ある試算によれば私たちが在宅している平均時間は年間6,000時間にも及ぶとされています。その中で観葉植物は、私たちの心身の健康を整えてくれます。観葉植物に触れることによって自律神経が整ったり、ストレスが解消されたり、血圧が下がったり数え切れないほどのメリットがあります。
観葉植物の2つのメリット
観葉植物には大きく分けて、不純物を取り除きお部屋の空気をきれいにしてくれるメリットと香りや色によって癒されるという2つのメリットがあります。
まず、空気清浄効果については、NASAの研究によれば観葉植物のうちオリヅルランという観葉植物には、非常に高い空気清浄効果があることが分かっています。オリヅルランは、育てるのも非常に簡単で、ホルムアルデヒドを吸収してくれることが分かっています。
ホルムアルデヒドは建材(壁紙の接着剤など)に含まれる有害物質で、健康上の被害をシックハウス症候群と言います。また芳香剤や日用品からもホルムアルデヒドが発生することが分かっています。
さらにオリヅルランを含むあらゆる観葉植物はこのような有害物質の他に、空気中の二酸化炭素を吸い込んでそれを酸素に変えてくれるメリットがあります。
私たち人間にとって最適な二酸化炭素濃度は1000ppm以下とされていますが、実験により締め切った寝室では朝方になると二酸化炭素濃度が4000ppmを超えることが分かっています。つまり寝ている間に酸素不足の状態に置かれていることになります。酸素不足の寝室の中で寝ていると睡眠の質が大きく低下してしまいます。
また観葉植物の中には、空気清浄機能と共に加湿機能があるものがあります。例えばヤシ類の観葉植物は空気中にたくさんの水分を送ってくれ、天然の加湿器としての役割を果たしてくれます。一方で乾燥した地域に生息する植物は、自分自身の中に水分を蓄えようとするため、逆にお部屋の水分を吸い取ってしまうという作用があります。例えばサボテンなどの砂漠に咲いているような植物は、加湿という点では逆効果になってしまいます。
一方で空気清浄効果の他にも観葉植物には、その香りや見た目によって私たちの心を癒してくれるメリットもあります。ある研究においては観葉植物を置いた机と何も置いていない机を用意し、その上で計算問題にチャレンジしてもらうという面白い実験が行われています。計算問題は心理的負担をかけるものであり、当然ストレスがかかることになります。このストレスを利用して、観葉植物の有無によってストレスホルモンであるコルチゾールの濃度がどのように変化するのかが検証されました。
その結果、観葉植物が置いていない机では、コルチゾールの増加率が200%以上であったのに対し、観葉植物が置いてある机ではコルチゾールの増加が100%以内に収まるという研究結果となりました。これらから観葉植物が視界に入るだけで、私たちが受けるストレス が半分以下に軽減されたということが分かりました。
また別の研究によれば、室内に置いた観葉植物と直接触れ合うことが私たちの心理的なストレスを下げてくれる効果があると示されています。これは観葉植物が植えられている土には様々な微生物が含まれていて、これらの微生物が発する物質が自然の抗うつ剤としで機能するためであると考えられています。
さらに観葉植物が持つ香りには、素晴らしいリラックス効果があります。例えば森林の香りはフィトンチッドと呼ばれ、その香りを嗅ぐことによって自律神経を安定させたり、不安を解消したりする効果があると知られています。最近はフィトンチッドがストレスホルモンを減少させることで、私たちの脳の活動性が高まるということも分かってきました。
そして観葉植物が持つリラックス効果としてマイナスイオンがあります。マイナスイオンとは、空気中に存在する特別な水分子のことで、森や滝の近くで発生するのが知られています。森林浴が体に良いとされているのは、このようなマイナスイオンの効果によるものとされています。
緑地の近くに住むことで老化防止
2023年6月28日アメリカの科学誌サイエンスアドバンシスで発表された研究結果によると、緑地など自然との触れ合いが老化防止に役立つことが分かっています。以前から主に循環器の働きを抑止し、死亡率を低下させることが言われていました。
研究チームは約20年をかけ、シカゴなど4つの都市を対象に約 900名の追跡調査を行い、衛星画像を使って対象者の住んでいる場所と公園などの緑地との距離を測定しました。それからメチル化というDNAの化学反応を調べた結果、居住地から半径5km以内に緑地が3割ある人は2割の人に比べ、生物学的に2.5歳は若かったことが分かりました。
また、居住地との距離の測定の他、緑地へよく出かけるか否かという生活スタイルでも調査が行われていおり、緑地へよく出かける人は出かけない人に比べ生物学的に若い傾向が見られました。これらの研究から、室内に緑を多く配置することで老化予防になる可能性が考えられます。
グリーンエクササイズ
自然に触れるのは無料でできるセラピーのようなものです。グリーンエクササイズは、緑豊かな場所で行う運動や活動のことです。例えば、公園で散歩する、庭でガーデニングをする、海や川が近くを散歩するなど、自然に触れる時間を作ればOKです。現代人は自然から切り離されてコンクリートに囲まれた環境で過ごしています。
しかし、私たちの祖先は長い間自然と共に生きてきたため、私たちには自然を愛する本能である「バイオフィリア」が備わっています。私たちは本能的に自然を求め、自然に触れることによって、その本能が満たされて健康効果やメンタルの安定効果、炎症が減る効果など様々な効果が得られます。このような効果は実際、様々な研究によって実証されています。
例えばイギリスのエセックス大学のメタアナリシスによると、自然の中で体を動かすと開始僅か5分で気持ちが前向きになり、自尊心が改善するということが明らかになっています。また自然環境は、ストレスを大幅に軽減し、メンタルが安定することも分かっています。
また、毎日ストレスで睡眠のトラブルを抱えている人も多いことでしょう。そんな時こそ、自然に触れることによってストレスが軽減され、リラックして自律神経が安定するため、睡眠の質が高まることが明らかになっています。なぜなら自然に触れるために外に出ることによって、私たちは強制的にある程度の日光を浴びることにもなるからです。20から30分の日光浴は、私たちの皮膚でビタミンDを生成し、睡眠の質を高めてくれます。
どうしても身の回りに公園などの自然環境がないという人は、観葉植物を部屋の中に散りばめて欲しいと思います。観葉植物によってもストレスが軽減され、集中力や注意力が向上し、生産性も向上することが分かっています。特にお勧めは寝室に置くことです。私たちが寝ている間、部屋の中では二酸化炭素の濃度が高まっています。二酸化炭素の濃度が高まっている部屋では、睡眠の質が低下してしまうことが明らかになっています。そこに観葉植物を置けば、観葉植物が二酸化炭素を吸収し、酸素を放出してくれます。その結果、睡眠の質が高まります。
アロマテラピーでストレスケア
アロマとは正式にはアロマテラピーの略で、植物から抽出した香り成分を使って心身を穏やかにする治療法です。アロマテラピーは紀元前から治療として使われており、その健康効果については歴史の長さが証明してくれるでしょう。
アロマテラピーには、自律神経を整えて心身をリラックスしてくれる効果や集中力を高めてくれる効果があります。
私たちには味覚や触覚など様々な感覚がありますが、中でも匂いを感じる嗅覚は、私たちの脳に直接届く感覚として知られています。嗅覚を脳に届ける嗅神経は大脳辺縁系と呼ばれる脳の部位に直接リンクしています。この大脳辺縁系には、集中力を司る部位が存在するため、嗅覚を刺激するアロマによって集中力がアップすることが期待されます。
このようにアロマテラピーが脳に働きかける良い影響については、ファンクションMRIという脳の血流を視覚化する装置によって実証されています。集中力アップのアロマとしては、レモンやローズマリー、ペパーミントなどがあります。
一方で、ストレスが多すぎる現代社会においては、アロマはストレスを解消してくれる素晴らしい手段の一つです。アロマを使用することによって、リラクゼーションや睡眠の質が向上する研究もあります。またアロマの良い香りによってストレスホルモンであるコルチゾールの分泌が抑えられることも研究によって指摘されています。
インテリアフレグランスオイル
ルームフレグランスは、お部屋に良い香りを漂わせてくれる芳香剤のことです。無印には様々な香りのフレグランスがラインナップされており、中でもお勧めしたいのがウッディの香りのフレグランスです。こちらはユーカリやひのきといった木材の香りをブレンドした、優しく包み込むような香りが特徴になっています。実はこのような木の香りには様々な健康効果があることが実証されています。
森林浴という言葉を聞いたことがあると思いますが、森林浴は森の中を歩くことで自然の空気に触れ、その本質としては木々が生み出す正常な空気を吸い込むことにあります。木々の香りには私たちの自律神経を整えて血圧や脈の乱れを直したり、脳をリラックスさせる効果があります。また最近では木の香りを 嗅ぐことでストレスレベルが低下し、コルチゾールが減って免疫力がアップすることも明らかになってきました。さらに木の香りには防虫効果や殺菌効果もあります。
部屋が汚いと老化が進む
散らかっている部屋の状態が老化を進行させる原因になります。最近多くの研究で部屋が散らかっていたり、家に物が溢れかえっていることによって、健康に様々な悪影響があることが明らかになってきています。
特に空間のあり方は、私たちの精神状態や集中力、睡眠や食の選択に至るまで、人に様々な影響を及ぼすということが複数の研究で明らかになっています。さらに部屋の散らかり度合いが大きいほど生理的ストレス反応が大きくなることが分かっています。
そのストレス反応の大きさには個人差があり、多少散らかっていても気にならない人もいれば、完璧に片付いていないと気が済まない人もいます。どちらの人であっても散らかった部屋が少なからず脳に影響を及ぼしているのは明らかです。またプリンストン大学の研究では、人は無秩序な状態が常に目に入り続けると集中力が低下することが分かっています。
一方で散らかった部屋や部屋に物が溢れかえっていると、慢性的なストレスの原因になって老化を引き起こすことが明らかになっています。この慢性的なストレスは活性酸素を発生させて、私たちの体の細胞を錆びつかせ、細胞が錆びつけば当然老化が進行します。
ローテーブルのデメリット
ローテーブルを使うと姿勢が悪くなり、特に中高年に非常に多い危険な病気になったり、また40代以降の女性にとっても老化を加速させる病気になる原因になります。ローテーブル(円卓やこたつなど)を使っていると無理な姿勢、つまり猫背になります。猫背には数々の恐ろしいデメリットがありますが、代表的なものに誤嚥のリスクがあります。
誤嚥は、本来食べ物を摂ると口から食道を経て胃へと送り込まれます。しかし誤って肺に入ってしまう状態を誤嚥と言います。これが危険な状態になる誤嚥性肺炎があり、誤嚥した食べ物の塊が肺に入ってしまい、食べ物に含まれる雑菌が肺の中で増殖してしまうことになります。実はこれが中高年の死因の中でも非常に多い病気の一つです。
一方で、ローテーブルを使うことで最も恐ろしいのが、腰椎の圧迫骨折です。本来背骨は椎骨という複数の骨が積み重なってできており、正しい姿勢の時は圧力も分散されるようにできています。しかし猫背によって椎骨が前のめりになってバランスを崩し、前方に圧力がかかってしまうと腰椎の圧迫骨折を引き起こしてしまう大きな原因になります。それが40代以降の女性に多い病気の一つであり、閉経後の女性にとっては注意すべきものです。
例えば、閉経後はエストロゲンというホルモンが急激に減少することによって骨が脆くなるため、エストロゲンの減少と猫背の2つの影響で多くの女性が腰椎の圧迫骨折に悩まされるケースがあります。
さらに、ローテーブルで一度腰を下ろすと中々立ち上がるのが億劫になり、活動量が低下してしまうデメリットがあります。他にも血流が悪くなることで冷え性を悪化させてしまうなど良いことが一つもありません。
カビ、ダニ、ホコリのデメリット
カビを放置してしまうと私たちの体に大変深刻なダメージが与えられてしまいます。お部屋のカビを放置することによって起こる悪影響として真っ先に挙げられるのが、鼻や肺をはじめとする呼吸器の炎症です。例えばアレルギー性鼻炎の要因となるハウスダストの原因の多くがカビやダニであると言われています。また夏型過敏性肺炎やアスペルギウス症など、カビが原因で起こる深刻な呼吸器疾患は無数に存在します。またシックハウス症候群の原因となるホルムアルデヒド以外にも、カビによっても引き起こされてしまうことが分かっています。
そのようなカビを防止するために小まめにお部屋を換気するとともに、万が一カビが発生してしまった時はとにかく早めに解消することが大切です。なぜならばカビは繁殖力が高く、放置しておくと胞子が散らばって一瞬にして部屋中に広がってしまうからです。
一方で、特にカーペットにはダニや雑菌など部屋中のありとあらゆる汚いものが詰まっています。そのようなカーペットに寝転んだりしたら、カーペットが吸収したダニやホコリなどのゴミクズが空気中に舞い上がり、それを吸い込むことになります。
またカーペットにはつまずきやすいという大きなデメリットもあります。年を取れば取るほど筋力が落ち、ちゃんと足が上がっていると思っていても、意外なところでつまずいていまいます。特に年を取ると骨まで弱くなるため、一度部屋の中で転んだだけで骨折してしまいます。
【コラムの監修】
・経歴
大学卒業後、美容の世界に入り、セラピストへ。豊富な美容知識や実務経験を活かし、その後、10年間は大手企業内講師として美容部員やエステシャンの育成、サロン店舗運営のサポートを行う。現在は、セラピスト、エステティシャン、美容カウンセラー、鍼灸師の経歴を活かし、お肌とこころと身体のトータルビューティースタイルを提案。表面だけでなく根本からのケアとして、老けない生活についてのコーチングを行う。