
当院では、「肌と心と体はつながっている」とし、そのベースにある東洋医学では、部分が全体を映し出すと考えられています。当然、心と体のバランスが取れていると健康ですが、ストレスや生活習慣の乱れなどでバランスが崩れると、不調が現れやすくなります。ただし不調が現れても、人の体には本来「自然に元気を取り戻す力(自然治癒力)」が備わっているため、この力を十分に発揮することができれば、健康な状態へと回復することが可能です。
そして耳は心や体の状態を敏感に映し出す場所でもあり、心と体のバランスを整えるサポートができるのが「耳」です。耳ツボ療法は、欧米諸国などでも効果が認められており、フランスでは神経学の観点から効果が証明され、1990年には世界保険機構(WHO)がその効果を認定しています。この耳ツボ療法は、耳にあるツボを刺激して、全身の不調にアプローチします。
そのアプローチ方法とし、耳を胎児が羊水の中で丸くなる姿に見立てて、耳を全身の縮図とみなすゾーンセラピー(反射療法)が発展してきました。近年では、西洋医学の分野でも自律神経との関わりが明らかになっています。
西洋医学と東洋医学
そもそも西洋医学は、薬や手術によって、症状のもとになっている物質や病変を取り除く治療を行います。さらに血液検査の数値結果やレントゲン、MRIの画像診断をもとに原因を探ることも西洋医学ならではの特徴です。
一方、東洋医学は全身のバランスを重視する医学です。治療は、鍼や灸、ツボ押しなどによって体を整えます。また病気ではない不調の状態にも対応できるのが、東洋医学の強みでであり、不調の根本原因を探ることから始まります。例えば「眠れない」「イライラする」「なんとなくだるい」といった体の不調は、検査で異常が見られない場合、西洋医学では「原因不明」と診断されることもありますが、東洋医学では、病気と診断されていない症状を「未病」と呼び、不調の根本原因を探って治療を行います。
そして「なぜ不調が起こっているのか」「何が本当の原因なのか」という視点は、耳ツボの施術を行う上でかかせません。例えば腰痛でも、ストレスが原因(内因)なのか、姿勢による原因(外因)なのか、生活習慣が原因(不内因)なのかによって、押すべきツボが異なってきます。
そして、現代人に多く見られるのが、生活習慣がもたらす不調です。これらを不内外因とし、内因にも外因にも当てはまらない、現代的なライフスタイルによる原因の不調です。例えば偏った食生活、寝不足、運動不足といった生活習慣の乱れや、スマホやパソコンの使いすぎによる目、首、脳の疲れなどが挙げられます。これらの「外因」「内因」「不内外因」は、互いに関係し合い、すぐには不調の理由がわからないケースもあります。そのため問診によって、自分の心や体の変化を注意深く話を聞き、その不調の理由を探り、その方に合った耳つぼ療法が必要になります。
耳ツボは自律神経とつながっている
自律神経は、脳の視床下部を中心に、全身に張り巡らされていて、常に休まず働き続けています。この自律神経は、「交感神経」と「副交感神経」に大きく分けられます。「交感神経」は、日中に活動する時に活発になり、またストレスを感じた時にも優位になります。例えば心臓の鼓動を早め、血管を収縮して、血圧を上げて体を緊張状態にさせることで危機的状況を回避させようとします。この交換神経が休みなく働き続けると、不眠、頭痛、肩こり、胃腸の不調などにつながります。
一方の「副交感神経」は、リラックス時や休息中に作用し、血管を拡張させて心臓の鼓動を落ち着かせ、血圧を下げる働きがあります。そのため副交感神経が優位になると呼吸が深く落ち着きます。また胃が収縮して胃液の分泌が増え、消化を助けます。しあしストレスが続き、この機能が弱まると、体が疲れやすくなり、免疫力の低下にもつながります。
このように交感神経、副交感神経は、どちらが強すぎても弱すぎても不調が起こるため、この二つがバランスよく働くことで、心と体の調子が保たれます。しかし副交感神経の働きは、男性は30歳頃から、女性は40歳頃から低下し始めると考えられています。それを防ぐために副交感神経の7~8割を担う迷走神経をツボ刺激することが大切です。
迷走神経は、脳から首、心臓、肺、胃、腸などへ広がる副交感神経の一つで、呼吸や心拍の安定化、消化吸収、免疫バランスを整える役割があります。また脳腸相関という言葉があるように、脳と腸を繋ぐ神経が迷走神経であることが明らかになっており、この神経の枝が耳へも伸びています。
そして、耳ツボを刺激することで副交感神経を意識的に活性化できることが、心拍の時間間隔を測定したデータでも確認されています。この迷走神経は、内臓のコントロールだけではなく、菌やウイルス、がん細胞などと戦うための免疫細胞のコントロールも担っています。実は、私たちの体を守ってくれる免疫は、高すぎても低すぎても不調を招きます。免疫が強く働きすぎると、アレルギーや自己免疫疾患(自分の体を攻撃してしまう病気)が起こります。逆に弱すぎると感染症にかかりやすくなります。
特に鍼灸が自己免疫疾患に対して有効である根拠の一つに、この迷走神経への関与が挙げられています。実際、視床下部の血流を改善する鍼灸治療を行うなかで、迷走神経が内頸動脈と内頸静脈を包む鞘の中を走行していることが確認されています。またこの迷走神経は耳にも分布しており、そのことが耳ツボ刺澈の有効なポイントにつながっています。

耳ツボの仕組み
耳のツボを押すことで、体の別の場所で起こっている不調が和らぐことがあります。これは体内にある経絡(体のエネルギーや栄養、水分が通る道)を通じて不調の部分を刺激し、良い影響を与えることができるからです。そして東洋医学で大切なのは、痛みや違和感など、目の前のつらい症状だけを診るのではなく、その原因に着目することです。心身のバランスが崩れていることが、病気や不調の元になっているため、それを耳ツボから整えることで自然と体が元気になっていきます。
その耳ツボと体をつなぐのが経絡の仕組みです。良く例えられるのが経路は、電車が通る線路で、その線路(経路上)にある駅がツボ(経穴)です。ツボは、皮膚上や皮膚の中にあり、ツボに刺激を与えると、栄養や水分の巡りが促され、臓器や筋肉、皮膚の働きが活性化し、自律神経にも影響すると言われています。
この経路には「エネルギー」「栄養」「水分」が流れており、これらは生きるために欠かせない要素です。東洋医学ではエネルギーを「気」、栄養を「血」、水分(体液)を「水(津液)」と呼びます。「気」は体を動かすエネルギーのことで、「気」は血液や体液、臓器の働きを支え、自律神経系や内分泌系にも関わります。気の流れがスムーズになると内臓(臓腑)が元気になり、体調も整っていきます。気が滞ると、のぼせ、動悸、不安感、気分が落ち込んでやる気が出ないことがあります。
そして東洋医学の「血」は、西洋医学の血液だけでなく、栄養やホルモンも含まれています。全身に酸素や栄養を巡らせ、肌や髪の潤い、体の活力、心の安定に関わっています。巡りが滞ると、月経異常や肌のくすみ、乾燥の原因になります。
また「水(津液)」は、鼻水や尿、リンパ液などの体液を含む、体内の水分のことです。老廃物を排出するだけでなく、体の内外に潤いを与えて熱を抑え、免疫力にも関わっています。また水の流れが滞ると、むくみや目眩、尿量の異常が見られることもあります。
これら「気・血・水」は体が健やかな状態であれば、経路を通って体の隅々まで巡りますが、その流れが一つでも停滞するとバランスが崩れ、不調につながります。そして、その不調のサインがツボ(経穴)に現れます。
耳につながる経絡
私たちの体には、「経絡」と呼ばれる、経絡(体のエネルギーや栄養、水分が通る道)があります。そこには気・血・水(津液)が流れ、細胞や器官などに届けられています。その経絡には、縦に流れる「経脈(けいみゃく)」と、横につながる「絡脈(らくみゃく)」があり、全身のあらゆる部位につながっています。そして経絡の途中にはツボ(経穴)があります。そして気・血・水(津液)の流れが、このツボを通じて調整されることで、体のバランスが整っていきます。
また、耳にも多くの経絡がつながっています。経脈(縦の流れ)では、胆経・小腸経・胃経・大腸経・膀胱経(支流)・三焦経があり、絡脈(横の流れ)では、肝経・心経・脾経・肺経・腎経が耳に関わっています。
つまり、六腑(胆・小腸・胃・大腸・膀胱・三焦)は経脈を通じて、五臓(肝・心・脾・肺・腎)は絡脈を通じて、耳とつながっています。つまり耳は全身の状態を映す「鏡」のような存在であり、経絡が耳に集まっていることもあり、耳は心と体のバランスを整える大切な役割を果たしています。
イヤホン難聴
人混みの中で、相手の声が聞きづらいと思ったことありませんか。世界中で若者の難聴が増えており、WHOの試算によると12歳から35歳の約半分が、将来難聴になるリスクを持っていると言われています。実は1 度壊れてしまった耳の細胞は復活しません。
私たちの耳の奥には、蝸牛(かぎゅう)という器官(かたつむりようような)があり、蝸牛の中には有毛細胞と言う大事な細胞が並んでいます。それが大音量で音を常に聞き続けると、この細胞にダメージが積み重なり、これがイヤホン難聴の原因になると言われています。
また、大音量でなくても危険性があると言われており、およそ100dBでイヤホン難聴になります。そもそも難聴は聞こえずらいだけでなく、認知症の原因にもなります。そのため大事なことは、今残ってる細胞を守ることです。
大切な耳の細胞を守るため、まずは音量を60%以下にすること、目安としてはイヤホンしていてもなんとなく周りの音が聞こえるぐらいのレベルにしましょう。またずっと付けていることが良くないため、1時間つけているのであれば、5分から10 分はイヤホンは外して休ませることが大事です。
そして、ノイズキャンセリング機能を活用しましょう。なぜならノイズキャンセリングをしてると、大きく音を出さなくても良く聞こえるからです。周辺のを音をカットして、小さい音量でも聞こえるような環境をつくることが大事です。いずれにせよ、耳は消耗品だと思って大事にすることが必要です。
五行論で不調の原因を探る
五行論の詳しい説明は以下のリンクを先にご覧ください。
むくみ、冷え
むくみ・冷えは、加齢や寒い気候によって「水(腎)」の状態が弱くなることで出てくる症状で、疲労も感じやすくなります。足首や顔などにむくみが出ていたら、まずは「水(腎)」を診ます。

この五行論を見ると、「金」が「水」を補っていることがわかります。言い換えると「金(肺)」を強めることで「水(腎)」の症状が緩和されることになります。つまりむくみや冷えは、腎(水)に問題があります。そこで腎の巡りを活発化さえるために、力を補う肺(金)を刺激します。
また「肺」の主な作用に「宣発粛降作用(せんぱつしゅくこうさよう)」があります。これは「脾」でつくられた「水(体液)」を体の隅々まで行き渡らせ、必要のない水を体外に排出する役割のことです。そのため「金(肺)」を活性化させて体内に水の流れを起こし、結果的にむくみや冷えを解消することになります。

腎のツボは、耳の上部内側寄りにあり、肺のツボは下部の内側の2か所にあります。ここを刺激して、むくみや冷えを緩和することができます。
イライラ
東洋医学では、季節や気候の変化が体調に大きな影響を与えると考えられています。「肝」は、感情をコントロールする働きがありますが、特に春になると、このバランスが崩れやすく、イライラ、怒りっぽくなるといった心と体の変化が出やすくなります。 当然、春は気温や日照時間の変化が大きく、自律神経が揺らぎやすい時期でもあるため、交感神経が優位になりやすく、興奮や緊張が高まって情緒が不安定になります。また花粉症などのアレルギー症状も、免疫や自律神経の乱れと関連しています。
イライラが強くなるのは、五行では「木(肝)」が強すぎる状態と捉えます。怒りの感情が強く出ているときは、それを鎮めるために「脾」と「胃」のツボを刺激します。そこから根本の「木(肝)」を整えるために、「肝」のツボにアプローチします。

【本コラムの監修】

・経歴
大学卒業後、美容の世界に入り、セラピストへ。豊富な美容知識や実務経験を活かし、その後、10年間は大手企業内講師として美容部員やエステシャンの育成、サロン店舗運営のサポートを行う。現在は、セラピスト、エステティシャン、美容カウンセラー、鍼灸師の経歴を活かし、お肌とこころと身体のトータルビューティースタイルを提案。表面だけでなく根本からのケアとして、老けない生活についてのコーチングを行う。

















