込む、調味料で味を整えるなど沢山の工程があり、手順、調理時間、効率を頭の中で計算して作業しなければならず、脳がフル稼働します。ぜひ料理をして脳の老化を防ぐことをオススメします。
前頭葉を鍛える大切さ
若い時に比べて頭の回転が落ちてきたと感じる、脳の老化が気になり始めたら、脳の萎縮が加速しているかも知れません。脳の萎縮は前頭葉から始まり、加齢ともにその萎縮は加速していきます。前頭葉は私たちの意欲や感情のコントロールなどを司っている非常に重要な脳の領域です。
前頭葉が老化することによって意欲が低下し、物事への関心が薄れ、自分で考えようとしなくなり、脳がどんどん使わなくなることで、言語能力や計算能力と言った知能そのものが衰え始めます。その脳の老化が、体の老化、見た目の老化、メンタルの老化へと繋がります。
特に生活に変化をつけていない人ほど前頭葉の萎縮が加速しています。そもそも前頭葉は想定外のことに対処する時に活性化する脳の領域です。そのため毎日同じで変化のない生活を繰り返していると衰えていっています。
健康のためにウォーキングするのであれば、同じコースではなく違うコースを試してみる、行きつけのお店だけでなく、新規開拓を心がけるなど少しの変化でも構いません。変化を付けるためには毎日実験だと思って行動するマインドが大切です。新しいことにチャレンジすることで、いろんな発見、たくさんの経験を重ね、脳をいつまでも若々しく保つことができます。
使う言葉で行動が変わる
私たちの使う言葉が、私たちの行動に影響します。特にネガティブワードである「老けた」「歳を取った」「若くない」「疲れた」「嫌だ」「できるわけない」はNGです。
ニューヨーク大学では、学生を2つのグループに分けて、言葉の羅列で文章を作ってもらうという実験を行いました。1つ目のグループには「グレー、孤独、忘れやすい、退職」など年配者のような言葉、2つ目のグループには「喉が渇いた、きれいな、プライベート」などのニュートラルな言葉で文章を作ってもらいました。そして移動してもらったところ、年配者のような言葉を使ったグループのメンバーの歩くスピードが遅くなることが分かっています。つまり使った言葉がその後の行動に影響を与えるということです。どういう言葉を使うかで無意識に私たちの行動が変わってしまうことが示されています。
例えば「疲れた」という言葉を使えば、実際にはそこまで疲れていなくても脳が勝手に疲れた状態を作り出し、本当に疲れた状態になることも考えられます。しかしながら実際に疲れているのに疲れていると言えないのもストレスです。
そこでマイナスの言葉を使った後に「でも」を付けることが大事です。例えば疲れた。でも頑張った。疲れた。でもその分成果が出た、という風にマイナスの言葉に「でも」を付けるだけで、日本語の性質上必ずプラスの言葉が来ます。そして脳は文章の一番最後に来た情報を印象に残しやすい性質があるため、すべてプラスに変えることができます。
感謝することの科学的メリット
感謝することには科学的に様々なメリットが認められています。例えば感謝することで副交感神経の働きが活発になることが分かっており、ストレスや緊張、不安などが和らぎます。また感謝することで睡眠の質が向上することも分かっています。なぜなら感謝の気持ちを持つことで、不安が和らぎ、交感神経の高まりが抑えられて良質な睡眠とすることができるからです。
感謝している事柄を寝る前にリストアップすることで、数週間後に朝の目覚めがすっきり、気分が良くなったという研究報告があります。感謝の習慣を持つ人は、寛容で抑うつになりにくく、不安や孤独を感じにくい傾向があり、相対的なEQ(心の知能指数)も高い傾向があります。
また、感謝の気持ちを持つ訓練を数週間行ったところ、幸福度がアップし、楽観的になり、頭痛が減少したなどが報告されています。実験では、週の出来事で感謝していることを書いたグループ、毎日のイライラや不快なことを書いたグループ、そしてポジティブ、ネガティブに関わらず影響を与えた出来事を書いたグループに分けると、感謝していることを書いたグループはより楽観的になり、生活の満足度や幸福感がアップしたという結果になりました。
他にも感謝することで脳の機能が向上し、免疫力が高まり、寿命が伸びることが分かっています。そのため、小さな事柄でも感謝する習慣を身につけましょう。
副腎疲労とは
副腎とは、腎臓の上に乗っている小さな臓器です。その働きは、ホルモンの分泌、血糖コントロール、免疫機能、炎症反応など多岐にわたる機能があります。例えば人がストレスを受け続けると、自律神経の交感神経と副腎のホルモン分泌によって対処するようにできています。つまりストレスに関わるあらゆる精神的な問題にも対処できるようにするのがその役割です。
しかし、現代社会に起因する様々なストレスによって副腎への負担が大きくなり、ホルモンの生産性が低下している状態が「副腎疲労」という症状です。この副腎の中枢は、脳の間脳にあるので、つまり「脳の司令塔」にアプローチすることで、副腎疲労を回復することができます。
心の安定には「幸せホルモン」
人の行動に大きな影響を与える脳内物質である「セロトニン」と「オキシトシン」は、幸せホルモンとも呼ばれ、この2つの分泌量が心の安定、つまり人の幸福感に影響を与えることが分かっています。これらのホルモンの分泌量を意図的に増やすことができれば、イライラが解消されたり、ストレスが軽くなるなどの効果が期待できます。
「セロトニン」は、自律神経を整える、不眠症を軽減する役割を持つ脳内物質で、その分泌量がうつ病と関係していると考えられています。「オキシトシン」のストレスの緩和や、感染症の予防まで幅広い役割があると考えられています。
いずれも規則正しい生活を続けること、毎日適度な運動という当たり前の習慣をコツコツ続けことでセロトニンの分泌を促す第一歩です。また良好な人間関係や動物とのスキンシップもオキシトシンの分泌を促してくれます。
また、頭の鍼が脳幹に働きかけて、これらの分泌量を増やす可能性が示唆されています。国内外問わず、薬が効かない心の病(うつ病など)にも鍼灸治療に効果があるということは広く知られています。また心の症状だけでなく体の症状である頭痛、肩首こり、目まい、不眠、頭痛、動悸、疲れやすさなど症状などにも科学的根拠に基づいた効果検証が進められており、薬で対応できない症状への代替治療としても様々な国で活用されています(NIH:米国国立衛生研究所)。
頭の鍼の特徴
当院の頭の鍼は、前頭前野の活性化、交感神経過緊張の抑制、副腎機能を向上させる、脳内物質分泌の促進ために行います。そのため「究極のヘッドスパ」コースのポイントは、置鍼(鍼を打って置く)時間を長くし、パルスによる低周波刺激を与えることです。特に下記の症状の方におススメするコースです。
- イライラなど感情の起伏が激しい(易怒性)
- 気力がない(意欲の低下)
- 落ち込みやすい(情緒不安定)
- 疲労感(脱抑制)
- 集中力、思考、判断力の低下(注意障害)
- 慢性頭痛
- 睡眠障害
- 生理周期の乱れなど
【本コラムの監修】

・経歴
大学卒業後、美容の世界に入り、セラピストへ。豊富な美容知識や実務経験を活かし、その後、10年間は大手企業内講師として美容部員やエステシャンの育成、サロン店舗運営のサポートを行う。現在は、セラピスト、エステティシャン、美容カウンセラー、鍼灸師の経歴を活かし、お肌とこころと身体のトータルビューティースタイルを提案。表面だけでなく根本からのケアとして、老けない生活についてのコーチングを行う。