乾燥肌とマグネシウムの関係

マグネシウムは体内で300種類以上の酵素を助ける必須ミネラルで、筋肉・神経・骨などの働きに関わります(厚生労働省 e-ヘルスネット)。肌との関係については、角質のバリア機能やうるおいを支えるセラミドの働きと関連づけて語られることがあり、マグネシウム不足が肌の乾燥やゆらぎに関わる可能性が言及されることがあります。

マグネシウムは健康に欠かせない

マグネシウムは健康を維持する上で欠かせない存在です。マグネシウムは、生体内に約25g存在し、そのうち60%は骨に存在、残りの40%は筋肉や脳、神経、肝臓、血液に存在しています。このマグネシウムは350 種類以上もの補酵素の活性化に役立っています。

補酵素とは消化、吸収、代謝など体を活性化する源です。健康を維持する上で必要不可欠なミネラルは必須ミネラルに分類されており、マグネシウムもその中の一つです。マグネシウムはエネルギー代謝をはじめ、筋肉や神経の機能、血圧、体温、血糖値の調整などを行っている栄養素の一つです。また血液循環の維持や神経情報の伝達にも関与しています。

また、マグネシウムとカルシウムは心身の機能のバランスを保つ上でとても大切な役割を果たしており、理想のバランスはマグネシウム1に対し、カルシウム2と言われています。どちらかが不足して、このバランスが保てなくなると骨量が低下したり、ホルモンのバランスが崩れるなど様々な不調を招きます。

またマグネシウムは、ビタミンB1、B2、B6が体内で活動する際に必要な酵素の構成要素です。そのためマグネシウムが不足するとビタミンB群の働きが損なわれることによって様々な体の不調をきたすことになります。

冬になると何故肌は乾燥するのか

寒さによって、カサカサのお肌になるのはなぜか。それには様々な理由があります。皮膚のいちばん外側の角質層は、皮脂膜・角質細胞間脂質(セラミドなど)・天然保湿因子という三つの要素でうるおいを保っています。なかでもセラミドは水分を挟み込むように保持し、バリア機能の要とされています(製薬会社マルホ「乾燥肌」情報/環境再生保全機構)。

冬は空気の乾燥と暖房で水分が奪われやすく、このバリアが乱れると乾燥やかゆみが起こりやすくなります。マグネシウムは全身の代謝・酵素反応に関わるミネラルであり、皮膚のバリア機能を支える一因として言及されることがありますが、単独で乾燥肌を治すものではなく、あくまで土台となるものです。

また、お肌の深いところにある真皮にはコラーゲンがあり、それが水分の保持やお肌のしなやかさを保つ役割をしています。またコラーゲン同士の間には、ヒアルロン酸などの基質があり、このヒアルロン酸も高い保水能力があります。また、こられを産生する繊維芽細胞が僅かに真皮に散在しています。

一方で、表皮と真皮の境界には基底膜があり、そして表皮には表皮角化細胞(ケラチノサイト)があります。また表皮の上に角層があり、セラミドなどの脂質、アミノ酸、尿酸があり、これらも水分を保持する機能があります(天然保湿因子)。この角層の上に皮脂膜があり、これらを含めお肌の水分を保持することができています。

しかし、私たちのお肌の表面からは常に水分が空気中に蒸発しています。それをコントロールするため、体液が基底膜を通じて表皮に滲みだし、表皮にある表皮角化細胞(ケラチノサイト)に栄養と水分を補給し、その後に角層に達します。

しかし、天然保湿因子のバランスが崩れていると水分をうまくキャッチできません。もちろん角層上の皮脂膜がしっかりしていれば、その水分は保持できます。しかし冬になるとお肌の血液量が少なくなり、当然お肌の代謝が低下します。その結果、角層の産生や皮脂の分泌が少なくなります。

また、寒さによって汗をかかないため、どんどんお肌に供給される水分も少なくなり乾燥していきます。さらに冬場は湿度も少なくなり、お肌の表面から水分が蒸発してしまいます。特に皮脂の分泌量が少ない目の周り、手足、腰など顕著になります。

冬になぜ肌が乾燥するのか

冬の乾燥肌対策

乾燥肌でお悩みの方で温泉、あるいは海水浴でお肌の調子が良くなったという方がいました。その理由にマグネシウムの保湿作用が挙げられます。マグネシウムが乾燥肌の改善に効果がある理由は、エネルギーの代謝に重要な役割を果たしているからです。

マグネシウムは体の補酵素と知られており、体の中ではエネルギーの元となるATP(アデノシン3リン酸)を分解する酵素の働きを担っています。つまり、マグネシウムが皮膚細胞の中で不足すると、細胞の代謝が低下し、その結果皮膚のバリア機能が低下します。そのため、お肌のマグネシウム不足を補正することで皮膚のバリア機能が改善することが分かります。

エプソムソルト

私たちの体は皮膚を通じてマグネシウムを吸収することができます。湯船にエプソムソルトを入れると痛みが緩和されてストレスが減少し、ぐっすり眠れるようになると聞いたことはないでしょうか。このエプソムソルトは硫酸マグネシウムと呼ばれます。発汗や血行促進、保温効果があり、デトックスに効果的と言われています。

また、マグネシウムを入れたお湯は、水道水に含まれる塩素が除去され、なめらかな肌触りになると言われています。さらに弱アルカリ性を帯びているため、毎日続けるうちに毛穴の奥の皮脂汚れまで徐々に分解されて美肌になっていきます。さらにマグネシウムは角質細胞を結合させるセラミドの一種の合成を促し、お肌のバリア機能を強化する作用もあります。

マグネシウム不足が引き起こす身体の不調

マグネシウム不足が引き起こす体の不調

皮膚のバリア機能が低下

マグネシウムは保湿効果が高く、マグネシウムの作用によってアシルセラミドの剛性が高まり、皮膚のバリア機能が回復します。逆にマグネシウムが不足することで皮膚のバリア機能は低下し、アトピー性皮膚炎などの症状が引き起こされます。

老化の進行が促進

マグネシウムは、酸化ストレスを軽減する補酵素と言われています。酸化ストレスとは、活性酸素を生み出す物質と抗酸化物質のバランスが崩れることによって引き起こされます。活性酸素は老化の進行を促進させますが、マグネシウムは老化の進行を抑える働きがあります。

月経前症候群の症状の悪化

例えばPMSの代表ともいえる精神の落ち込みやイライラといった症状も、マグネシウムと大きく関わっています。PMSに限った話ではなくどんな人でもストレスを抱える瞬間はあるかと思います。ストレスを感じることでマグネシウムと一緒にカルシウムも体外へ排出されます。体内のマグネシウムやカルシウムが不足することで神経伝達物質であるドーパミンが減少し、同時にセロトニンも減少するためメンタルに不調が現れ、イライラが増大します。

2型糖尿病

2型糖尿病は、さまざまな研究でマグネシウムが不足すると血中のブドウ糖を細胞に取り込むインスリンの働きが悪くなることや、インスリンの分泌量が減ることが分かってきました。

食生活の変化で一時的に日本人の脂質摂取量やカロリー摂取量が増えていきましたが1980年代以降、それらの摂取率は横ばいになっているにも関わらず糖尿病の人は増え続けています。またマグネシウムが豊富な大麦や雑穀などが中心の食事から高脂肪・高タンパクな食生活に変わっていった時期と2型糖尿病患者が増えた時期が重なっています。つまり脂質やカロリーの過剰摂取でだけが原因ではなく、使う食材や摂る栄養の質の変化が糖尿病の発症に深く関わっていると考えられます。

メタボリックシンドローム

メタボリックシンドロームという言葉が急速に広まり、メタボ=内臓脂肪型肥満というイメージがすっかり定着しました。日本の診断基準では、メタボとは腹部肥満に加えて糖代謝異常、脂質代謝異常を高血圧のうち2つ以上を有する状態を指します。放っておくと動脈硬化が進行して心筋梗塞、脳梗塞など命に関わる病気につながっていきます。

この腹部肥満とは、摂り過ぎたエネルギーが内臓脂肪として蓄えられることです。すると私たちの体の中にはアディポサイトカインという悪玉物質が多く分泌され、インスリンの働きを邪魔します。これをインスリン抵抗性といいますが、マグネシウム不足単独でもインスリン抵抗性を引き起こし、糖代謝異常、脂質代謝、異常高血圧が起こりやすくなります。マグネシウム摂取量が多い人はメタボや糖尿病発症のリスクが小さいという研究論文もあります。

また、マグネシウムが不足してカルシウムの割合が高くなると動脈硬化や糖尿病メタボの発症率が高くなり、マグネシウム摂取量が1日100mg 増えるごとにメタボのリスクが17%、2型糖尿病リスクは14%低下するといわれています。

骨粗鬆症

年齢とともに骨の密度が減って弱くなり、骨折しやすくなるのが骨粗鬆症です。女性に多い骨粗鬆症の予防にはカルシウムを必要ですが、それと同じくらいマグネシウムも欠かせません。体内のマグネシウムの50%から60%は骨にあり、骨の主成分といえばカルシウムが浮かびますが、実はマグネシウムも主な成分の一つです。カルシウムがリン酸と結びついたリン酸カルシウムが骨の強度を強め、マグネシウムはリン酸マグネシウムとして骨の柔軟性や弾力性を高める役割をしています。

骨は硬いだけでは外から力が加わると折れてしまいますが、硬度とともに柔軟性や弾力性も備えることで簡単には折れなくなります。これは歯についても同じようなことが言えます。

骨にあるマグネシウムの2/3は、骨の主成分である結晶内に組み込まれており、残り1/3は結晶の表面にあります。マグネシウムが不足するとまず結晶表面のマグネシウムが細胞の外に出て行きます。するとその出て行ったマグネシウムを補うために結晶内部にあるマグネシウムが動員されます。その結果、骨の内部の結晶がスカスカになり、骨密度が低くなる骨粗鬆症が引き起こされます。つまりマグネシウムは、強い骨や歯を作るために必要不可欠な栄養素です。

こむら返り

所謂、足がつった状態のことをこむら返りと言いますが、自分の意思とは関係なく足の筋肉が突然収縮してしまうために起こります。夜中に寝ている時や明け方、運動中、妊娠中に起こることが多く、急な激痛を伴う困った現象です。また糖尿病の人もよく足をつることが知られています。こむら返りには、冷えや運動不足、筋肉疲労など様々な要因があると言われていますが、ミネラル不足もその一つです。

よく足がつる原因はカルシウム不足と言われていますが、筋肉が収縮と弛緩をスムーズに繰り返すためには、カルシウムとマグネシウム、このどちらも必要不可欠です。ざっくり言えばマグネシウムは筋肉が緩む方向に、カルシウムは縮む方向に作用しています。この2つのミネラルがバランスを保っていることで筋肉がスムーズに動いています。

マグネシウムが不足すると筋肉を緩めることができず痙攣を起こしやすくなります。例えば糖尿病の場合は、尿中へのマグネシウム排泄量が増えるため足がつりやすくなってしまいます。また特に激しい運動ではマグネシウムが消費されてこむら返りが起こりやすくなるため、運動するときは水分やミネラル、特にマグネシウムの補給が大切です。

また、この他にもマグネシウムには精神を落ち着かせてくれたり、便秘を改善したり、尿路結石の再発予防や月経前症候群を軽減したり、つわり対策に必要な栄養素としての働きがあります。

敏感肌と乾燥肌

乾燥肌は、お肌の表面をカバーする角層や皮脂膜に穴が開いて、水分が失われた状態です。一方で、敏感肌はその穴の開いた場所から、化粧品などの様々な刺激が通過してしまう状態です。この状態になると、例えば下着が擦れやストッキングによるチクチクや痒みにも繋がります。

このチクチクや痒みはヒスタミンと言う物質が放出されるため起こります。実は、マグネシウムが不足すると肥満細胞のcAMPが不足し、ヒスタミンが放出しやすくなることで起こることが分かっています。これがアトピー性皮膚炎の容易刺激性を引き起こします。

そもそも体のマグネシウムが不足すると、それを補正するために骨や細胞内から血液中にマグネシウムが放出され、血液中のマグネシウムの濃度が正常に保たれます。しかしお肌の細胞のマグネシウム濃度は低下し、ヒスタミンが放出されて痒みに繋がったり、代謝が低下してバリア機能の回復が遅くなります。

このように、お肌のバリア機能の回復には、マグネシウムなどのバランスが重要な働きすることが分かります。また精神的ストレスは、活性酸素を生じさせるだけでなく、血液中からのマグネシウムの排出を促進することも明らかになっています。

お肌がかさつく、痒いなどの症状を感じたら、マグネシウムを食事だけでなく皮膚からも補充するようにしましょう。乾燥肌、敏感肌を防ぐためには、保湿を中心としたスキンケアが大切です。

マグネシウム不足のサイン

次の項目に多く当てはまるほど、肌のバリアがゆらぎやすい状態かもしれません。あくまで生活を見直す目安であり、症状が強い場合や長引く場合は自己判断せず皮膚科を受診してください。

マグネシウム不足のサイン
  • 足がつりやすい
  • まぶたがピクピクする
  • 手足がよくしびれる
  • 疲れやすい
  • 記憶力の低下
  • 落ち込みやすい
  • イライラしやすい
  • ストレスを抱えている
  • 片頭痛
  • 睡眠不足
  • 便秘
  • 食欲がない
  • 高血圧
  • 冷え性
  • 飲酒をよく嗜む

これらのうち6つ以上当てはまった方は要注意です。マグネシウムが不足によって、これらの症状が引き起こっている可能性が高いため、普段の食事に 積極的にマグネシウムを摂り入れるようにしましょう。

さらにマグネシウムを詳しく

マグネシウムはミネラルの一種です。マグネシウムはミネラルの中でもカルシウムやナトリウム、カリウムとならんで1日の摂取量が100ミリグラム以上必要な必須使用ミネラル7種類の一つに分類されています。

マグネシウムは、主に骨や歯をつくったり、神経の伝達や筋肉の収縮を手伝ったり、血圧をコントロールしたりと身体機能のバランス調整に深く関わっています。他にも350種類以上の酵素を活性化させ、体内の様々な代謝、化学反応をサポートし、健康長寿を実現するために必須の栄養素です。

しかし、欧米では早くからマグネシウムの摂取基準が決められていましたが、日本では最近になってようやくマグネシウムの重要性と日本人のマグネシウム不足が認められてきました。

厚生労働省の1日当たりの食事摂取基準を見ると、どの年代であっても男女ともにマグネシウムが足りていません。中でも20歳から49歳の成人男性では1日に350mg 前後マグネシウムが必要なのに対し、摂取量は230mg前後と100から120ミリグラム程度のマグネシウムが不足しています。WHOの推奨量は厚生労働省の基準値よりさらに多くなっています。

なぜ、現代の日本人はマグネシウム不足になったのか、その最大の原因は戦後の食生活の変化にあります。日本の昔ながらの食事といえば、主食は玄米に大麦や雑穀を加えて炊く雑穀ごはんでした。雑穀米は食物繊維やビタミンミネラルをたっぷり含んでおり、マグネシウムも豊富です。

しかし1960年頃か白米が主流になり、小麦原料のパン食も増えていきました。マグネシウムは胚芽や糠に多く含まれており、精白米では約20%しか残っていません。戦後に大麦や雑穀などの穀物消費量が一気に減ったことで、マグネシウムの摂取量が激減したと考えられます。

さらに、マグネシウム不足に拍車をかけたのが精製塩です。かつて日本では海水を田んぼに引き込んで水分を蒸発させた結晶を塩として使って いました。これを粗塩と言い、マグネシウムをはじめ、ミネラルが豊富な自然塩です。毎日使う塩が当時の日本人にとっては大切なマグネシウム摂取源でした。

しかし、昭和47年に塩田が廃止されると工業的な方法で作られる精製塩が普及しました。不純物や細菌を取り除いた精製塩は塩化ナトリウム99%以上の高純度の塩です。そしてマグネシウム自体も取り除かれてしまいました。外食店ではほとんどの場合が、このような精製塩が使われています。つまり外食やファーストフードで塩分を摂り過ぎるとマグネシウムの尿中排泄量が増え、さらにマグネシウム不足に陥ってしまいます。

活力低下はマグネシウム不足

健康や活力を気にして、テストステロンを上げるサプリメントを試している人が多く、年齢を重ねたり日々の疲労が溜まったりすると亜鉛などの成分に頼りたくなる気持ちはよく分かります。しかし単体でテストステロンを直接的に跳ね上げるような魔法のサプリメントはこの世に存在しません。そのため、まずは体のシステムを正常に働かせるための土台を見直す必要があります。

また、血液検査で測れるテストステロンの総量と、実際に体が使えるテストステロンの量は全く別物です。検査でテストステロン値が高ければ元気に活動できそうに思えますが、テストステロン値が高い=活力が高いとは限りません。血中を流れているテストステロンの大部分は約65%が性ホルモン結合グロブリン(SHBG)というタンパク質とがっちり結合しています。

このSHBGは、ホルモンを運搬するタクシーのような役割も持っており、テストステロンとの結合が強すぎます。そのため結合した状態のテストステロンは、筋肉の合成を促したり、脳の活力を上げたりといった本来の仕事をするための需要体に入り込むことができません。

実際の組織で効果を発揮できるのは、僅か3%程度の遊離テストステロンとアルブミンという別のタンパク質から簡単に離れられるテストステロンだけです。しかも厄介なことに、SHBGの量は年齢と共に増えていく傾向があります。

つまり加齢によってSHBGが増えるとテストステロンの量が、若い頃と同じように保たれていたとしても、自由に動ける遊離テストステロンの割合がガクっと減ってしまいます。これが原因不明の疲労感や意欲低下に悩まされる大きな要因の1つとされています。

そのため、総量よりも実際に使える遊離テストステロンの割合を確保することが重要です。マグネシウムは、SHBGに縛られて使えなくなっており、テストステロンを引き剥がして遊離テストステロンの割合を増やす得意なメカニズムを持っています。血液中に十分なマグネシウムイオンが存在するとテストステロンとSHBGが結合しようとするプロセスに干渉します。

実際に、このメカニズムが人間の体内でも働いていることを示唆する強力なデータもあります。イタリアのトスカーナ地方に住む65歳以上の高齢男性、約400 名を対象にした有名な疫学調査では、血成マグネシウムレベルが高い人ほどテストステロンや筋肉の成長に関わるIGF-1というホルモンのレベルが優意に高いことが分かっています。つまりマグネシウムが多い人ほどホルモンの状態が良かったってことになります。

またマグネシウムは、そもそもテストステロンが減ってしまう環境的要因を根本から防ぐ役割も持っています。テストステロンを高く保つためには分泌を促す攻めのアプローチ以上に、低下させる要因を徹底的に排除する守りのアプローチが重要です。

テストステロンが減少する大きな原因

睡眠不足

現代人のテストステロンが減少する大きな原因となっているのが睡眠の質の低下、慢性炎症、インスリン抵抗性(代謝の悪化)です。実はテストステロンの大部分は夜間の睡眠中、特に深い眠りについている時に分泌されます。そのため睡眠時間が短かったり、途中で何度も目が覚めたりする中途覚醒があると分泌のゴールデンタイムを逃して、血中のテストステロンレベルが急降下してしまいます。

マグネシウムは脳の神経系に直接働きかけ、具体的には興奮性の神経伝達物質を受け取るNMDA需要体、つまり脳のアクセル役の部分をブロックして中枢神経の過剰な興奮を沈めてくれ、脳のスイッチをオフにしてリラックス状態に導いてくれます。

さらに、テストステロンとストレスホルモンであるコルチゾールの関係があります。この2つのホルモンは体内で、シーソーのような拮抗関係にあります。ストレスでコルチゾールが増えすぎると、テストステロンの分泌は強く抑え込まれてしまいます。

そのためテストステロンを増やすために、とにかく限界までハードな筋トレをするのは逆効果です。確かに高強度の運動は、テストステロンを出す刺激になりますが、激しいトレーニングの後に十分な睡眠や休息を取らないと体はそれを極度な生命の危機的ストレスだと判断してしまいます。

その結果、テストステロンよりも生き延びるためにストレスホルモンのコルチゾールを優先して大量に分泌してしまいます。そしてマグネシウムは、この過剰なコルチゾールを不活性な状態に変換する酵素の働きを活性化させてくれます。つまり眠りやすくするだけではなく、ストレスホルモンの暴走を根元から食い止めてくれます。

慢性炎症

2つ目の要因である慢性炎症に対しても、マグネシウムは強力な防壁として機能をします。偏った食事や肥満などで体内に炎症を伝えるメッセンジャーが増えると、それが脳の視床下部や精巣のテストステロン工場に直接ダメージを与えてしまいます。視床下部からのホルモンを出せという司令が乱れて、精巣での生産ラインもストップさせられてしまうため、結果としてテストステロンが激減します。

メタボリックシンドロームを持つ人などを対象にした複数の研究データを統合した解析では、マグネシウムを補給することで血中のCRPという炎症レベルを示すマーカーが優位に低下することが確認されています。つまり炎症をしっかり抑え込んで、本来のテストステロン産生能力を取り戻してくれます。

代謝の悪化

インスリンは血糖値を下げるホルモンですが、インスリン抵抗性は細胞がインスリンが効かなくなり、常に血糖値が高い状態になることですが、これがテストステロン減少につながります。テストステロンが下がると内臓脂肪がつきやすくなり、その増えた内臓脂肪の中にはアロマターゼというテストステロンを女性ホルモンに変える酵素が大量に存在しています。

このアロマターゼは、体内で作られた貴重なテストステロンを女性ホルモンであるエストロゲンに変換してしまう働きを持っています。つまり脂肪がついて女性ホルモンが増え、さらにホルモンの働き自体も不安定になる悪循環になってしまいます。

マグネシウムは、細胞内のインスリン需要体の働きやグルコースを取り込むエネルギー代謝の経路で必須の役割を果たしています。つまりマグネシウムが充足して糖代謝が正常化すれば、過剰なインスリン分泌が抑えられて内臓脂肪の減少とアロマターゼ活性の低下が期待できます。マグネシウムが代謝の根元を正すことで、テストステロンが女性ホルモンに変わってしまう負のループを立ち切ってくれます。

マグネシウムが他の栄養素の鍵を握る理由

ビタミンD

多数の観察研究で血中のビタミンDレベルとテストステロンレベルには、強い正の相関係があることが分かっています。そのためテストステロンを上げようとしてビタミンDのサプリメントを飲む人が多いですが、効果を実感できないケースがかなり散見されます。それはビタミンDが働くための準備が整っていない可能性が高いからです。

そして、そのボトルネックとなっているのがマグネシウム不足です。実は日光を浴びて皮膚で作られたばかりのビタミンDは、そのままでは体内で効果を発揮できません。体内に入ったビタミンDは、肝臓と腎臓で使える形に変換されることで、実際に働ける活性型ビタミンDになります。この肝臓と腎臓で行われるビタミンDの変換作業には、それぞれ専用の酵素が働き、これらの酵素は全てマグネシウムがないと動けないマグネシウム依存性の酵素です。

このためテストステロンを上げようとしてビタミンDを多量に飲んでも、細胞内のマグネシウムが不足していれば効果が出ない可能性が高いです。ビタミン Dでテストステロンレベルを最適化したい場合、ビタミンD単体では不十分です。つまり細胞内のマグネシウムが充足していることも条件になります。

亜鉛

マグネシウムは亜鉛の働きも助けがあり、テストステロン製造の開始シグナルを作る酵素の起動には、マグネシウムと結合したMg-ATPが必須です。これが足りなければスイッチが入りません。だからマグネシウム不足を放置したまま、亜鉛を多めに摂取しても効果を実感できません。

また、マグネシウムをサプリで摂る前に、まずは食事の改善が先です。マグネシウムは、海苔やワカメなどの海装類、ナッツや魚介類に豊富です。またテストステロンの土台作りとして選ぶべきサプリは、アミノ酸キレートと呼ばれる形態のマグネシウムです。例えば睡眠の質の改善やストレス緩和を1 番の目的にするなら、グリシン酸ネシウムやトレオン酸マグネシウムがおすすめです。

そして、身体的な疲労回復やエネルギー産生を重視するなら、リンゴ酸マグネシウムがおすすめです。リンゴ酸は細胞のミトコンドリア内にあるエネルギー製造ラインの中間代謝物で、これをマグネシウムと一緒に摂取することでATPという体内のエネルギー通貨を作り出す経路を直接活性化します。

そばの、ひ孫と、孫は、優しい子かい?納得

知らぬ間に、私たち日本人は食生活の変化でマグネシウム不足になっています。そのため普段の生活でマグネシウムを積極的にとっていく姿勢が大切です。大麦や雑穀類、魚介類に加え、野菜中心の昔ながらの食生活を再現するのは意識を高く持ち続けないとなかなか難しいと思います。

そういった方に対して対処法が「そばの、ひ孫と、孫は、優しい子かい?納得」です。これはマグネシウムを多く含む食品20品目の頭文字をつなげた標語です。

  • そばの:そば、バナナ、海苔、
  • ひ孫と:ひじき、豆、五穀、豆腐
  • 孫は:抹茶、ごま、わかめ
  • 優しい子かい?:野菜、魚、しいたけ、いちじく、昆布、牡蠣、いも
  • 納得:納豆、とうもろこし、くるみ

毎日の献立に迷った時、この中から材料を選ぶなどして、日々の生活で少しだけ意識してみてください。それだけでもマグネシウム不足が少しずつ解消されていきます。

この中で豆腐は、粗塩海水塩化マグネシウムや塩化マグネシウム含有物など天然のにがりが含まれているものを選ぶと良いでしょう。次に豆は、大豆や枝豆、小豆、ひよこまめ、ココア、豆乳などもおすすめです。そして魚でマグネシウムが豊富なのがマグロの赤身、かつお、アジ、イワシ、サバ、鮭などです。

ただし特定の1品だけを食べ続けるのは避けてほしいです。特定の1品だけを食べ続けてしまうと他の栄養素が不足するため、標語の食材をいくつか組み合わせて食べることをこれを意識しましょう。

マグネシウムは、このように食事や料理などを食べることによって補うことができる栄養素であり、マグネシウム不足によって起こる病気や身体の不調も食事で改善することができます。

マグネシウムを多く含む食品20品目

マグネシウムを補う3つの方法

食事からの摂取

成人女性のマグネシウム推奨摂取量は1日270〜290mg、成人男性では320〜370mgです(日本人の食事摂取基準2020年版)。しかし現代の日本人の平均摂取量は推奨値を大きく下回ると言われています。

マグネシウムを多く含む食品の目安:
・玄米・そば・全粒粉パン(精製前の穀物)
・豆腐・納豆・えだまめ(大豆製品)
・ひじき・わかめ・のり(海藻類)
・アーモンド・カシューナッツ(ナッツ類)
・ほうれん草・アボカド(緑黄色野菜)

覚え方のコツは「そばの、ひ孫と、孫は、優しい子かい?」を活用してください。

エプソムソルト入浴

エプソムソルト(硫酸マグネシウム)は、入浴を通じてマグネシウムを経皮吸収できる手軽な方法です。以下の手順を参考にしてください。

【エプソムソルト入浴の基本手順】
STEP1: 湯温は38〜40℃(少し温めのぬるめ)に設定する→ 熱すぎると毛穴が閉じ、成分が浸透しにくくなる
STEP2: エプソムソルトを大さじ4〜5杯(約250〜300g)を浴槽に溶かす
STEP3: 15〜20分程度、ゆっくりと浸かる
STEP4: 入浴後はシャワーで流さず、タオルで優しく押さえ拭きする

週2〜3回を目安に続けることで、経皮吸収によるマグネシウム補給が期待できます。肌のつっぱり感や乾燥が気になる方は、入浴後すぐに乳液やクリームで蓋をするとより効果的です。

就寝前に取り入れたいマグネシウム豊富な飲み物

全身の細胞を潤すルイボスティー

南アフリカでしか採れない貴重な植物を原料とするルイボスティー。ルイボスティーには緑茶の約五十倍ともいわれるフラボノイド類が含まれ、非常に酸化しにくいことで知られています。カフェインを含まないため夜でも安心して飲むことができ、含まれるマグネシウムには神経の興奮を抑えて心身をリラックスさせる働きも期待できるため、就寝前に飲むことで質の良い睡眠につなげやすくなります。過酷な環境で育つルイボスは良質なポリフェノールを豊富に蓄えており、現地では不老樹のお茶とも呼ばれています。

もう一つのおすすめが、手作りのスポーツドリンクです。夏場に水だけを大量に飲むと、体液の濃度が薄まって低ナトリウム血症を招くことがあるため注意が必要ですが、かといって塩水だけでは他のミネラルが不足してしまいます。そこで、一リットルのミネラルウォーターに天然塩を三グラムほどと少量の砂糖、お好みでレモン汁を加えると、吸収効率の良い手作りスポーツドリンクが完成します。

天然塩にはナトリウムだけでなくカリウムやカルシウムなどのミネラルがバランスよく含まれ、カリウムは余分なナトリウムを尿として排出する働きも助けてくれます。少量の糖分を一緒に摂ることで水分の吸収効率が高まることも分かっており、砂糖の代わりに血糖値を上げにくい蜂蜜を使うのもよい方法です。とくに高齢になると喉の渇きに気づきにくくなるため、こまめな水分補給を心がけたいものです。

髪と血流を支えるにがり水

にがりは、海水から塩を作る過程でできる、塩化マグネシウムを主成分とする物質です。これを水に溶かしたにがり水は、マグネシウムをはじめとするミネラルを効率よく補給できる方法の一つとして知られており、濃度が高いため、そのまま飲むのではなく味噌汁やお茶に数滴垂らす程度で十分に効果を発揮します。

マグネシウムには、髪の主成分であるケラチンというタンパク質の合成を助ける働きがあります。マグネシウムはケラチンの合成をはじめ、体内の三百種類以上もの酵素反応に関わる潤滑油のような存在であり、これが不足するとせっかくの材料であるアミノ酸が十分にあっても、髪へと作り替えることが難しくなってしまいます。近年は加工食品の増加もあって、日本人の多くがマグネシウム不足の傾向にあるとも指摘されており、これが薄毛や抜け毛に関わっている可能性も考えられます。

さらにマグネシウムには血管の平滑筋を緩めて血流を良くする作用もあります。頭皮には非常に細い毛細血管が張り巡らされており、加齢によって血管が詰まりやすくなると、十分な栄養が届かず髪が育ちにくくなってしまいます。にがり水を習慣的に取り入れることで、ケラチンの合成を助けながら頭皮の血流改善効果も期待でき、結果として髪の成長をサポートしてくれるでしょう。

便通とむくみの両方に働くとうもろこしのひげ茶

マグネシウムは、病院で便秘薬の成分として処方されることもあるほど、高い便秘改善効果が知られています。腸の蠕動運動を促し、便に水分を含ませて柔らかくする働きがあるためです。便秘は単にお腹が張るだけでなく、老廃物や有害物質が腸内にとどまることで体調不良や肌荒れなど様々な不調につながるため、毎日しっかり排便することは健康維持の基本といえます。ただし、マグネシウムだけを大量に摂取すると便がゆるくなりすぎることもあるため、そこでおすすめなのがとうもろこしのひげ茶です。

とうもろこしのひげ茶には、マグネシウムに加えて不溶性食物繊維も豊富に含まれています。不溶性食物繊維は便のかさを増やし、水っぽくならずに形のある便を出しやすくしてくれるほか、腸内細菌のえさにもなるため、腸内フローラを整えるうえでも重要な役割を果たします。

さらに、とうもろこしのひげ茶にはカリウムも豊富に含まれています。カリウムは体内の塩分バランスを調整するミネラルで、加工食品やインスタント食品を頻繁に食べる人が知らないうちに摂り過ぎた塩分を、余分なナトリウムとして排出する働きを助けてくれます。このように、とうもろこしのひげ茶は腸からのデトックスと、腎臓を通じた尿からのデトックスの両方をサポートしてくれる飲み物なのです。

体力とスタミナを底上げする昆布梅茶

海藻の一種である昆布は、マグネシウムを豊富に含む食材の代表格です。マグネシウムは、私たちの細胞内でエネルギーを生み出す小さな発電所とも呼ばれるミトコンドリアの働きを支える重要な栄養素であり、加齢によってミトコンドリアが減少すると、それだけ体力の低下や疲れやすさにつながっていきます。実際に、マグネシウムがミトコンドリアのエネルギー産生において重要な役割を担っていることを示した研究も発表されています。

さらに昆布には水溶性の食物繊維もたっぷり含まれており、現代人に不足しがちな栄養素を同時に補える点でも優れた食材といえます。とはいえ、昆布をそのまま毎日食べ続けるのは難しいという人も多いでしょう。そこでおすすめなのが、昆布の出汁に梅を加えた昆布梅茶です。梅干しに豊富なクエン酸は、細胞がエネルギーを作り出す代謝経路を働かせる成分として知られ、この経路をスムーズに回すためにはマグネシウムが欠かせません。つまりクエン酸とマグネシウムは、互いに支え合いながら細胞のエネルギー産生を後押ししてくれる組み合わせなのです。

加えて、昆布梅茶に含まれるヨウ素は甲状腺ホルモンの材料になる栄養素でもあります。甲状腺ホルモンは代謝を高め、活力を維持するために欠かせないホルモンですから、体力の衰えを感じ始めた人にとって、昆布梅茶は隠れたスタミナドリンクと呼べる存在です。

東洋医学から診た「乾燥肌」

東洋医学では、肌のうるおいは体をめぐる「血(けつ)」や「津液(しんえき=体の潤い成分)」によって保たれると考えられています。これらが不足した状態(血虚・陰虚)や、めぐりが停滞した状態になると、肌が乾いてカサつきやすいと捉えます。

とくに「肺は皮毛を主る」とされ、乾燥した外気や冷えの影響を受けやすいと考えられてきました。こうした考え方は現代医学の診断とは異なる伝統的な健康観ですが、食事・睡眠・冷え対策など生活を整えるヒントとして活かせます。

セルフケアに使えるツボ

うるおいやめぐりのケアで東洋医学的によく用いられるツボの一例です。

三陰交(さんいんこう):内くるぶしの上、指4本分

三陰交(さんいんこう)

太谿(たいけい):内くるぶしとアキレス腱の間のくぼみ

太谿(たいけい)

合谷(ごうこく):手の甲、親指と人差し指の骨が交わる手前

合谷(ごうこく)

いずれも息を吐きながら5秒ほど心地よい強さで押し、数回繰り返すのが目安です。強く押しすぎない、痛みが出たら中止する、妊娠中(とくに三陰交・合谷)や皮膚に傷・炎症がある部位は避ける、持病のある方は事前に医療機関へご相談ください。

美容鍼とマグネシウム×乾燥肌の連結

スキンケアや食事で外側・内側からうるおいを補ったうえで、肌のめぐりや自律神経のコンディションを整えたい方の選択肢として、美容鍼灸があります。美容鍼は顔や身体のツボに細い鍼で働きかけ、めぐりや巡りやすい状態づくりをサポートするとされるケアです。またマグネシウムの摂取と並行して美容鍼を受けることで、乾燥肌へのアプローチがより効果的になります。その理由は主に3つあります。

コラーゲン・セラミド産生の促進

鍼が皮膚に微細な刺激を与えると、線維芽細胞が活性化し、コラーゲンやヒアルロン酸の産生が促進されます。マグネシウムがセラミド合成を助ける作用と相乗効果が期待できます。

施術後の美容成分の浸透率アップ

鍼を打った後の皮膚には、一時的に微細な経路が生じます。この状態で美容液や保湿クリームを塗布すると、通常時より成分が浸透しやすくなります。当院では施術後のスキンケアアドバイスも合わせて提供しています。

血流促進による全身のマグネシウム循環改善

鍼灸による血流促進は、食事・入浴で補ったマグネシウムを全身の細胞に届けやすくする働きもあります。「飲む・浸かる・鍼で整える」の3段階アプローチが最も効果的です。

インナードライの落とし穴

インナードライは、お肌のベースが脂性肌の人であり、乾燥肌の人はインナードライになることありません。なぜなら皮脂が多いのは、皮脂腺の働きが活発であるので、そもそも乾燥肌の人はインナードライにはなりません。もちろん乾燥肌対策のスキンケアが大事ですが、水をしっかり補って油は少なくすることが大事だと思われている方が多くいます。

しかし、インナードライが中々良くならない場合はもう1つの原因があります。それが炎症です。インナードライの方が、どうして赤みや肌荒れを起こすか。それは乾燥しているからではなく、炎症が起こることで、バリア機能が低下することによって乾燥が起こるからです。

この炎症は、皮脂の中にある不飽和脂肪酸で起こることが分かってきています。つまり皮脂の中にある不飽和脂肪酸の割合が高くなれば高くなるほど炎症を起こし、バリア機能が低下してしまうことによって乾燥が起こってくることが分かっています。

また炎症は、肌の分泌割合の問題であるため、不飽和脂肪酸が多ければ乾燥肌の人でも、脂性肌の人でも肌に炎症が起こってしまいます。なぜ不飽和脂肪酸が炎症起こすかと言うと、肌の中に再吸収されるからです。そのため表面は皮脂でテカテカしていても、内側のバリアが壊れているから乾燥し、表面がテカテカでも炎症があるため赤みが生じて、インナードライになることになります。

さらにインナードライの人は、バリア機能が低下していることが多くあります。そもそも私たちの肌は、まずお水を引っ張ることと皮脂の2つが重なることによってバリア機能は整います。しかしインナードライの人は、皮脂は多くありますが、水を抱える能力が低くなっています。

そして、このお水を抱えることができなくなっているのは、そのベースに炎症があるからです。炎症が起こると、角層の細胞の中の天然保湿因子が作られなくなったり、この角層に炎症があることで剥がれにくくなり、その結果細胞の代謝が悪くなって、細胞間脂質や天然保湿因子がうまく作られなくなります。

さらに、角層の細胞が厚く固まり、それによって水分を維持することができなくなって水分がどんどん蒸発してしまいます。また、それによって皮脂を出してしまい、その皮脂が酸化してしまうことによって炎症が起こります。そもそもベースに炎症があるからこそ、ターンオーバーが正常化されていないのでバリア機能が低下して、炎症が起こってしまうという負のサイクルになります。

しかし、私たちがインナードライのケアをする時は、ついつい油分をどけてお水を入れていきましょうと考え、これだけをケアしていくので対処療法でしかないというのが改善しない原因になります。ベースに炎症があることでインナードライになるため、しっかりと炎症を抑えるような成分を入れながらお水を引っ張るような成分を入れていくことがポイントになってきます。

そのため、セラミドやヒアルロン酸などによるケアと同じぐらい大事なのが、抗炎症の成分を取り入れていくことです。抗炎症成分のグリチルリチン酸2K、アラントイン、ナイヤシナミド、トラネキサム酸といった抗炎症作用のある成分だけでなく、ヘパリン類似物質やセラミドなどのお水をしっかり引っ張っていくものと合わしていく必要があります。

また、インナードライケア化粧品で知られるのKANEBOスキンハーモナイザーは、不飽和脂肪酸が多い方でも再吸収されないものでしたが、リニューアルされた後は、そもそも不飽和脂肪酸を作らせないアプローチが可能になっています(スキンコンダクター)。

そもそも肌には常在菌がおり、その中でもアクネ菌が皮脂のトリグリセライドを分解することによって不飽和脂肪酸を作られます。つまりアクネ菌が多ければ多いほど、不飽和脂肪酸も作られやすいことになります。

一方で、肌の常在菌はバランスが大切であり、アクネ菌も不飽和脂肪酸を作るだけではなく、皮脂を分解する時にグリセリンのような肌を守る成分も作ってくれています。そのためアクネ菌に、不飽和脂肪酸だけを抑える成分がフィトスフィンゴシンです。一方で、炎症を止めるため、壊れてしまったバリア機能を元に戻すような成分も入っています。

カネボウ(花王グループ)は、バリア機能を古くから研究しており、このバリア機能の一つとして角層のバリア機能が挙げられます。角層のバリア機能に効果が期待できるのが疑似セラミッドやエチルグルコシルの保湿成分です。

もう1つが第2のバリア機能と言われる顆粒層のタイトジャンクションです。細胞と細胞の間を隙間なくくっつけており、これが壊れると隙間が開き、それによって水分が逃げていくことになります。このタイトジャンクションにアプローチするGABOMという成分があり、タイトジャンクションをしっかりすることでバリア機能を高めていく研究がされています。

新しいクリームにはGABOMは入っていませんが、その研究基礎となる第1のバリア、第2のバリアのどちらにもアプローチするスイカズラ花エキスが入っています。また抗炎症作用のあるアスナロ枝エキスが入っています。

そして、カネボウと言えばヒアルロン酸研究で有名であり、ヒアルロン酸を産生する天然のNAGが入っていますが、さらにヒアルロン酸を増やすアセチルグルコサミンが入っています。そのため塗り広げると化粧水塗ったというぐらいの瑞々しさになります。

夏の皮脂・毛穴・インナードライ

夏になるとどうしても気になってしまうのが顔のテカリです。ただ最近は単に皮脂が多いだけでなく、いわゆるインナードライに悩む人も増えています。このインナードライという言葉を聞くと、乾燥肌の延長のようなイメージを持つ人も多いかもしれません。しかし実際には、もともと乾燥肌の人はインナードライにはなりにくいのです。なぜなら乾燥肌の人は、そもそも皮脂を分泌する機能自体が弱く、皮脂をたくさん出すという状態にならないからです。

インナードライになりやすいのは、もともと皮脂の分泌が活発な脂性肌、あるいは脂性寄りの普通肌の人です。こうした肌に何らかの炎症が起こることで、肌が水分を抱え込む力が落ちてしまい、水分は不足しているのに油分だけはどんどん出てしまうという状態に陥ります。これがインナードライの正体です。

そのためインナードライだからといって、とにかく保湿力の高いクリームを重ねるという対処は逆効果になりかねません。まず優先すべきは余分な皮脂の分泌を抑えることであり、あわせて肌の炎症を鎮めることも欠かせないアプローチになります。

敏感肌とタイトジャンクション

敏感肌の方が、なぜピリピリしたり、痒みが起こるか。多くの方が肌の表面のバリア機能が壊れることによってチクチクすると思っています。もちろんバリア機能が低下する一因には、細胞間脂質の1つであるセラミドが少なくなったり、天然保湿因子が減ったりなど、様々な理由がありますが、実はもう少し肌の奥にも原因があるのが花王の研究で分かってきてます。

健康の人の肌では、神経の末端は肌の奥、真皮から表皮の間ぐらいのところまでにあると言われていますが、バリア機能が低下したり、敏感肌の人は末端がニョキニョキと伸びてきて角層の辺りまで伸びていることが分かっています。そのためちょっとした刺激でチクチクしたり、痒みが起こってしまうことになります。

そこに関わってくるのが細胞と細胞の間にあるタイトジャンクションです。これは細胞と細胞って手を繋ぐように並んでおり、異物が入ってくるのを抑えたりしています。神経が伸びてきたとしても、このタイトジャンクションが手をつないでいれば隙間がないため、それ以上伸びません。しかしタイトジャンクションがうまく働いていなければ、神経がニョキニョキっと伸びてくることになってしまいます。つまりタイトジャンクションのケアをしないとピリピリ感は抑えられません。

そこで研究開発されたのがGABOMという成分です。正式な成分名は、ガンマ-アミノ-ベータ-ヒドロキシ酪酸です。GABOMは正常に整えるからこそ、肌の水分が高くなっていくことで肌荒れ防止や乾燥対策になる有効成分として認められています。

今までは、ターンオーバーを正常化させることで、セラミドや細胞間脂質の産生を促し、それによってバリア機能が正常化するアプローチでした。それを美肌になるだけではなく、タイトジャンクションまでも復活させることによって細胞感同士の連携も行い、さらに神経が伸びていくものも抑えるのでチクチクも緩和される画期的な成分になっています。

また乾燥肌や敏感肌で「なんとなくかゆい」という症状が起きるメカニズムにも、マグネシウムが深く関わっています。マグネシウムが不足すると、皮膚内の肥満細胞(マスト細胞)から放出されるヒスタミンの量が増えやすくなります。

これは、マグネシウムが肥満細胞内のcAMP(環状アデノシン一リン酸)の産生に関与しているためです。cAMPが減少するとヒスタミンが放出されやすくなり、かゆみや炎症が引き起こされます。乾燥肌とかゆみがセットで起きやすい方は、マグネシウム不足のサインかもしれません。

よくある質問(Q&A)

Q1. マグネシウムは肌にいいの?
A. マグネシウムは肌のバリア機能やうるおいを支える働きと関連づけて語られるミネラルですが、「摂れば乾燥肌が治る」と確立されているわけではありません。体内で300種類以上の酵素反応に関わる必須ミネラル(厚生労働省 e-ヘルスネット)であり、肌の土台となる栄養・生活習慣の一部として、バランスよく取り入れるのがよいとされています。

Q2. マグネシウムが不足するとどんなサインが出る?
A. 一般には、足がつる・まぶたのけいれん・疲れやすさ・気分の落ち込みなどが不足のサインとして挙げられます。皮膚については乾燥やゆらぎと関連づけて語られることがありますが、原因は多様です。気になる症状が続く場合は自己判断せず医療機関にご相談ください。

Q3. 乾燥肌にはどんな食べ物でマグネシウムを摂ればいい?
A. 大豆製品・海藻・ナッツ類・雑穀・青菜などにマグネシウムが多く含まれるとされます。特定の食品だけに頼らず、主食・主菜・副菜をそろえた食事の中で無理なく摂るのが基本です。サプリメントで補う場合は過剰摂取(下痢など)に注意し、持病・妊娠中・服薬中の方は医師に相談してください。

Q4. エプソムソルト(マグネシウム入浴剤)は乾燥肌にいい?
A. エプソムソルト入浴は温まりやリラックスを目的に親しまれていますが、経皮吸収による美肌・乾燥改善効果が医学的に確立しているわけではありません。入浴後は早めの保湿を心がけ、肌に合わない・刺激を感じる場合は使用を中止してください。

Q5. マグネシウムは乾燥肌に本当に効果がありますか?
A. マグネシウムはセラミドの合成を助け、皮膚のバリア機能を回復させる働きがあります。また、血中マグネシウムが正常値であっても、皮膚の局所では不足していることがあるため、エプソムソルト入浴などの経皮吸収も有効とされています。

Q6. エプソムソルトはどこで買えますか?
A. ドラッグストア・Amazon・自然食品店などで購入できます。「硫酸マグネシウム」という表記のものを選ぶと確実です。入浴剤用として販売されているものをお使いください。

Q7. 乾燥肌に美容鍼は関係あるの?
A. 美容鍼は乾燥肌を治す施術ではなく、めぐりや自律神経のコンディションを整えたい方のケアの選択肢とされています。東洋医学では肌のうるおいを「血」や「津液」のめぐりと結びつけて考えます。スキンケア・食事・睡眠という土台を整えたうえで、冷えやめぐりが気になる方の一助として取り入れるのがよいでしょう。体感には個人差があります。

Q8. 美容鍼を受けながらエプソムソルト入浴を続けてもいいですか?
A. むしろ相乗効果が期待できます。施術後の夜に入浴すると、鍼で高まった血流にマグネシウムの経皮吸収が重なり、肌の回復を促進しやすくなります。


【参考情報源】

【コラムの監修】

恵比寿院長

HARRNY 院長/鍼灸師 菊地明子

・経歴
大学卒業後、美容の世界に入り、セラピストへ。豊富な美容知識や実務経験を活かし、その後、10年間は大手企業内講師として美容部員やエステシャンの育成、サロン店舗運営のサポートを行う。現在は、セラピスト、エステティシャン、美容カウンセラー、鍼灸師の経歴を活かし、お肌とこころと身体のトータルビューティースタイルを提案。表面だけでなく根本からのケアとして、老けない生活についてのコーチングを行う。

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